企画を「提案」するのではなく クライアントと「一緒に考える」 本質的なコミュニケーション

東京
株式会社ワンパク 代表取締役 阿部淳也氏
 
今回ご紹介するのは株式会社ワンパク。「コミュニケーションデザイン」をキーワードに、企業のコミュニケーションコンサルティングやWebサイトや映像の企画・制作およびイベントの企画・演出なども手掛けている会社です。そんなワンパクが抱くコミュニケーションやものづくりへの想いやノウハウについて、代表取締役の阿部淳也さんにお話をうかがいました。

ワンパク設立は「本質的なコミュニケーション」を突き詰めて考えた結果

株式会社ワンパクを設立された経緯をお教えください。

独立の理由は、やはり「自分たちの熱意や想いをもって、クライアント企業やスタッフ達と向き合い、覚悟をもって仕事をしていく環境をつくっていきたい」という考えを突き詰めた結果、独立するというかたちが自分達にとって必要だったからですね。私は独立前、別の広告代理店系の制作会社でプロデューサー及びディレクターを務めていて、寝る間も惜しんで仕事に没頭していましたが、それはそれでとても充実した時間で、沢山の楽しい仕事もさせて頂きました。しかしながら、やはり会社の向かう方向性と、自分たちの目指す方向性が異なっていたという部分が独立の決め手になったと思います。その時に一緒にコアメンバーで毎日突っ走っていた、近藤と原(二人は現在もワンパクの役員)に話しをしたところ、二人も同じ想いだったことから、三人でワンパクを立ち上げることにしました。

独立しようと考えられた大きな理由はなんでしょうか?

一番の理由は、これからデジタルを活用したマーケティングやコミュニケーション領域が伸びていく中で、もっときちんとクライアント企業と向き合いながら、単なるマス的な発想の一方的で思い込みなキャンペーンやプロモーションではなく、クライアント企業にとって本質的に必要な、生活者や顧客とのコミュニケーションをつくっていきたいと考えたからです。

そこに至った理由は前職時代は面白い系のキャンペーンサイトも数多く手がけていたのですが、毎日必死に頑張ってつくっても、大概のサイトはキャンペーン期間の3ヶ月が過ぎるとクローズされてしまうんですね。まあ、それはそれで必要なことなのかもしれませんが、そんな瞬間的に消費されて終わってしまうプロモーションサイトをつくっていくことにむなしさを感じていました。

それよりも中長期で生活者や顧客を向き合いながら、確実にコミュニケーションを育んでいくよう企業のオウンドメディア(企業サイト)やサービス開発を、デジタル領域を中心として戦略からものづくりまでワンパッケージでつくれる存在になりたいと思ってつくった会社がワンパクなんです。

戦略や企画は「提案」するものではなく、「一緒に考え・つくる」もの。それがワンパク流

先ほどおっしゃっていた、「本質的に必要なコミュニケーション」の具体例をお教えいただけますでしょうか?

なかなか一言で言うのは難しいのですが、一つあげるなら「企業が覚悟を持って直接、生活者や顧客とコミュニケーションしながら関係性を構築すること」でしょうか。いわゆる企業のオウンドメディアの構築などもそのひとつですね。 そういった仕事の場合、ワンパクでは基本的にクライアント企業と直接の取引きで、クライアント企業側のメンバーと直接コミュニケーションすることを前提とさせてもらっています。また、クライアント企業へ、こちら側の思い込みだけでつくった企画の提案もしていません。

企画を提案しない、というのはどういう意味なのでしょうか?

通常、広告の仕事というのはみなさんご存じのとおり、クライアント企業からオリエンを受けて、企画会社や広告代理店、制作会社がそれを元に1〜3週間程度で考えた企画案を持ち込んで「こんなことをしてみませんか」と提案しますよね。でも 私は、その方法では、本質的なコミュニケーションをとっていくための、特にオウンドメディアやサービス開発の場合、生きた戦略や企画は生まれにくいと考えているんです。

いわゆる企画・提案型の場合、クライアントは、「ああ、それはいいね」「それはつまらないな」と判定するだけの立場でしかなく、真の意味では、目の前の問題に対して向き合えていないというか、当事者になりきれていないんですよ。そんな丸投げの状況で本当に良いものが生まれるでしょうか?

そこで我々は、戦略や企画を単に「提案」するのではなく、クライアントの担当者とのワークショップでディスカッションを行い「一緒に考える」という形式を取るんです。

そうすることによって初めて、クライアントにとっても「自分が考え、育てた戦略や企画だ」という自覚や愛着が生まれますからね。さらに細かな要件、例えば画面構成やデザインなどを詰めていく課程(プロセス)を見える化して、共有しながら進めていきます。もちろんその分時間もかかりますが、最終的なアウトプットもクオリティがあがりますし、そこから更に育てていくという視点が生まれます。

このような戦略的な部分から、制作・開発、運用まで、それらを全て「ワンパッケージ(1PAC.)」で行うのがワンパクの特徴であり強みですから。

なるほど。「ワンパク」という社名はそこから来ているのですね。

はい。もちろん、よく食べて、飲んで、遊んで、仕事もバリバリこなすという「腕白」という意味も込めてはいますが(笑)。また、ワンパクという社名は前職からの僕のイメージのせいか、設立当初は周囲から「目立つ企画をどんどん仕掛ける派手な会社」というイメージを持たれていたようなんです。でも実際は前述の通り、クライアント企業と一緒に中~長期的な視点で戦略やものづくりをおこなっている会社なんです。

クライアントと共にワークショップなどで戦略や企画を作っていくとのことですが、そこにもワンパクならではの仕掛けがあるのでしょうか?

