WEB・モバイル2015.03.04

テレビはびっくり箱であり続けるべきです

名古屋
株式会社テレビシティ 代表取締役社長 大脇信氏
デジタル編集を他社に先駆けいち早く採り入れるなど、業界では老舗にしてパイオニアの存在の株式会社テレビシティ。その先進性に注目が集まりがちですが、「最先端機器の発達を凌駕するヒトのひらめきと、不断に“面白いこと”を考える人材こそがテレビシティの財産だ」と大脇社長。そのお話を存分に伺いました。

目にするもの耳にするもの 全て関わる仕事

「テレビシティ」は何をしている会社なのですか?

弊社は、もともとポストプロダクションです。つまり、撮影した素材を、番組であれCMであれ、編集し、音入れ(MA)などを遂行する会社として20年ほど前に誕生しています。 プラスの付加価値として、ワンストップで企画立案、制作、撮影、編集、MAから納品するところまですべてこの会社でできますよ、というのがアピールポイントです。 制作するコンテンツも、テレビやビデオだけでなく、Web・スマホの動画などが増えてきました。ですから、みなさんが日ごろ目にし、耳にする映像はひととおり作ることができる体制です。

老舗としてのメディア史観というところでは?

かつてリビングの王様だったテレビも、メディアが混在する今は、もはや主役の座にありません。若い人は特にPC、スマホ、タブレットをメインに使うようになりました。その変遷は早かったし、影響は大きかったと思います。 テレビも画面サイズ比16:9のハイビジョンへの転換はありましたが、一時言われていたAMのラジオの廃止は災害情報の必要もあり保留されています。ウェブの普及で、紙媒体がなくなるとも言われましたが、やはりなくならないですよね。なので、今の新しいメディアにだけ対応しようと考えると、ビジネス上のパイを捨ててしまうということになります。 会社として「ワンストップ」と言う以上、ほとんどのメディアに対応できることを考えました。古いものから新しいものへグラデーションのようなカタチで、新技術の浸透や生活の推移を見極めながら進めるべきだと考えています。

つまり、全方位のレンジで状況を見ていく必要があると。

そのための研究も必要だとは思います。ただ、そこはちょっと一線を画したい。メーカー主導の技術開発競争には、踊らされたくないというのが正直なところです。

残るのはやっぱり 面白い(=価値ある)コンテンツ

これから先、コンテンツはどうなっていくと思われますか?

極論を言えば、面白いものは画質・音質は問われない。ジャズの名盤はガリガリ言うレコード盤でも楽しめます。名人の落語はザラついた画面でも面白い。だから、どんな媒体であれ“コンテンツのクオリティ”の方を時代に応じて磨いていく必要があると思うのです。 テレビというメディアは、ある意味「びっくり箱」です。文字通り、内容にびっくりするという意味でも、何が出てくるか分からない状態で視聴をするという意味でも。それに対して、今は視聴者が「選んで」視聴するメディアが増えましたね。自分の時間を割いてでも見るべき価値のあるものが“面白いもの”と考えてもいい。そうしたコンテンツを考える人がこれからますます必要です。

メディアの進化が、コンテンツのあり方を変えているのでしょうか?

メディアが複雑化・多様化してくると、人の考えに機械がついてくる、さらに機械がそれについていって追い越す。さらに人がその機械を凌駕する。こういうことを不断にしていかないと世の中は面白くならない。予定調和をよしとしない。それを正そう、もっとこうしよう、みたいなせめぎあいがあって初めて前に進むと思います。

どんなところにも貪欲に 面白さを追求する人が理想

実際の現場ではどんな人が求められるのでしょうか?

現代は、「いいね」の1クリックで「友だち」になった気になってしまう、なんでも便利でお手軽な時代です。「いいね」「いいね」という風潮の中で「いや、これは面白くない」とはっきり言える人に育っていって欲しいですね。それが例え自分で出したアイデアであっても、躊躇なく「面白くない」とダメ出しできる人が。

それは、ディレクターを目指す方に対してでしょうか?

いえ、“面白い”ひらめきを出す人は、必ずしも制作部署でなくてもいいと思います。「こういうタレントで石鹸のCM撮ります」というお題が出た段階では、演出、撮影、編集、どこの誰が面白いことを考えつくかわからないでしょ。

すべてのスタッフにとって「考える」ことが必要なんですね。

たとえば舞台などを例にとると、『ロミオとジュリエット』には既に脚本があります。これに対してどう味付けするか。役者に演技をつけることだけが演出ではないですよね。舞台装置、音響、照明...どのパートも演出を担っています。 「クリエイトすることは演出することである」と僕は思っているので、映像制作の現場においても、どの段階でも、どのパートでも、演出が働くと思っています。 だから、若い社員には「撮影とかの具体的なスケジュールが出るまでの9割で仕事は終わる」といつも言っています。考える時間・量・質が9割。あとの1割は頭の中で考えたことを実際にやっていくだけです。

若手がスキルを磨くにはどうしたらよいのでしょう?

上手くなる、面白くなるには自分の努力しかない。カメラ、編集機、パソコンといろいろな機材がある中で、同じものを使っても使う人間によって出来が違う。スキルを個人個人で磨いていかなければね。すごくいい機械を買っいてもオペレーターは素人、そんな会社じゃしょうがない。 そういう意味では、もうそろそろ人が先行しないといけない時代なんです。機械に追随していく時代がちょっと長かったけど、人間のスキルが機械を乗り越えていっていい時代が来ていると思います。

取材日:2015年2月18日

株式会社テレビシティ

  • 代表取締役社長:大脇信
  • 設立年月日:1989年4月28日
  • 資本金:4,000万円
  • 事業内容:
    • スタジオ部
      • HDノンリニア編集スタジオ×2
      • 3Dノンリニア編集スタジオ×1
      • デジタルMAスタジオ×2
    • 映像メディア部
      • 撮影クルー、機材
      • CM・TV番組・VPの制作
    • マルチメディア部
      • DVDデジタルオーサリング
      • コンピュータグラフィックス(CG)制作
      • インターネットホームページ制作
      • DVD・CD-ROMの企画・制作・販売
      • サーバ 設営・運営
  • 所在地:〒460-0006 名古屋市中区葵一丁目27番29号キリックスビル2F
  • TEL:(052)933-5131(代)
  • URL:http://www.tvcity.co.jp/
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