グラフィック2016.10.19

リアルに体験することの強みを生かし、 イベントをひとつのメディアとして世の中に確立した

大阪
株式会社カクタス 代表取締役社長 畚野 信恒 氏
株式会社カクタスは、イベントの企画制作に携わる会社です。 『梅田ゆかた祭り』『白浜花火』『中之島ウェスト』など多くの人が訪れるビッグイベントを、開催し年々反響を呼んでいます。 イベント業界では通常、企画と実施運営は別会社が手掛けることがほとんど。しかし「カクタス」は初めから終わりまで一貫して携わります。そこには強く込めた想いがありました。 「カクタス」がイベントで表現したいこと、伝えたいことについて、代表取締役の畚野 信恒(ふごの のぶつね)さんにお話を伺ってまいりました。

誰もが正当に評価されるべきという思いで、 自らビジネスに取り組む

御社の創業について教えてください。

22年前、現会長(前社長)の岡が30歳、私が20歳の時に創業しました。 当時すでに私は自分で様々なビジネスに挑戦していて、ちょうどイベント事業の経験があった岡と知り合い、一緒に仕事を始めたのです。 高校時代から学生生活の傍ら、起業家だった友人の父親に話を聞いたり、ビジネスの成り立ちを考えながら、なんでもトライしていましたね。

まだ高校生の頃からなぜそこまで真剣に取り組んでいたのでしょう?

多分スポーツをやっていたから負けん気が強かったのかもしれません。とにかく自分の力を思いきり試したかった。自分の道は自分で作りたいし、自分で責任を取りたいと思っていました。 そうして手掛けた自分の仕事は正しく評価されたいですよね。その思いは誰もが正当に評価されるべきだという思いと共に、今でもあります。 だから当時から雇われるという選択肢はなく、力を発揮できる場所を作りたいと、自らビジネスに取り組んでいたのです。

オーダーや与件は最低限の条件。本当の隠れた真意や課題は何か

御社の業務内容を教えてください。

プロモーション領域の中のイベントを軸にした会社です。 年間約400~500件の仕事を受けていて、パンフレットやWebに掲載している「梅田ゆかた祭」や「光のルネサンス ウォールタペストリー」など代表的なものの他に、小さな案件もたくさん携わらせてただいています。昔は街の抽選会やキャラクターショーなどもやっていましたね。 この数の案件を従業員30名で、対応するので過酷です(笑)。イベントの人の手配や、商業施設のプロデュースを行う関連会社が同じビルにあるので、そちらとも協力しながら、同時進行でいくつものイベントに携わります。

これまでに携わったイベントにはどんなものがありますか?

例えば創業当初からかかわっている「白浜花火フェスティバル」は、白浜の借景を生かし、西に沈む夕日と花火を楽しめるものです。観光促進が目的だったので、ガイドブックなど花火以外のプロモーションの可能性もあったかもしれませんが、1日限りだとしても、10万人が訪れたその経験を記憶にインパクトをもって残すことができれば、こちらの方が白浜の観光集客に最適だと思っています。

こうした企画は、初めからお題があるのですか? それともゼロから企画するのですか?

さまざまですね。時には希望されたお題と全然違う提案をすることもありますよ。 「これをやりたい」というクライアントの思惑があっても、それが効果をもたらすかどうかは、また違うことも多々あります。 イベントの仕事は、様々な業種と会社が関わりながら、ただ言われたことを形にして、現場まで起こすというのが、業界におけるほとんどの流れですが、我々は、クライアントのオーダーや与件は最低限の条件だと思って仕事に取り組んでいます。

隠れた真意や課題は何かを探り、色々な角度から見て、面白いと思えることを提案しています。

白浜花火

白浜花火

コンセプトを伝えるために、重要なのはクリエイティブ

お話しいただいた白浜花火などのイベントの成功は、御社が企画から実施運営まで一貫して携わることが影響しているのでしょうか?

そうですね、大きな強みだと思います。 イベントには様々な力があります。例えば、結婚式、祭やイルミネーションイベントなど、人を感動させるだけでなく、人生、あるいは街の活性化や社会に対して影響を与えるでしょう。 我々はその力を最大限に発揮し、イベントのコンセプトをお客様や来街者に伝えるのです。空間の演出、手に取るパンフレット、誘導の仕方、伝え方の工夫……。時には、本番当日までの期間をイベント化して期待感を醸成します。 企画から現場まで手掛ける我々だからこそ、できることがあると思うのです。

コンセプトを伝えるために重要視しているのは何ですか?

イベントにおけるクリエイティブですね。 実はこの分野には専門性と可能性がまだまだあると思っています。例えば、たった1本のポスターが印象的なメッセージを発信したり、イベントの主旨をわかりやすく伝えたりするのです。 訪れた人が実際に体験することで、作り手の想いや商品の素晴らしさ、土地の魅力などを感じられるのが、イベントの強みです。これはTVや紙面で伝える情報では味わえないリアルな感覚です。この場をきっかけに様々なコミュニケーションも生まれます。 これらを伝えるためのイベントをクリエイティブする力が、何より重要だと考えています。

梅田ゆかた祭り

梅田ゆかた祭り

イベントの力を使うことで、様々な課題の解決が可能になる

梅田ゆかた祭

これまでに印象に残ったイベントはありますか?

