ドローンの可能性に魅せられて、 人材と企業を繋ぐ架け橋をめざして
- 仙台
- 株式会社東北ドローン 代表取締役 桐生 俊輔 氏
初めてドローンを飛ばした時の感動を、多くの人に伝えるために
7月に起業されたばかりとのことですが、まずは設立までの道のりを教えていただけますか?
私は仙台市出身ですが、昨年の6月まで岩手県盛岡市の広告代理店で、9年ほど営業の仕事に携わっていました。もともと子どもが小学校に入学するタイミングで仙台へ戻りたいと考えていたこともあり、仕事も一区切りついたので退職して仙台へ戻り、個人事業主として広告の営業代行業をしていました。そんな中でドローンを使った仕事に関わるきっかけがあり、実際に撮影した映像を初めて見ました。その映像の美しさにとても感動したのと同時に、「これはうまく活用できる!」と確信しました。それから、操縦士の技術認定資格を取得し、たくさんの情報を集め、その中でドローンに興味を持っている仲間たちと知り合いました。彼らと接する中で、飛ばせる場所がわからないなど、ドローンに関する情報が世の中に十分に知れ渡ってないことに気づいたんです。そこで同じ思いを持った仲間と、練習場を提供したり、操縦士を育成する側になろうと、今年7月29日に株式会社東北ドローンを設立しました。
やはりドローンに初めて触れた時の思いが、会社設立への原動力になったんですね。
そうですね。自分が住んでいる街を空から俯瞰した時の感動、普段は見上げるばかりの高層ビルや慣れ親しんだ街並みを、別の角度から見られた時の発見。そのすべてが新鮮で、自分が初めてドローンを飛ばした時の感動を、たくさんの人に味わってもらいたい。そして、飛ばせる人(操縦士)と飛ばしたい人(企業)を繋げる存在になりたいと思ったのです。
あまり知られていないドローンの基本的な知識
実際に操縦するにあたって、何か特別な資格が必要なのでしょうか?
今現在、車の運転免許のような操縦士資格というものはドローンには存在しません。様々な企業様や団体様で独自の認定資格というものがありますが、必ずしもそれが必要というわけではないのです。ただ、昨年12月10日に国土航空省の航空局が航空法を改正し、これまでオモチャのような存在だったドローンが「無人航空機」として認定されました。少し難しい話になりますが、認定されたことにより、飛行領域を制限され、人口密集地をはじめ、空港やヘリポートの近くは飛ばせないなど、数多くの飛行制限が定められました。例えば、私は国土交通省が定める日本全国の飛行禁止空域を独自の飛行マニュアルに基づいて人や物件の安全を確保した撮影の飛行のみを許可されましたが、誰かが所有する土地で勝手に飛ばすわけにはいかないので、必ず許可を取るようにしています。簡単にまとめると、どこでも自由に飛ばしていいという訳ではないということですね。
ドローンのスペックや種類について、簡単に教えていただけますか?
ドローンにはオモチャのような機体から産業用まで、幅広い種類があります。例えば、私は空撮用のドローンを愛用していますが、限界高度は6,000メートル、手ぶれ補正付の4Kカメラ搭載、画像は機体のSDカードに保存されます。4Kカメラで撮影された画像は、想像を遥かに超える美しさで、なかなか編集できるスペックのパソコンがないくらい鮮明です。リチウムポリマーバッテリーという有能かつ、慎重な取り扱いが必要とされる大容量のバッテリーを使用し、最新のセンサー技術により機体の姿勢を保つなど、とても高性能な構造になっています。話すと長くなってしまうので、とても簡単な説明ですが、なんとなくイメージしていただけますか。
練習場運営・操縦士育成・イベント企画の3事業を展開
現在の事業内容について、お話いただけますか?
