スタッフ自身が成長を実感 何でもできるデザイナー養成所
- 福岡
- 有限会社デザインオフィス スラッシュ
仕事を一通り覚えて23歳で独立
会社を設立されるまでの経緯を教えてください。
社長の片野坂(かたのさか)は、絵を描くのが好きで、日本デザイナー学院九州校のグラフィックデザイン学科に進学しました。私はそのときの同級生です。 卒業後、片野坂が就職した福岡のデザイン会社は新人であっても、打合せから企画、見積り、デザイン、請求まで、一連の流れをひとりで担当する会社でした。また、アイデア出しや社内プレゼンが多く、先輩のアイデアから学ぶことも多かったそうです。そこで一通りのことができるようになり、3年後に独立。まずはひとりでデザインオフィス スラッシュを立ち上げ、個人事業主としてスタートしました。
3年で独立ということは23歳ですね。
若いので、まわりからは反対されたようですが、本人は「やらずに後悔するならやって後悔したほうがいい」というタイプなんです。それから2年ほどは、ひとりで自由に仕事をしていました。しかし、仕事の依頼が増えてひとりでやることに限界を感じ、仕事の幅も広げたいとの思いから、社員を雇い始めました。そして独立から10年目の2005年に有限会社化し、今では社員8名、パート2名のスタッフがいます。20代から40代まで、勤続5年以上のスタッフが大半です。 私自身はもともとホテルの企画室に勤務していましたが、8年前に当社へ入社し、総務の仕事を担当しています。
企画からデザインまで一貫してできるのがウリ
御社の業務内容について教えてください。
広告の企画とデザインが中心です。パンフレットやポスターから、チラシ、Web、商品パッケージまで幅広く手がけています。中でも、一番大きな割合を占めているのが、通販の化粧品関係の仕事ですね。
クライアントは福岡の企業が中心ですか?
いえ、今は福岡と東京が半々です。福岡の大手通販会社が百貨店に出店する際、店内装飾やパンフレット、ポスターといったツール一式のデザインコンペがあり、当社が契約を勝ち取りました。その仕事が東京の広告代理店の目に留まり、東京からも仕事のオファーが来るようになったんです。
御社の強みはどんなところでしょう。
デザインだけでなく、企画から請け負えるところです。マーケティングをもとに、売り方についての提案もたくさん出しますし、ディレクションも行います。先ほどのデザインコンペでも、プランニングからやっています。それが大きな強みになっていると思います。 片野坂は、良いデザインを求めて何でも学ぶ向上心の強い人で、画像のレタッチまで自分やるため、その腕前から魔術師と呼ばれているんですよ(笑)
スタッフを丁寧に教育し、会社の力を高める
何でもできるようになると、独立したいと考えるスタッフも多いのでは?
はい、これまでに当社から巣立った人は何人もいます。何でもできるデザイナー養成所を自負しておりまして、自他ともに認めるほどの実力がつけば、独立を応援しています。独立した人たちは、その後も力強いブレーンや外部スタッフとして関わってくれています。
秋吉さんが入社された頃と今では、社内に変化はありますか?
雰囲気がずいぶん変わりました。以前はよくも悪くもピリピリした雰囲気で、個々に仕事をするスタイルだったんです。今はスタッフ同士が組んで一緒に仕事をしたり、他の人に意見を求めたりして、アットホームな雰囲気になりました。
どうして変わったのでしょうか?
以前は、片野坂のスキルが卓越していて、片野坂指名で仕事がきて、スケジュール的に受けられないことがあったのですが、それでは会社組織でやっている意味がないということに気づいたのです。 スタッフ全員の力を底上げするため、今は社員教育に力を入れています。昔のように「デザイナーは先輩の背中を見て仕事を覚えて」というのではなく、細やかにフォローし個人個人が成長できるように心がけています。特に、しっかり考える力をつけることを意識していて、実際にスタッフの力が少しずつ伸びていると感じています。スタッフ自身も成長を実感して、仕事へのやる気や動き方が変わってきています。スタッフの成長を見るのは本当にうれしいですね。
デザインの質はもちろん結果にもこだわる
どんなときに仕事のやりがいを感じますか?
大きく2つあります。ひとつは、直接仕事をする広告代理店や大元のクライアントから「いいデザインだね」と喜ばれるとき。もうひとつは、担当した広告により商品がヒットしたとき。通販の仕事は、いいデザインをすれば終わりではありません。その商品が売れたり話題になったりという結果を出すことが大事なんです。そして結果を出すことで、次の仕事につながっていく。当社は一つ一つの仕事にこだわっているからこそ、自分たちで営業しなくてもお仕事をいただけるんです。まわりの方々に恵まれて、大変ありがたいと思っています。
今後の展望についてお聞かせください。
デザイン力の底上げのためにも、全国区の仕事を増やしていきたいと考え、東京進出を視野に入れて動いています。 高いデザイン力や企画力が求められる仕事をこなすことで、スタッフにはクリエイターとしてのやりがいをもっと感じて欲しいですね。 また、片野坂は長年、ある大手化粧品会社の広告を手がけたいという夢を抱いています。それはとても難しくて大きな仕事なのですが、実は今、その足がかりができつつあります。望めば叶うのだと感動しています。
採用を担当されている秋吉さんは、これまでいろいろな人を見てこられたと思いますが、クリエイターにアドバイスをお願いします。
ひとつは、いろんなものを見ることですね。映画でも雑誌でもショーウィンドウでも、いろいろなものにアンテナを張り、それを自分の中にストックにしておくことが大切だと思います。 もうひとつは、自己管理能力をつけること。時間の使い方や仕事の進め方など、クリエイターは自分の裁量に任される部分が大きいので、自己管理を意識しながら、仕事をスケジュール通りに終わらせるのはもちろん、その先まで気を利かせて+αの仕事ができるようになってほしいですね。
取材日: 2016年12月21日 ライター: 佐々木恵美
有限会社デザインオフィス スラッシュ
- 代表:取締役 片野坂つぐみ
- 設立年月日:1995年9月設立、2005年1月に有限会社
- 事業内容:各種印刷物の企画・制作/各種イベント、キャンペーン、販売促進に関する企画・ツール制作/ 企業、店舗、施設のネーミング・ロゴマークの立案・制作/ 展示会、店舗のディスプレイの制作/商品パッケージのデザイン制作/WEBサイトのデザイン制作
- 本社所在地:〒810-0022 福岡市中央区薬院3-12-22 美山ビル2階
- TEL:092-522-8944