映像の世界は広がる! プロジェクションマッピングで空間をつくる

東京
株式会社SUPEREYE 代表取締役社長/クリエイティブディレクター 土井昌徳氏
CG、映像、グラフィックデザインを柱として手がけてきたSUPEREYE。最近では空間の形状に合わせて映像を投影して立体映像空間をつくるプロジェクションマッピングの仕事で注目を浴びています。最先端の技術を使って話題のクリエーションを生み出し続ける代表の土井昌徳さんに、ご自身の映像の表現について、また事業としての展開について、お話を伺いました。

出発はクラブのVJ(ヴィデオジョッキー)から

SUPEREYEは2012年4月創業と若い会社ですが、土井さんご自身は起業前の学生時代からVJやCGデザイナーとして活動されていますね。そもそも映像に興味を持たれたきっかけは?

最初に興味を持ったのは中学生くらいの時です。映画が好きで自分でも作ってみたいなと思っていたら、たまたま家に父の8mmカメラがあったり、学校に生徒が使えるビデオカメラがあったりして、それを借りて自分で簡単な映像を作ってみたところから始まりました。大学に入ったのがクラブカルチャーが注目されていた時期で、元々クラブミュージックが好きだったこともあり、雑誌やネットでいろいろな情報に接してVJという表現に興味を持ちはじめました。友達にもDJがいたので、自然な流れでVJをやるようになったんです。そこから本格的に映像の業界に興味がわき、これを仕事にしたいなと思うようになりました。

VJの仕事のどういうところが魅力的でしたか?

VJをやっていた時に印象に残っているのは、自分の映像だけでなくライティングも含めた空間演出がビシッと決まった時に、フロアで盛り上がったお客さんがワーッと手を上げる、その瞬間の快感です。VJって一見無意味な映像を流していると思われがちですが、ちゃんとやっている人はライティングとのバランスや、その場の動きのテンションに合わせることを考えているんですよ。それらをお客さんに感じ取ってもらえた瞬間、成功したなと感じます。クラブではライティングの一部として映像があるわけで、映像を映像として見てもらうんじゃなくて空間の一部にあるものとして見られたい、空間全体を演出していきたいという考えが出てきました。

仲間を得て起業へ

起業に至るまでの経緯を教えてください。

VJをやっていた頃に独学だけだと表現が頭打ちだと思うことがあって、大学を辞め、映像の専門学校に入り直しました。専門を出てから何社かプロダクションを経て、フリーでやっていた頃に、何人かのクリエイターがオフィスシェアをしているところに僕も机を置かせてもらうことになったんです。そこでみんながビジネスの話をしているのを聞いて、仕事をもらって請け負うだけじゃなく自分で仕事を作っていくことを考えていかなくちゃいけない、そのためには起業するのがいいんじゃないかと思うようになりました。 その時に真っ先に顔が思い浮かんだのが、大学時代の同級生だった浦野大輔でした。そこから2年近くかけて浦野と会社を作るための準備をしている間にもう一人の創業者・恩蔵歩実とも出会い、みんなそれぞれの仕事をしながらミーティングをしていきました。会社の名前はどうするか、とか話し合っていましたね。

SUPEREYEの名前の由来は?

SUPEREYEは直訳すると「超越した目」ですけど、一つの見方にとらわれないという意味もありますし、時代の何歩も先を捉えた考えを今の時代に落とし込んでいこうという意味も込められています。それから、僕が名前を付ける時に大事にしたのはキャッチーであること。○○フィルムとか××デザインとか、よくある感じにはしたくなかった。僕たちが目指すのは視覚に訴える表現であることは間違いないから、EYE=目という感覚器官を社名に入れるのは自分自身納得のいくものでした。

土井さんはVJやCG、浦野さんは映画、恩蔵さんはグラフィックデザインとそれぞれの得意分野があるメンバーで創業したわけですね。

今現在、当社の事業もテレビのメインタイトル制作やVPなどのCG制作、映画の予告、雑誌の広告やWEBなどのグラフィックデザインが3本柱になっています。特に最近はCGを使ったプロジェクションマッピングの仕事が増えて、僕だけでは対応できないのでスタッフを増やしました。現在社員は6人ですが、それに外注を加えて10人くらいの体制で常に仕事を回しています。外注と言っても、専門学校時代の同級生とか、人づての紹介が多いんですが、そういうふうに自分と価値観を共有して、一緒にやっていける仲間がいるということは自分にとって大きな財産です。

一緒にやっていきたいクリエイターというのはどういう人ですか?

一緒にやっていて相性がいいなと思うのは、どんな状況でも楽しみを見出だせる人ですね。それから自分なりのオリジナルテイストを必ず入れ込める人。「あ、ここはこの人の技が効いているな」というのがさりげなく入っていると信頼できます。僕たちの仕事はクライアントワークなので、クライアントが満足するものを作るのはもちろんなんですが、言われたことだけやるんじゃなくて、それを倍返しにして成立する人。難しい条件かもしれませんが、でも幸いなことに今一緒にやっている人はそういう人が多いですね。

プロジェクションマッピングという表現の可能性

プロジェクションマッピングの仕事について詳しく教えていただけますか?

