医療とICTを結びつける創造的なプロジェクトで ヘルスケア業界に新風を巻き起こす革新企業
- スマートメディカル株式会社
- スマートメディカル株式会社 ICT事業本部 副本部長 吉田 雄氏、PCC事業本部 紺野 陽亮氏
今春、JR仙台駅に直結する駅上商業ビルに 『医の森クリニック 仙台』を企画誘致し、開業。
今春、JR仙台駅に直結するショッピングモール、エスパル新館の中に、御社が開業支援したクリニックがオープンしましたね。
吉田氏:はい、おかげさまで無事に開業することができました。若い人から年配の方までが行き交う駅に多診療科診療所を置くことで、病院がもっと身近になり、より病気予防に近づくと考えています。
紺野氏:JR駅直結の場所にクリニックを設置したのは東北初と聞いています。『医の森クリニック 仙台』では、ちょっとした相談から術後のケアまでを、連携先病院と一緒に見守る総合かかりつけクリニックとしての役割を目指しています。日々の病気予防のため気軽に足を運んでいただきたいと簡易検診なども行っています。駅という場所を拠点にすることで、わざわざ行くのではなく、いつでも寄ることの出来る通いやすさを重視しています。
新しい事業ですが、今後期待できることは何でしょう。
紺野氏:東北の玄関口である仙台駅で、一般内科でも生活習慣病に特化した診療所としてスタートしました。糖尿病専門医と循環器専門医を配置し、生活指導を行える環境を整えています。ショッピングモール内に立地することもあり、オープンから半年を経て、若年層の女性の患者さんに多く来院いただいていることもわかりました。女性のニーズに応える意味で、今後診療科を増やすことも検討しています。また、医師にとって働きやすい環境を整えることも重視していて、医師の勤務は基本的に複数人体制にし、育児中の女性医師が復職しやすく、また開業ではなく現場にこだわる専門医などからも支持を得ています。
吉田氏:そして、仙台の開業支援から2週間程あとに東京の浅草橋駅前に複数の診療科を持つクリニックの開業も支援させていただきました。いずれもアクセスに便利な場所のためタイムリーな受診や早期発見・治療につながることができればと考えています。仙台、浅草橋双方とも耐震性に優れたビルですので、災害時には地域の医療救護活動拠点となることも想定しています。
駅の役割が増えますね。
紺野氏:ええ、そうですね。同じように今後20ヵ所以上の駅や駅周辺でクリニックの開業を支援する予定です。弊社では、以前から鉄道会社と打ち合わせを重ねており、生活動線上にある駅や駅前に健康相談や初期の医療を受けられるクリニックの必要性を訴えてきました。そのおかげで直通エレベーターの開設や災害時の動線確保など積極的な協力を受けることができています。
吉田氏:PCC事業は、単にクリニックを企画・誘致することだけでなく、その駅の魅力や地域の医療サービスの拡充にも貢献できると考えています。
各方面から大注目の『Empath』、 音声から感情を解析する独自アプリ。
もうひとつの事業であるICTセルフケア事業について教えていただけますか。
吉田氏:はい。PCC事業にも関連するのですが、介護に頼らないような健康寿命を延ばすには、それぞれが予防意識を高める必要があると考えています。その予防というカテゴリの中で、診療の間をICTでつなぐライフログ技術の開発と運用が必要とされており、弊社では音声等の物理的な特徴量から気分の状態を独自のアルゴリズムで判定し、気分状態を測定するアプリケーション『Empath(エンパス)』を開発しました。『Empath』は音声から気分状態を解析してすぐに分析結果を画面上で確認できます。PC上はもちろん、スマホアプリとしても活用が進んでいます。
具体的にどのように活用されているのでしょうか。
吉田氏:初めは東日本大震災直後、NPO団体で活動する方々のメンタルヘルスのために開発しました。被災者はもちろんですが、サポートする人々のメンタルヘルスのケアが急務でした。出勤したばかりの朝の挨拶、昼・夕方の音声を分析し、自分自身で心の状態を確認することはもちろん、管理者がスタッフの気分の落ち込みがないかを把握し、モチベーションを視認できるよう、セルフケアやマネジメントに活用していただきました。現在もベネッセホールディングスの子会社であるTMJのコールセンターで、オペレーターの資質向上のためにも活用されています。そこでの共同研究の結果、オペレーターの気分状態と顧客の満足度やアウトバウンドコールでの獲得率との相関が明らかになりました。また、パフォーマンスの高いオペレーターは他のオペレーターと比較して「モチベーション値」が高く、感情表現の傾向にも違いがあることがわかりました。このような結果から、顧客対応中にリアルタイムで上長が指示を出す試みや、顧客の感情に寄り添った自動応答システムの開発を視野に入れるなど、新たなサービスへの展開を目的としています。