ここ5年は「梅田ゆかた祭」や「なんば光旅」「中之島ウエスト」「茶屋町スローデイ」など、街イベントに力を入れていますね。 中でもゆかた祭では、梅田の夏の風物詩であり、海外にも発信できるもので、誰もが愛着を持てるアイテムを探しました。それが「ゆかた」でした。 立ち並ぶどこの商業施設でもスタッフがゆかたでお出迎えするって、面白いじゃないですか。その期間、ゆかたで訪れたお客様に何らかお得になるサービスがあれば楽しんでもらえます。そうして誰もが気軽にゆかた姿で訪れる日になればいいと考えたのです。 でもいきなり浸透させるのは難しいので、例えば盆踊り大会やワークショップ、ライブなどゆかたをテーマに開催しイベントを盛り上げます。 イベントが当たり前になり、街中がゆかたであふれるまでには時間がかかるものなんです。

「梅田ゆかた祭」の狙いや目的はどんなものだったのでしょうか?

基本は街の魅力作りのためです。ただそこには、見た目の華やかさや集客だけでなく、将来的な構想も含まれています。「梅田ゆかた祭」「梅田スノーマンフェスティバル」の場合、梅田に関わる企業、行政、地域活動団体が連携し協力体制を取っています。 アメリカ、ニューヨークのタイムズスクエアという街の中心部では、もともと車道だった場所を歩道として幅を広げ、流入人口を単純に増やすだけではなく、安心安全な歩道空間はもとよりイベントの開催や緑化など、街の個性づくりにもひと役かっています。体験を通して街歩きの楽しさを伝えるためです。 もちろん日本でいきなり、民間企業が行政に歩道化を希望しても難しいでしょう。けれども、街のイベントで一時的に通行止めにすることはできます。 そうした機会には、歩道化した方がいい箇所を通行止めにしておいて、その際に起こる交通障害や地元協議など、なにがどのように作用するかを検証しています。 やっていることはイベントですが、そのイベントの力を使うことで、様々な課題の解決が可能になるのです。

一番大事なのは、人を大切にできる性質

「カクタス」ではイベントごとにチームを組んで仕事をするそうですが、その際一番大事なことは何ですか?

当たり前なんですけど、人に優しくて、嘘をつかないことですね。 採用する際に求めるのも、真面目で人を大切にできる性質をベースにもっている人材です。 案外少ないですよ。自分を良く見せようと、カッコつけたことを言ってしまうのでしょうね。最近は人に優しくできない人も多い気がします。 でも、イベントは一人ではできない仕事がほとんどです。同僚がしんどそうだったら「なんか手伝おうか」とか声をかけたり、手助けしたり、そうした思いやりや優しさがないと、一緒にやっていくのは難しいでしょうね。

企画力や想像力、柔軟性などが重視されると思いますが?

そうした能力は、性質の“次”です。仮に本人にそれができなくても、周りの力を借りれば済みますから。人を大切にできる性質をベースを持った人なら、真ん中に立って周りの人を動かすことができます。 我々の仕事はイベントの初めから終わりまで、同じトーンで仕上げていくことです。例えばクールがテーマなイベントで、クールなトーンとは違うポスターやセンスのないスタッフユニフォームは問題です。クールというコンセプトを運営スタッフやグラフィックデザイナー、美術装飾、照明など各所と調整して突き詰めないといけません。それには周りの力を引き出し、結集させる仕事の仕方が大切なのです。

ここ2~3年で組織編制が変わったということですが、会社として大きく変わったことはありますか?

これまでは個々の能力が際立ったプロデューサー感覚の人材を多く育ててきたのですが、これからはそれぞれの知識経験を生かし、組織的に大きな仕事や専門的な仕事も受けられる会社にしようと、編制を変えました。仕事の内容もプロモーションという広い領域から、イベント中心に絞りました。 そうして今3年ほど経ちましたが、やっとどんなイベントにおいても、カクタスのクオリティというものを均質化できてきたと思います。

イベントをひとつのメディアとして世の中に確立できるような 会社になりたい

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今後はどのような事業展開や目標を目指しているのでしょうか?

海外ではイベント会社は建築士と同じくらいの社会的地位がありますが、日本ではまだそこまでではありません。こうした業界全体の現状を変えていきたいですね。 今マスメディアやWebメディアが優位に動いていますが、イベントはその対極にあるメディアとして捉えることができると思います。リアルに体験できることの強みを生かせば、ただ画面で見るだけのTVやWebとは違う商品PRができたり、観光の促進になったりするでしょう。 我々の仕事は、イベントが持つこうした可能性を最大限に引き出すことです。イベントをひとつのメディアとして世の中に確立できるような会社になりたいと思っています。

その際、重要になるのがイベントにおけるクリエイティブということですね?

そうです。今は企画から現場まで携わっていますが、今後はイベント終了後の情報発信まで視野に入れていきたいと考えています。SNSや動画配信など情報拡散できるツールをうまく使っていきたいです。ただその場合も単純に拡散するのではなく「クライアントや課題のニーズに沿ったものを情報伝達するためにどうするか」という設計が必要でしょうね。 クライアントと一緒に課題解決を考え、訪れる人の体験をデザインし、ディレクションするためにはクリエイティブの力はとても重要な位置にあるのです。

取材日: 2016年9月26日 ライター: 東野敦子

 

株式会社カクタス

  • 代表者名: 代表取締役社長 畚野 信恒(ふごの のぶつね)
  • 設立年月: 1996年5月
  • 資本金: 3,000万円
  • 事業内容: プロモーションプロデュース全般及びディレクション コンサルティング業務 広告代理店業務 イベント企画・制作・運営管理・実施 コンピューターシステムに関する業務 地域活性・新規事業開発業務
  • 所在地: 【大阪本社】大阪市西区新町1-28-11 安川ビル5F 【東京支社】東京都港区赤坂8−8−1 AKASAKA8ビル202
  • URL: http://www.cactus7.co.jp/
  • お問い合わせ先:大阪本社 TEL: 06-6533-3005 FAX:06-6533-3006 東京支社 TEL: 03-5770-6800 FAX:03-5770-6801
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