まずは大きく3つの事業内容に力を入れています。1つ目はドローンを飛ばせる練習場の運営です。先ほどお話しした通り、ドローンを飛ばすにはいろんな制約があるので、まずはドローンを飛ばしたい人が何も心配なく飛ばせる場所を作りたいと思い、宮城県黒川郡大和町(たいわちょう)に「ドローン専用練習場ブーメラン」がオープンし、そこの運営を東北ドローンで受託しました。ここでは通常の飛行以外にも、夜間飛行、目視外飛行(目に見えないところでの飛行)の練習ができるように国土交通省へ練習用の許可を受けることも可能で、思う存分、飛行練習ができます。2つ目は操縦士育成のための講習です。ドローンの飛行には操縦方法や飛行場所など、法律を勉強しないといけませんが、つい忘れがちな取り扱い方法にも注意が必要です。以前、私もドローンで手をざっくり切る大ケガをしたことがありますが、多くの操縦士がケガの経験を持っています。小さく見えますが、プロペラは鋭く回転しているのでとても危険なんですよ。ですから、扱い方についても詳しくレクチャーし、東北ドローンの講習認定を受けたという証明を作りたいと思っています。そして3つ目はイベントの企画です。ドローン体験会など、誰もが気軽にドローンに触れられるきっかけを作りたいと思っています。まだ設立して間もないので、最初のステップとしては、この3つになりますね。
御社がドローン事業を進める最大の目的はなんでしょうか?
ドローン産業に関わる人材と企業様を増やすことですね。今現在、ドローンを扱う人は圧倒的に少ないですし、運用するための法律も難しいですが、ドローンには大きな可能性と魅力があります。美しいものを撮影するだけではなく、災害救助の場でも役に立つんですよ。東日本大震災当時、津波で流されて、夜通し助けを待っていた方が多くいらっしゃいました。そんな時に何百台かのドローンを飛ばして、助けを待っている人をいち早く発見できていたら、救助の手が早く届いたと思います。災害は昼夜問わず、いつ起きるかわかりません。そのために、夜間飛行や目視外飛行も難なくこなせる操縦士を育成して、いろんな場面でドローンが役に立つパートナーになれたらと思います。
目標はドローンが当たり前のように活躍する時代づくり
これからという時だと思いますが、ぜひ今後の展望について聞かせてください。
ドローンが当たり前のように使われる世の中にしていきたいです。かつて「なにこれ?」と思われたスマートフォンが当たり前になったように。今は空撮や測量、調査の現場に使われるのが一般的ですが、操縦士が増えることで、今はまだ考えられないような使い方も増えていくと思います。例えば、まだまだ試行錯誤が必要ですが、働く方の多くが65歳以上(平均は67歳)の農業分野において、若い世代がドローンを使って農作物を管理できるような「スマート農業」を提案するなど、いろいろな人たちに操縦士になっていただき、幅広い運用をしていただきたいです。とにかく、ドローンに興味を持っている方を大募集しているので、少しでも興味があるという方はホームページに記載のメールでも電話でも、気軽にご連絡いだけたらうれしいです。
最後に桐生さんが大切にされていることや、若い世代のクリエイターへメッセージをお願いします。
何も考えないでやってみても、意外となんとかなるものです。と言うといい加減に思えますが、先々をシミュレーションし過ぎて、初動が遅れるのはもったいないと思うのです。ある程度準備をしたら、まずはやってみるかという気持ちも大切ですよ。私もセミナーへ参加したり、多くの本を読んだりして、先人たちに学びますが、それを参考にしつつも頭でっかちにならないように、先人たちの教えを自分なりに解釈して、ビジネスの役に立てています。やってみたいことがあれば、ぜひその一歩を踏み出してくださいね。あとは私が活用している方法として、暇さえあれば商工会・国民金融公庫のセミナーに出かけていろいろな方々と知り合い、なるべく相手に負担をかけず、気軽に情報を共有できるSNS(Facebook)で連絡して繋がりを作ることです。人脈は財産になるので、ぜひ出会いを大切にしてくださいね。
取材日: 2016年8月17日 ライター: 桜井玉蘭
株式会社東北ドローン
- 代表者名(よみがな): 代表取締役 桐生俊輔(きりゅう しゅんすけ)
- 設立年月: 2016年7月
- 事業内容: ドローンでの空撮、ドローンパイロット育成、ドローン練習場運営、ドローンマッチング事業など
- TEL: 022-290-0801
- URL: http://www.tohoku-drone.jp/