完璧を目指すより、まずはやってみる リスクを恐れず、世界に通用するサービスをつくりたい
- 大阪
- アンジップ株式会社(unzip Inc.) 代表取締役 辻川 拓志氏
学生時代のシステム制作が評価され、大きな仕事の依頼を請ける
会社設立が20代前半の時とうかがっていますが、早くから独立を考えていらしたのでしょうか?
親が会社を経営していたこともあり、独立したいという思いは学生の頃からありました。けれどそれは社会経験を積み、人脈を作り、30歳くらいでと考えていました。 ところがたまたま23歳の時に独立することを条件に、システム開発の仕事を紹介されたのです。 紹介してくださった方は、例えば週末起業のような片手間の仕事でなく、きちんとシステムを運用保守できる人材を求めていたため、思いがけず早い時期ではありましたが、独立を決めました。
その後会社を設立した経緯を教えていただけますか?
独立後1年ほどは、独立のきっかけとなった仕事の他、企業のIT顧問や、PC設定などいくつかの仕事を1人でこなしていました。段々仕事量が増え、手が足らなくなってきた時点で会社として設立しました。その頃には仕事の単価も上がり、大きな仕事もいただけるようになっていたので、対外的にも必要だったのです。
会社として運営する上で難しかった点はありますか
会社を立ち上げて半年後くらいから2、3人体制で運営していました。初めは私と近い世代の人を起用したのですが、なかなか定着しませんでした。取引先に紹介してもらったお客様から直接個人的に仕事を請け負い始めてしまった人もいて、驚かされました。 そこで、逆に30代の方を採用したところ、仕事がスムーズに進むと分かったんです。いろいろな経験をお持ちで、私がわからないことをフォローしてくださるのでとても頼りになります。それからは採用に年齢をあまり気にしていません。最近はスタッフも11名まで増え、バランスの良い体制で落ち着いていますね。
システム開発とデザイン両方できることが強みの理由
現在のお仕事内容をお聞かせください
システム開発とHP制作というキーワードを上げていますが、Webを使ったシステム開発をメインに扱っています。システム開発だけでなくデザインもできるという点が強みですね。弊社の場合、メンバー構成もシステムエンジニアとデザイナーが半々です。
デザインができることを強みにするのは、こだわりがあるのでしょうか
実は私は個人的に、システム開発の人間が作るデザインに納得いかないことが多いんです。 例えば「登録します」というボタンがなぜか1番上にあったり、すごく小さくて目立たなかったり、あるいは入力したものがすべて消えてしまう「クリア」ボタンが必要のないフォーマットに設置されていたり、使いやすさという視点が足りないと感じることがあります。プログラマーは機能として動けばいいという感覚の人が多いように思います。 そういったことが得意なのはデザイナーです。見た目や使い勝手はやはりデザインをきちんと学んだ人のほうが長けています。 だからシステム開発とデザインの両方が必要だと考えているのです。
チームワークの難しさはありますか?
デザイナーはシステム開発で何ができるかわからない、逆にエンジニアもデザイナーの要望を面倒と思いがちです。そのバランスをとるのは難しいですね。 弊社では、デザイン部門でHPが見られる状態まで作り、その後エンジニアが機能を加えたものをもう一度、デザイナーが使い勝手など細かいところを直すという流れでやっています。 細かい修正は誰が早いかと話し合ったところ、コーダーが早いということで、このようになりました。 初めは私が入って調整をしていましたが、最近は私が居なくてもできるように進めているところです。
お客様と一緒に作り上げる楽しさを感じつつも、受託制作であるという一線を引く
楽しいと感じるのはどんなお仕事ですか?
お客様が新しく始めるビジネスやサービスを扱う案件は、一緒に作り上げる楽しさがあります。言われたものを作るだけでなく、お客様の希望に沿うようなシステムや、ビジネスアイディアを提案しています。そうして1個のシステムをリリースして売上げが上がると、また次の提案へつながるんです。 例えば企業が採用に実施する適性診断を作る会社からの依頼で、紙ベースだったテストをシステム化した際には、PC上で、試験の種類や項目を増やしたり、Web上でも対応できるよう環境設定にしたり、次々と発展しました。これはお客様と一緒に作り上げながら成功した例です。こちらから提案したことで、できるなら作ろうかという話になったのです。
開発をする際、心掛けていることがあれば教えてください
受託制作はお客様のものであると、意識して取り組むようにしています。楽しさのあまり、自分たちが制作したものと捉え過ぎると、ジレンマに陥ることがあるのです。受託制作であるという一線を引くよう心がけて、必要以上の話はしないようにしています。
社会で使えるシステムを作るため、勉強したものを使える場を提供する
現在専門学校で非常勤講師として教えられているそうですが、どのような経緯があったのですか?
