生きていくのに必要なのはイマジネーションとクリエイティビティ 画期的なカリキュラムで日本の教育に一石を投じる
- 京都
- 株式会社タマイ インベストメント エデュケーションズ 代表取締役 玉井満代 氏
算数の教え方はこれでいいのか?という疑問から教材作りの道へ
元々は脚本・演出家のお仕事をされていたそうですが、どういった経緯で今のお仕事に就かれたのですか?
東京で結婚して子どもを授かったあと、義父が亡くなったのをきっかけに夫の実家がある和歌山に移り住みました。そこで、自分にできることは何かないかと思い、小さな広告を出して始めたのが私塾のようなものでした。それこそ、机と鉛筆とホームセンターで買ったホワイトボードから出発し、そこからどんどん生徒が増えて、あっという間に500人くらいになりました。
500人はすごいですね。その後、教材をご自身で作られるようになったということですが、何かきっかけがあったのでしょうか?
私自身、教えた経験もなくやってきたので、塾専用の教材で教えていたんですが、子どもたちが小学校の高学年になった時に「やり方を忘れた」と言い出すようになって……。もしかしたら、この子たちは公式を覚えてそこに当てはめてやってきただけなんじゃないか、意味がわかってなかったんじゃないかとハッとしました。算数の◯◯算、例えば、つるかめ算、仕事算、植木算なども、理論(ロジック)があるので、それを押さえていたら忘れるわけはないのです。「公式を忘れたからできない」となると、それは単に「暗記の算数」を学んでいるだけなのではないかと考えたのです。
教材自体に疑問を持たれたということですか?
簡単に言うとそういうことですね。そもそも論として、今の教科書のカリキュラムは、すでに古いものになっていると思います。グローバル化といってはいますが、未来に向けてのカリキュラムではなく、過去を踏襲している。そしてその教科書に合わせて多くのドリルなどが作られていますが、教科書そのものがおかしいとは誰も思わないですよね。それでいいのかなと。だから、玉井式のカリキュラムは教科書準拠ではないんです。実は、それがすごく革命だったんですね。
生きていく上で必要な"想像力"と"創造力"を育むカリキュラムを
教科書準拠でない「玉井式」の特徴を教えてください。
玉井式は、低学年でもとことん読まなければならない教材です。先に◯◯算のやり方を教えるのではなくて、子どもたちが物語を読んで、その式を導き出すことをイメージできるようにしています。算数も要は理論(ロジック)なので、算数を算数として教えるのではなく、 国語的なところを重視しています。それが世界のスタンダードですから。 最初はビジュアルを見て答える問題が多いですが、だんだん「見る」から「読む」に自然に移行していって、読んで答えるという風にしていくんですね。低学年のうちにそれをやっておけば、高学年になって公式を教わった時に、子どもたちも、公式の意味が理解できるようになるんです。
読むことに重点を置いているんですね。
今までの教育では、暗記を重視する風潮がありましたが、それよりもっと必要な能力は、自分の言いたいことを頭の中で組み立てて他人に伝わるように言葉や文章で表現するという力です。その中で、私たちが最も重きを置いているのがイマジネーション力(想像力)とクリエイティビティ(創造力)です。生きていく上でこの二つの能力が不可欠なんです。 脳の重量が成長している12歳くらいまでは土台作りとしてそれをしっかりやらないと、大きくなった時に、体力も気力も競争力も全てない人になっていきます。日本の子どもたちの能力をもっと底上げしていくために、 本気で考えたいなと思ったんです。
なるほど。玉井さんは、実際に小学校や塾などにも行かれるそうですが?
はい。うちの教材は作りっぱなしじゃなくて、ずっと進化し続けているんですよ。作っては現場を回って、また手直ししてという感じで。先生方の意見も伺いますが、いちばんわかりやすいのは子どもの反応です。子どもたちの「わかった!」という反応はやっぱり素直だし、そこを吸い取って教材を作っていけるというのがいちばん嬉しいですね。思い込みで机の上だけで作っていても、いい教材なんて絶対生まれないですから。
現場の先生や保護者との対話も大事にされているんですよね。
もちろんそうですね。子どもは絶対弱者なので、言いたいことも言えず受け身にならざるを得ないですよね。そこで、周りの人がどういう声掛け、励ましをするかで全然違ってきます。出来ないことを出来ないと言えるような家庭環境あるいは学校環境にしていくことがいちばん重要で、出来ないことは悪いことじゃないんだということを伝えていきたいと思います。何でわからないの、何で出来ないのとこちらの思いをぶつけてばかりいると、子どもの自己肯定感はどんどん低下しますし、これは世の中のいちばんの問題だと私は思います。 子ども自身は目の前のお母さんにほめてもらいたい、先生に認めてもらいたいと思って勉強しているんです。そのことをまずは理解してあげて欲しいです。
国内だけにとどまらない「玉井式」の世界的な展開
国内だけでなく世界中を飛び回っていらっしゃって非常にパワフルな印象ですが、どのようなモチベーションで取り組まれているのでしょうか?
私自身としては、教材を徹底的に本気で作って、教材のクオリティを世界一にしたいというのが第一にありますね。そのためには、実際に各国の現場で教えて子どもたちの反応を見ることも必要だし、世界の動向を見ながら、未来に向けて必要なものをどんどん提供していかなきゃいけないと思うんです。過去の成功事例にたよっている教材だけでは不足しています。それって生半可なことじゃないですが、面白いですよ。 あとは、50歳を過ぎている私でもこんなにやれるんだから、体力も気力も可処分時間も山ほどある若者なら絶対何でもできる!ということも伝えたいですね。
今後の展望についてお聞かせください。
インドでも法人を立ち上げ、今現地の学校で玉井式教材の活用が始まっています。シンガポールでも現地の塾と提携して11月から玉井式が始まります。 自分がどこかの国へ行って日本人向けの教室を開くということではなくて、その国の人に向けた教育を研究、提供していくことが結果的には未来の日本人に必要な教材を作ることにつながると思っています。慢心することなく、世界中を回り、より良いICT教材の制作に努めたいと思っています。
取材日:2016年10月6日 ライター:垣貫由衣
株式会社タマイ インベストメント エデュケーションズ
- 代表者名: 代表取締役 玉井満代(たまい みつよ)
- 設立年月: 2001年7月
- 資本金: 3,000,000円
- 事業内容: ICT教材企画・開発事業、グローバル事業、研修・教育講演会、 学習・進学塾経営事業、テキスト・書籍出版事業
- 所在地: 京都経営企画本部 〒604-8153 京都府京都市中京区烏丸通四条上る笋町688 第15長谷ビル5F 玉井教室 田辺本校 〒646-0032 和歌山県田辺市下屋敷町8-2 東京本社 〒160-0032 東京都新宿区西新宿3-1-5
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