クリエイションを仕事に活かすには 「ヒントを得る時間」が大切
- 名古屋
- 株式会社カクヘン 代表取締役 木田真人氏
クリエイター間の軋轢なく スキルが発揮できる会社を目指して
御社の事業内容を教えてください。
デジタルアミューズメントの中でも、パチンコ・パチスロに特化して、液晶画面の企画制作を行なっています。典型的なソフトハウスでは、ゲーム、モバイル、パチンコの3本柱を経営の軸にされていることが多いと思いますが、弊社はパチンコ・パチスロメーカーに絞って事業を展開していきたいと思っています。
それはなぜですか?
メーカーサイドからすると、「ゲームの仕事が忙しくなったら、パチンコの仕事は請けてくれないんでしょ?」という気持ちになると思うんです。
そういった意味での社名でもあるんですね。
そうです。あとインパクト。パチンコ用語を知らない人からしたら「響きはいいけどなんの会社だろう?」と不思議に思ってくれるかなと。そして、たまたまkakuhenというドメインが空いていたからですね(笑)。
木田さんがこの業界に携わるようになった経緯を教えてください。
大学時代、サークル活動でゲームソフトを作成していました。それがおもしろくなって、大学を2年で中退し、3名でプログラム会社を始めたんです。その会社を4年続けた後に、四日市にある50名ほどのソフトハウスに入社することとなりました。仕事の繋がりがある中で声をかけてもらって、3人とも入りましたね。プログラム、マネージャー、プロデューサーを務めて16年。東京開発室の室長になり、東京に赴任しました。
とんとん拍子ですね。
そうでもないですよ。ひとつのゲームを作るとなると、企画、デザイナー、プログラマーといった、いろんな職種のクリエイターさんが関わるわけです。ゲームのことなので、すべてにビジネスソフトのような仕様書があるわけではない。それぞれの感性で作っていることを取りまとめなければならないという立場にいましたから。
取りまとめのご苦労ですね。
はたから見ると何をやっているのか分からないんですよね。企画担当者はネットサーフィンしているようにしか見えない。デザイン担当者はずっと映像資料を見ているようにしか見えない。本人たちは考えてやっているんですが、それが伝わりにくいんです。 一方、プログラマーは最後に集約するので納期も迫っているし、バグがあると責任を持ってつぶさなければならない。 人数が多いと、ポジション間で軋轢を生んでしまうんですよ。
そんな思いもあり、昨年11月に会社を設立されたわけですね。
一昨年12月に、弊社の母体となる合同会社カクヘンを立ち上げ、仕事も増えたので増員し、現在に至ります。東京に6名、名古屋に2名。誰が何をやっているのか分かる状態の中で、アイデアが出しあえる環境がありますね。大人数にはない良さがあると思います。
なぜ、支社は大阪ではなく名古屋に?
私自身、弥富在住でもあるので、愛知は地元なんです。名古屋はメーカーも多いですし、プログラムや電飾関係の会社もあります。東京ですと、出資者がいたり、協力会社も多い。それに、トレンドを捕まえるにも最適です。東京がコントローラーだとしたら、名古屋は実務・制作部隊ですね。
プログラミングデビューは小学生 プロセスへの興味が原点
子どもの頃からデジタルの世界に興味があったのですか?
小5の時から、プログラミングをやっていました。データはカセットテープに保存して(笑)。当時、マイコンは高くて買えなかったので、電気屋さんの店頭で触らせてもらっていたんです。父が新しいものが好きだったので、情報が入りやすい環境にもありましたね。家にオーディオや8ミリカメラがありましたし、教育熱心だったので科学教材や本なども買ってもらっていました。私、1970年生まれなんです。ちょうど日本のエレクトロニクス産業が育った時代に、たまたま居合わせたんですよ。
時代と嗜好と環境とがピッタリあったんですね。
中学生になると、お金を貯めてポケットコンピューターを購入して遊んでいました。自分でゲーム作成もしました。カードゲームのUNOをコンピューターで対戦できるようにプログラミングして、友達にやってもらっていました。自分の考え方をどうプログラムに変えていくかが楽しかったですね。
将来、仕事にしようと思われていましたか?