実は母校の専門学校で、私が学生時代に作ったシステムが卒業後も使われていたんです。それを古くなったので作り直して卒業課題のグループ制作にしたいという学生がいるから、相談に乗ってほしいという依頼が始まりです。 私自身、学生時代にアルバイトで経験を積んだことが、独立のきっかけにもなっていたので、自分が経験したようなことを今の学生も体験できるような、サポートをしたいと考えていました。正直学校の勉強だけでは、実際の現場で使うには足りないと感じている部分もあります。学んだことを使える場を、学生たちにどんどん提供したい、あるいはそのきっかけになればいいという思いから、非常勤講師のお話を受けました。
具体的にはどのようなことを教えていらっしゃるのですか
授業としては週1回最上級生のクラスで、チームを組んで取り組む卒業制作の授業を受け持っています。システムを1つ作るのですが、ただ作るだけでは面白くないので、実際現場で使ってもらえるようアドバイスをしています。 例えばある学生はインスタグラムのようなサイトを作るのですが、管理者側の立場を全く想像できていませんでした。変な画像が上がれば削除する機能が必要なのに、ただ画像をアップロードするだけの機能しか持たないサイトができてしまうのです。それでは世の中に出せません。 またどうやって利益を出すのかという話もします。1クリックの課金より、会員登録で月会費にした方が定期収入になるとか、広告収入の仕組みがどんなものかなどを説明すると、学生はかなり興味を持って授業に参加してくれます。 お客様がどう思うかという視点が学生には欠けているんですね。そこをビジネスの側面で指摘し、気付いてもらうことが大事だと思っています。
御社では学生のサポートとしてインターンも積極的に受け入れ、最近は海外にも面談に行ったそうですが、詳しく教えていただけますか
アフリカのルワンダに行きました。きっかけはエンジニアが足りず、オフショアできる先を探していていたことでした。実はルワンダは国を挙げてIT化を推進していて、ITを勉強している学生も非常に多いのです。 しかしルワンダにおける勉強の水準は日本の専門学校と変わらないのに、ITの仕事には就けず農家や家の仕事を継ぐ人がほとんどです。日本ではアフリカの学生に日本の大学で学んでもらい、半年企業のインターンとして働いた後、国に帰ってもらうという制度を設けています。そのインターン生を弊社でも受け入れようとしています。 ルワンダでは初対面の学生と面談をして、気に入ったら推薦状を書いてほしいと言われ、1人の名前を書いてきました。実際に日本の制度を使って来日できるのは、250人だそうですが、その選考をパスすれば弊社へ来ることになっています。 たまに英語でフェイスブック上にメッセージが来るので驚きます。すごく勉強熱心で、少し教えた技術を半年後に「とても使いやすかった」と感想を送ってくれました。そんな学生に日本では会ったことがありません。それくらい意欲が高いんです。非常に楽しみですね。
完璧を目指して時間をかけるより、まず小さなシステムを作り上げて市場に出す
今後目指していることや、新しく考えている取組みなどはありますか?
実は数年前まであまり将来のビジョンというものがありませんでした。けれどここ数年は自分たちでサービスを提供したいと強く思うようになりました。目の前では、2年くらい眠らせていた勤怠管理アプリをリリースしようと考えています。余計な機能を全部削いで、勤怠だけでもつけられるよう作ってまずは一度市場に出そうと計画中です。そう思うようになったきっかけは、一昨年、神戸市の企画でシリコンバレーのセミナーへ行かせてもらったことです。そこで起業家について多くの話を聞いたことが大きいですね。
具体的にどんなお話を聞かれたのでしょうか?
シリコンバレーでは、ベンチャーキャピタルで事業アイディアのプレゼンをしました。そこで私はものすごく壮大なプレゼンをすべきだと考えていたんです。ところが「小さくても1つでいいから完成させたシステムをもってきなさい」というフィードバックをもらいました。 日本人は時間をかけ完璧な状態で提供しがちです。というのも、もし世に出して失敗すれば二度目はないと思い、そのリスクを回避するためです。 でもシリコンバレーでは、とりあえず一回作ってみて100人でも200人でもユーザーができればそこから広まっていくという視点を持っていたのです。
シリコンバレーでの経験からどのような展望を持たれましたか
私自身はリスクを負うことは全然怖くない人間で、むしろ世の中に合わせてきちんとしたものを作らなければならないという考えは好きではありませんでした。だから「完璧を目指して時間をかけるより、小さなシステムを一回作って世に出せば誰かが使ってくれる」そんな気持ちで動いてもいい、という考えがすごく腑に落ちました。 今後は「1か月でできるものを作る」ことを目標に、開発したものをどんどん市場に出して反応を見たいと思います。もちろん当たるかどうかわかりません。わからないなら、やってみればいいじゃないかと考えています。 そうしていずれは世界に通用するサービスを作っていきたいですね。東京より世界を目指しています。
取材日: 2017年3月22日 ライター: 東野敦子
アンジップ株式会社(unzip Inc.)
- 代表者名:代表取締役 辻川 拓志(つじかわ たくじ)
- 設立年月:2012年5月
- 事業内容:ホームページ制作・Webシステム制作・各種印刷物制作・Webサービスの提供・スマートフォンアプリ開発
- 所 在 地:〒541-0056 大阪府大阪市中央区北久宝寺町2丁目6−10 ニューライフ船場3階
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