きっかけはVJの世界なんです。VJって真っ先に新しいものに飛びつく人が多いんですが、僕自身も最新の技術としてやってみたいと思ってスタートしました。ちょうど東京駅のイベントがニュースになった(注:東京駅のリニューアル完成記念に駅舎を使った大規模プロジェクションマッピングが行われた。観客が押し掛けて観覧制限がかかったことも話題になった)直後に、当社のスタッフが『笑っていいとも』の番組内でプロジェクションマッピングをさせていただく機会があって、多くの方の目に触れ、新規のお問い合わせもたくさんいただき、プロジェクションマッピングが得意な会社という評価もいただけるようになりました。

プロジェクションマッピングがトレンドになったのは時代のニーズに合ったのでしょうか?

技術的にはプロジェクターが進化して規模感のある演出ができるようになったというのが大きいですが、受け手の感覚としては、イルミネーションみたいな感じで、新しい季節の風物詩ができたと見られている側面はあると思います。それに、今は身の回りにスマートフォンなどの最先端の機械があふれていて、新しい技術革新が起きている。その現象の延長にある演出として、プロジェクションマッピングが捉えられている感覚もあると思います。

プロジェクションマッピングの仕事ではどういう提案をしているのでしょうか?

オーダーで多いのは、とにかく自分たちの空間で“プロジェクションマッピングというもの”をやりたいと(笑)。そういう意味では自由度の高い、アイディアが試される表現と言えるでしょう。例えば「花火を出したい」と言われて、花火の映像を投影するだけではプロジェクションマッピングにはならないので、その映像にはどういう要素があって、どう形にし、どう使っていけばプロジェクションマッピングとして成立するのかを詰めて演出を考えていきます。

Projection Mapping Journey

2013年にはSUPEREYE主催で『Projection Mapping Journey』というイベントも開催されましたね。

今はだいぶ広まってきましたが、当時(2013年初頭)は、プロジェクションマッピング自体がまだ謎めいた技術のように見られていたので、実際にその技術を使っている僕らが、こんなことができると披露する場にしたかったんです。それ以前に最新技術を使っていろいろな表現をしてみたいというクリエイターの欲があって、結構やりたいこと爆発のイベントでした(笑)。メディアにもたくさん取り上げていただきました。

プロジェクションマッピングの表現としての可能性は?

プロジェクションマッピングはトリックアートみたいな側面があるんです。動くはずのないものが動くというところにクリエーションが発揮されるわけです。でも例えば壁のブロックが波打つだけだとトリックアートとしては成立するけれど、エンタテインメントとしてはどうか、とか思うんですね。そこに自分たちのフィルターを通していかに面白く見せるか、表現としての面白さを常に追求することが大切です。 プロジェクションマッピングを一つのツールとして考えると、どれだけ自分たちが遊び倒せるかがポイントになってくると思います。使っているとアイディアが浮かんでくるし、表現の幅が広がって、自分たちにしかできないノウハウみたいなものが溜まっていきます。それが結果的にオリジナルの表現につながっていくと思います。

空間をデザインしていく

今後の事業展開の展望は?

空間演出が多くなっていくでしょうね。プロジェクションマッピングもそうですが、映像が枠にとらわれない時代になっていると思います。一つの画面だけに収まらない表現や、将来的にGoogleグラスみたいな現実の上に重ねていく映像など、いろいろな形のデザインをしていく時代になっていくと思うので、今まで以上に僕らがやっている空間演出能力が試されていく時代になっていくのではないでしょうか。そこに強い会社になっていければといいなと思っています。

空間演出能力を磨くためにどういう努力をすればいいと思いますか?

いろいろなものを見て、遊ぶことが一番じゃないですか(笑)。僕は自転車に乗るのが結構好きで、それも僕の中で遊びだったりするんです。体が移動することで生まれる発想もあります。どこか一カ所に留まっていると発想が一定になってくるので、無理矢理そういう状況を試しているんです。自分の中での変化をいつも楽しめればいいなと思います。

取材日:2014年2月6日

株式会社SUPEREYE(スーパーアイ)

  • 代表取締役社長/クリエイティブディレクター:土井昌徳(どいまさのり)
  • 設立年月:2012年4月
  • 事業内容:CG制作、映画予告篇制作、雑誌広告制作、プロジェクションマッピング他ヴィジュアル、空間デザイン
  • 所在地:〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷2-3-4 ル・ソレイユ502
  • URL:http://supereye.jp/
  • 電話番号:03-6438-9722
  • 
E-mail:info@supereye.jp
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