まったく思っていませんでした。でも、ずっと「もの作りが好きだ」という気持ちがベースにあります。ただ、自分自身がクリエイトするというよりは、そのプロセスに興味を持っているんです。今の経営者の立場でいうと、クリエイターさんたちにいかに効率よくクリエイトしてもらうか。職域があるなかで、それぞれに最適な環境を提供して、思う存分スキルが発揮できて、それを次の工程に渡していける…。そういうことを具現化できればと頑張っています。
「分かりやすさ」と 「脱・トップダウン」
仕事をするうえで大切にしていることは?
「分かりやすさ」です。極端な話をすると「俺、こんなこと考えたんだ。スゲーだろう!」って言っても…分かります(笑)?
分からないですね(笑)。
「こうなって、ここが動いて、こうなるんです。」と伝えて初めて、「それ、つまらん。」とか言えるわけです。例えば、スタッフが企画案を出す時、誰に向けての企画なのか聞くと、「おじいさんです。」「若い子です。」といった答えが返ってくる。そういうレベルの話をしているんじゃないんです。「26歳のサラリーマンで、営業職で、19時にほぼ仕事は終わっていて、2時間くらい時間がある独身の人!」とか。これ、分かりやすさです。
具体性ですね。
デザイナーに「若い女の子です」といっても細部までは伝わらない。もちろん、デザイナーに任せるところは任せればいいんです。例えば、ミニスカートの柄なんかは流行り廃りもあるだろうし。 だけど「ミニスカートにニーソックスというのは外せない!」というのは企画が言えよってことなんです。
社内での話し合いも多いのでしょうか。
私自身が解答を持っている場合でも、必ずスタッフにも聞きますね。アメリカ的なトップダウンで全て決めていくという手法は、リーダー以上の才能が出てこないと思います。特に我々のような仕事は、革新的なアイデアも当然欲しいのですが、それを補佐する大量なアイデアが必要になります。
具体的にどのような展開となりますか?
パチンコには映像演出、電飾、動く仕掛けなど1万くらいの演出があると言われているんです。それをたった一人がクリエイトすることは不可能。トップダウンでやってしまうと、1万個の演出全てに「これ、どう思いますか?」と聞かれるのは、効率的でない。任せるとこは任せます。
スタッフとしても、責任感が生まれますよね。
手のひらの中で動いているのを見ている分には安心です。でも、これって私の手のひら以上にはなりません。失敗してもいい。利益がなくなるだけでしょ。だけどベストを尽くして欲しい。そのために必要な環境は提供するよということです。
仕事と遊びに線引きをしない 得るものは身の回りにたくさんある
デジタルアミューズメント業界を志す若者へ向けてアドバイスをお願いします。
若い子たちを見ていると、自分の中で仕事と遊びに線を入れているのでは、と感じることがあります。企画やデザインに関しては、どういうものが仕事に役立つのか分からないので、いろんなものを見て、知っていることが大事だと思います。その中で、これはオフ、これはオンという区分けをしていると、オフの時に見たものが反映されないことが多いじゃなかと。たとえば、パチンコ好きのサラリーマンに、パチンコの企画やデザインをやってと言っても無理でしょ。どうしてかというと、遊びだと思っているから。
そういう視点から見ていないですもんね。
そうそう。「パチンコやっててこんな演出が出た。このタイミングでこういう演出を出した意図はなんだろう?」とは考えない。完全オフモードだと出来ない。やっぱり直感的に全部できる人は天才なんですよ。そんな天才は、なかなかいない。基本的にみんな凡才なわけです。凡才は時間でカバーしなければいけない。それは労働強化というのではなく、ヒントを得る時間を増やすことだと思っているんですね。漫然と遊ぶのではなく、なんでこうなっているんだろうと考えてもらう。1日1個考えれば1年で365個になりますからね。
日々が勉強になる、と。
身の回りにはヒントがたくさんありますから、習慣にして、どんどんすばらしいアイデアを出してほしいですね。
取材日:2014年11月18日
株式会社カクヘン (KAKUHEN INC.)
- 代表取締役:木田真人(きだまひと)
- 設立年月:2013年11月
- 資本金:300万円
- 事業内容:パチンコ・パチスロの画像企画、開発、コンサルティングなど
- 所在地: 東京:〒101-0042 東京地千代田区神田岩本町4 長谷川ビル6F 名古屋:〒460-0002 愛知県名古屋市中区丸の内1-13-11
- URL:http://kakuhen.co.jp/
- お問い合わせ先:上記HPより