後悔したくないから思ったことは全部やる 「独立する」と決め、ゼロから始めて経験の中で学ぶ
- 大阪
- 株式会社グローアップス 代表取締役 長谷 英典氏
今、独立しなければ、一生できないと思った
まずは、会社設立の経緯をお聞かせください。
きっかけは3年半前に、弊社のWebデザイナー川谷と出会ったことです。 彼は現在、Web制作に係わる部分をすべて取り仕切り、自らもデザインからディレクションまで担当しています。私自身はもともと勤めていた広告代理店で、プロモーションの運営やディレクションの経験がありました。 お互い「いつか独立する」という目標があったので、出会いを機会に、それぞれの経験を合わせて会社を設立したのです。
具体的な展望はあったのですか?
今独立しなければ、一生できないと思いました。 後悔はしたくなかったので、まず「独立する」と決めて、正直後のことは考えずに登記簿を仕上げました。
それほどの覚悟ができたのは、なぜですか?
いつか自分で商売したいという気持ちを、ずっと持っていたからだと思います。 母親が美容業界で商売をしていたので、小学生の頃からその会社を継いで商売をしなさいと言われて育ちました。 本音を言えば、世間を知らないまま親と同じ道には進みたくなかったのです。ところが、中学在学中(私自身)に、大きな病気が見つかり「あなたのしたいことをしなさい」と母が言ってくれたので、とことん自分の道を究めようと思いました。中学卒業の時点で、25歳までには起業しようと現実的に考え周りにも宣言していました。
高校に行っていれば今の事務所も仲間もない 思うように一本道を貫いてよかった
なるほど、独立への原動力になったのはお母様の背中だったのですね。そうは言っても、中学生で「独立したい」と考える人はほとんどいないと思うのですが、高校へ進学しなかったのも同じ動機からですか?
学校の友人と自分の世界が、もう全然違うと感じたことが、一番の原因です。 幼い頃から、周りは商売をしている10歳も20歳も年上の方ばかりで、普通に会社や仕事の話をする環境で育ちました。そのため同世代の友人とのつき合いはあまりなかったんです。 中学時代は、周りの大人たちが、稼いだお金でお茶に連れて行ってくれたり、食事に招いてくれたりするのに、自分は親からお金をもらっていることに、違和感を抱いていました。
中学時代に抱いた違和感が、その後の道を決めるきっかけとなったのでしょうか?
そうですね。実際18歳の頃には、ディレクションを担当していましたが、同じ頃同世代の友人は体育祭や文化祭で騒いでいたわけですから、温度差はすごいです。きっと普通に高校に行っていれば物足りなかったと思います。だから後悔はありません。むしろ高校に行っていれば今の事務所も仲間もないですから、思うように一本道を貫いてよかったと思います。
「もしやめてもまた作りましょう」と言われ、 やめるわけにはいかないと思った
Webサイトは今やほとんどの企業が持っていますが、新規参入には苦労があったのではないでしょうか?
確かに、1年目は売り上げが立たず苦しかったです。 ですが、この業界にすでに多くの競合会社があったとしても、開拓が難しいとは思いませんでした。 これからまだまだ伸びしろがある業界であり、とても面白い仕事だと感じていました。 実際、めげずにあちこちに顏を出していると、2年目からは忙しくなり、今の場所へ引っ越すことができました。それまでは飲み屋街のマンションで、18時を過ぎると、演歌が聞こえるような環境だったんです。3坪の部屋に3、4人で仕事をしていたので、とても広くなりました。
苦しかった一年目、そこでやめなかったのはどうしてでしょうか?
ひとりではなかったからだと思います。 もうやめようと思ったのは2度や3度ではありません。私だけだったらとっくにやめていたと思います。 一度、当時のメンバーに、このままでは共倒れになると、有名な会社を紹介するのでそちらに行くよう話したことがあります。けれどその時に、メンバーから「もしやめてもまた作りましょう」と言われて、やめるわけにはいかないと思いました。
初めての受注は、ひと月1万円のホームページ制作 この時のことはずっと忘れません
現在、業務はWebサイト制作が中心とのことですが、御社の強みを教えてください。
イベント関連の仕事にも対応できることです。 少し前に携わったファッションショーの「神戸コレクション」や「関西コレクション」では、広告の制作、キャスティングに加えて、バックヤードでのヘアメイクまで担当しました。 実は、リアルなイベントの運営と並行して広告周りにも携わることができる会社は、関西では多くありません。これは大きな強みです。 最近も「関西コレクション」で外国人のインバウンド向けの事業に、大手旅行会社様と一緒に携わりました。シンガポールから美容ツアーで来日された方々を対象に、ツアーコンテンツのひとつとして、ファッションショーの観覧を企画したのです。来日される約300人に向けた規模のイベントで、事前のディレクションから当日の運営までを任せていただきました。
一番印象的だったお仕事はどのようなものでしたか?