そうですね。ひとつの例で言えば、ワンパクのワークショップやディスカッションでは、各参加者に個別のドキュメント(文書)を最初の段階では配布しません。その場の全員で議論をするためのツール(大判の紙にポストイットを貼ったものなど)を見ながらディスカッションを進めます。その理由としては、各自の手元に文書があると、どうしてもそちらを見て、うつむいてしまって、一人の世界に入り込んでしまいがちになるからなんです。

なるほど。確かに手元に書類があると、議論している内容とは違うページをペラッとめくってしまっていることもありますね。

はい。そして、参加者がそうやって集中力を欠いてしまうのは、どこか他人事という感覚があるからなんです。 ですから当社ではワークショップ参加者全員に、ディスカッションに参加している意識を持ってもらうための方法として、「みんなでひとつのものを見て、ひとつのことを考える」という方法を取っているわけです。 幸い、このやり方はクライアント企業内でも評価をいただいているようで、時には「ワンパクのディスカッションの進め方を社内勉強会で教えてほしい」というご依頼をいただくこともありますよ。

クライアントとユーザーのために考え尽くし、常に楽しい企画を創出

では、そんなワンパクが生み出した企画の中から、何か例をおうかがいできますか?

最近の面白い例としては、リアルなイベントとデジタル領域の融合を図った「OXY × DJ LOVE+カーニバル」があります。 これは、ロート製薬さんの製品「OXY」のプロモーションとして今年の10月に富士急ハイランドで開催された「SEKAI NO OWARI」というアーティストが開催した「炎と森のカーニバル」という野外フェスティバルで実施した企画です。

この企画では会場内の至ることに登場した、DJ LOVE+というパフォーマーの演出や、イベント設営・運営、Webサイト・映像の制作などは全てワンパクが担当したんですよ。

Web制作だけではなく、実際の会場も演出されたんですか?

はい。ワンパクはWebだけに活動の場を定めているわけではありませんから。弊社の理想とするデジタルを中心としたコミュニケーションで課題解決につながるものであれば、ジャンルにはこだわりません。

今回の企画で我々が意識した点は、プロモーション色を前面に押し出すのではなく、まずはお客様に楽しんでいただくことでした。通常、イベントでのプロモーションと言うと会場内でブースを出して、自分たちの商品をサンプリングしたり、コラボ商品を売ったりするのが定番なのですが、それだけではエンドユーザーには楽しい体験や価値を提供できませんよね。

ですから「炎と森のカーニバル」での企画は、まず来場者に「楽しかった」という体験と共感を創り上げて、その後で「この楽しいイベントを開催したのはOXYだよ」という認識が広まればいいなと考えて企画したんです。 おかげさまでイベントは来場者にも好評でしたし、SNSでもかなり拡散されました。クライアントであるロート製薬さんのプロジェクトメンバーにとっても我々にとっても思い出深いイベントとなりました。

取材させていただいた部屋には、社員の名刺がずらり。 ロゴマークも一人一人違います。

取材させていただいた部屋には、社員の名刺がずらり。
ロゴマークも一人一人違います。

定番のイベントを踏襲するのではなく、常に新しい仕掛けを模索されているんですね。では最後に、そんなワンパクが求める人材像についてお教えいただけますか?

しいて言うなら「考え尽くせる人、領域を超えて協力しあえる人」でしょうか。その前提としては、他人に無関心な人では務まらない仕事だと思います。クライアントのため、エンドユーザーのため、同僚のためなど、どんな場面でも知恵を絞れる人や苦難を乗り越えるために協力しあえる人でないと厳しいですね。

もうひとつ条件を挙げるとすれば、職能や役職に関係なく、社内のあらゆる業務に関心を持ってくれる人がいいですね。最近はどの職場も分業化が進んでいるようですが、ワンパクでは、自分の領域だけに執着することは認めていないんです。「自分の仕事はこれだけ」と割り切るのではなく、もし良いアイデアが浮かんだら、他のメンバーともどんどんディスカッションし協力する。 つまり、人に対しても仕事に対しても「無関心は禁止」ということですね。周囲のあらゆることに関心を持ち、浮かんだアイデアや意見はどんどん発信する。これからも、そういう創造性を持った人と働きたいと考えています。

取材日:2013年11月11日

株式会社ワンパク

  • 代表取締役 :阿部淳也
  • 事業内容:企業のコミュニケーション戦略のコンサルティング及びプロデュース/企業のクリエイティブコンサルティング及びプロデュース/Webサイトの企画・制作・運営/音楽、映像、グラフィック、プロダクト、書籍等の企画・制作/イベントの企画・運営/システム開発及びネットワーク構築/キャラクター商品の企画・制作・販売・賃貸借/これらに付帯する一切の業務/デジタルメディアの企画・運営
  • 所在地:〒153-0061 東京都目黒区中目黒3-8-5 ジュビリーガーデン3F
  • URL:http://1pac.jp
  • 問い合わせ:上記HP「CONTACT」ボタンより
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