被災直後のメンタルケアから生まれたエンジンなのですね。 『Empath』を使って他にはどのようなプロジェクトやシステムが生み出されているのでしょうか。
吉田氏:従業員自身が気分のセルフチェックができるアプリ『じぶん予報』(https://jibun-yohou.jp/lp)をNTTドコモのビジネスプラスにてリリースしています。「全ての働く人と企業を元気にする」をスローガンにし、従業員全体のモチベーションを高めるためにチーム内の気分を上長が把握し、気分にあわせた対応をとることができます。さらに、ストレスチェック義務化にも対応している気分予報アプリです。また、会議室用に会話が盛り上がった際には暖色に、気分が沈むと寒色に変化する照明コントロールアプリ「utakata mood light」を渋谷ヒカリエ内で展示運用されました。また、IoTとして、見守りロボット「BOCCO」と『Empath』を組み合わせた子どもの気分状態を可視化できるシステムやコミュニケーションロボット「Tapia」に搭載されております。多くの企業が『Empath』を利用しやすくするため、Web Empath APIを用意しております(https://webempath.net/lp-jpn)し、様々なシステムやプロジェクトが生まれています。
日本だけでなく海外でも活用できそうですが海外からの反応はいかがでしょうか。
吉田氏:そうですね、おかげさまで問い合わせを多くいただいております。
Apple Watch専用のメンタルヘルスアプリ『EmoWatch』を発売した際には、アメリカのディスカバリーチャンネル内のTV番組『News Watch TV』で特集を組んでいただきました。
Apple Watchに音声を吹き込むだけで、いつでもどこでも自身の心の状態を確認でき、そのログはiPhone上でグラフ化され、感情の推移がひと目で確認できます。『EmoWatch』は、海外のニュースサイト『TechCrunch』にも掲載されました。
人と人のつながりが希薄になっている現在だからこそ 医療とICTの連携が幸せを生む。
御社の目指すビジョンについてお話しいただけますか。
吉田氏:はい。私たちは、健康・医療のプラットフォームとICTのプラットフォームの構築を目指しています。医療のプラットフォームとしては、人々の集まる駅から健康意識を高めていただける場を作ること、それが生活者、医療従事者いずれにもメリットを生む場所であることが重要だと考えています。また、人々のこころとからだに寄り添い、パーソナルなデータに基づいた健康サービス・コンテンツを継続的に提供できる仕組みとなるICTのプラットフォームを構築していきたいと考えています。
最後に医療とICTが連携することで生まれるメリットを教えてください。
吉田氏:クリニックの円滑な運営のためICTを活用することで生まれるメリットは多くありますが、特に重要視しているのは、人々が気軽に自分の健康状態を記録するセルフケアシステムによって、体だけでなく心の健康に対する意識が向上することです。 人と人との直接的なつながりが希薄になっている現在だからこそ、時代に合った身近なツールとしてアプリを活用していただけるのではないでしょうか。今後も科学的な根拠に基づいた最新の技術や知見を世界の方々が健康に過ごすために伝え続けたいと思っています。
取材日: 2016年9月16日 ライター: 影山祥子
スマートメディカル株式会社
- 代表者名(よみがな) : 柴﨑 望(しばざき のぞむ)
- 設立年月 : 2010年11月
- 資 本 金 : 209,850,000円 (2016年9月現在)
- 事業内容 : PCC事業、ICTセルフケア事業、ヘルスケア物販事業、インフラストラクチャー事業
- 所 在 地 : 本社 〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3番8号 第2紀尾井町ビル 4F TEL.03-3230-4010/FAX.03-3230-4020 仙台支店 〒980-0014 宮城県仙台市青葉区本町1丁目5-28 カーニープレイス仙台駅前通702 TEL.022-397-6240/FAX.022-397-6350
- URL : http://smartmedical.jp