初めて受注した弊社1件目のお仕事です。 ホームページ制作で、売上はひと月1万円の仕事でしたが、受注できた時は、めちゃめちゃ嬉しかったです。 それまで勤めていた会社はすでにたくさんのクライアントを持っていて、こちらから営業することはなかったので、どうやって仕事を取るのか、全てが初めての経験でした。 そんな手探り状態の中、たまたま知人から、ホテルを80棟持つ会社の子会社で割と大きなところを紹介してもらったのですが、弊社は実績がなくてなかなか受注できませんでした。 ところが、2か月通い続けたところ「ここまで熱心に足を運んでくれたから」と、お仕事をいただけるようになったのです。 この時のことはずっと忘れません。
呼ばれればすぐに出向く、フットワークの軽さが営業の取り柄
営業は、どのようにされているのですか?
友人を通じて知り合うことが多いです。プライベートでの交流は10代から働いているため、年上で会社を経営されていたり、大きなイベント会社のプロデューサーをされている方が多いのです。そうした方々が、同じように大企業に勤めているようなご友人を紹介してくださいます。そこからお仕事につながることは少なくなりません。 仕事で知り合った方からのつながりで新しいお仕事をいただくことも多いです。 例えば先ほどの「関西コレクション」でのお仕事も、あるお客様がきっかけでした。 以前、弊社のお客様で美容室を経営されている方が、ファッションショーのランウェイを歩くタレントのヘアセットを受けてくだり、そのつながりで広告も任せていただいたことがありました。 こうした様々な機会のおかげで、起業2年目から受注件数が増えてきたのです。
出会いはあっても、実際お仕事に結びつくのは難しいと思うのですが、受注につながる鍵は何だと思いますか?
行動力でしょうか。 プライベートで知りあって、「会社へ来なさい」と言われたら「伺います」と即答してから、本当に後日名刺を持って訪ねます。 実際には、「行きます」と答えておきながら、行かない人が多いのではないでしょうか。 この呼ばれればすぐに出向くフットワークの軽さが、営業としては相手の方に受け入れてもらいやすいようですね。
反対に、失敗した経験は?
クライアントを怒らせてしまったことがあります。 仕事量が急激に増え、対応しきれずご迷惑をおかけしてしまいました。その時、代金をいただかないことはもちろん、代表の方に直接会えるまで足を運んで、お詫びの品を届けました。失態を認めて誠意を尽くすことで許していただき、また次の案件も依頼していただけたのです。
まさに長谷さんのフットワークと、お人柄が表れたエピソードですね
そこしかないと思っています。 弊社はまだまだ日本一のWebデザインやグラフィックが作れるような、特別なものはありません。だから正直、営業に関してはどれだけ誠実にできるか、私という人柄で判断されると感じています。 私自身、デザインができるわけでもないので、社内のデザイナーたちができないことをやり、フォローを徹底するつもりです。
まったくゼロから始め、経験の中で学んでいく感覚
現在、従業員は何名ですか?
アルバイトを入れて6名。コーディング、デザイン、ディレクション担当がいて、Webやグラフィックを制作しています。撮影作業もありますが外注で、それも含めたディレクションを川谷が取り仕切っています。 私はひとりで営業周りとイベントを担当しています。
ひとりで営業をされて3年、今感じていることをお聞かせください。
この会社を始めた時、ルールも仕事の取り方も、何が正しいのか全くわかりませんでしたが、やっとこれが正しいと思える形に近づいたと感じています。営業の仕方や仕事のマナーなど、独立してから経験の中で、学ばせていただくことが多かったですね。 最近は海外のお客様が多くなってきたので、問い合わせの対応管理が難しいと感じています。 でも取引先のある香港、台湾、NYの現地オフィスへ伺うことがありますが、東京出張よりもテンションは上がりますね。 会社設立もそうですが、まったくゼロから始めていく感覚、自分はそういうのが好きなんだと改めて実感しました。
人生は賭け。不安や多少の犠牲は覚悟で、 思っていることは全部したい
今後どのような方とお仕事をしていきたいですか?
クリエイティブセンスの高い方です。 海外に行って感じるのは日本とのレベルの差です。海外では卒業したての学生の多くが、日本で10年のキャリアを持った方と同じくらい高いクオリティでものを作ります。Webはもちろん、事務所の雰囲気からして違うのです。
これからの目標を教えてください
年内に東京と大阪に1支店ずつ会社を設立予定です。 大阪には、増えてきた撮影案件のためフォトスタジオを作り、東京には、Web制作会社を作る予定です。 私自身は、代表という立場にこだわっていないので、いつかは他の者に会社を任せて新たな会社を創りたいです。Web関係の仕事以外にも、イベント業や飲食業、母が携わってきた美容業界の仕事も視野に入れ、会社を増やしていこうと考えています。 人生は賭けだと思っていますので、不安や多少の犠牲は覚悟して、思っていることは全部やってみたいですね。
取材日: 2016年10月19日 ライター: 東野敦子
株式会社グローアップス
- 代表者名(よみがな):代表取締役 長谷 英典(はせ ひでのり)
- 設立年月:2014年6月
- 事業内容:WEBサイト制作・システム開発・アプリ開発・プロモーション
- 所在地:〒550-0013 大阪府大阪市西区新町1丁目24-8 ノース四ツ橋ビル203
- URL:http://grow-ups.jp/
- お問い合わせ先:06-6110-7737