「人生はシアター」をテーマに 伝えたいことはそのまま伝え 知る喜びを届ける番組づくり

東京
株式会社シアター・テレビジョン 代表取締役社長 浜田マキ子氏
今回訪問した株式会社シアター・テレビジョンは、番組を自社制作し、スカパーやニコニコ動画で配信しています。ジャンルは、政治・社会などの言論系から、アート・伝統文化・教育までバラエティに富み、チャレンジ精神とアイデアにあふれた番組を次々と送り出しています。中でも2011年にスタートした「シアターネットTV」は発言のカットをしないため、伝えたいことを思う存分に伝える事が出来るとあって、視聴者にも出演者の方々にも好評です。その独自の姿勢、そして今後のビジョンについて、代表取締役社長の浜田マキ子氏にお話をお伺いしました。

言いたいことをそのまま伝える 雑誌で培ったその基本姿勢が軸になったテレビ局

雑誌「ぺるそーな」

雑誌「ぺるそーな」

シアター・テレビジョンの代表取締役社長になられた経緯をお教えください。

以前は10年ほど「ぺるそーな」という、「新潮45」の編集長を務めた亀井龍夫さんに編集人をお願いして雑誌を発行しておりました。著名な方達にライターとして参加していただき、それぞれの分野の第一人者の方達が書いたことを編集せずそのまま掲載するというスタイルの雑誌で、目次ページの写真を私が撮って毎回亀井さんに言葉を付けていただいてました。当時、写真を見た亀井さんに「『ちょっとピンぽけ』だね。」と言われ、私は当時、ロバート・キャパの有名な本の題名とは知らず「どうせ、ピンぽけですよ」と言ってしまったなんていうエピソードもあります(笑)。 元々、いずれ2時間くらいの枠を買ってこの雑誌をオンラインで届けたいという考えがありました。そして亀井さんが体力的に厳しくなり、私も辞めようかと思っていた2008年頃に、「ぺるそーな」のような番組を作りたいという誘いがあり、社長就任の依頼がありました。基本コンセプトは「マスメディアが放送しないことを伝えていく」です。

浜田様のお考えが、いいタイミングで結びついたのですね。運命的でもありますね。

そうですね。以前は演劇専門チャンネルで主にコンテンツの買い付けをしていましたが、自社でコンテンツを制作し、映像の権利を持って二次使用ができるように取り組んでいこうとシフトチェンジしまして、「ぺるそーな」の映像版という形で始まりました。

雑誌から放送へガラリと変わったのでなく、雑誌でのご経験が今へと繋がっているのですね。

私以外にも、たとえば当社のプロデューサーは以前にウェブ関係の仕事をしていたり、演劇や音楽に関わっていたこともありました。皆、今までの経験や好きなことが活かされていますね。

現在のシアター・テレビジョンの原点・雑誌「ぺるそーな」/浜田氏が写真を撮影していた目次ページ

現在のシアター・テレビジョンの原点・雑誌「ぺるそーな」/浜田氏が写真を撮影していた目次ページ

御社の社風はいかがですか?

やはり映像が好きな人達が集まっています。時には社員が作品に出演することもあります。駐日する各国大使を訪ねる「大使の招待状」という番組や「そのまま言うよ!やらまいか」という討論番組、「日本史偉人伝」「世界史偉人伝」といった歴史番組では聞き役を担当したり、ナレーションもします。限られた予算の中でアイデアのある番組を作るということを日々考えてチャレンジしているのです。

では、御社で働く人を求める時、どういった点を重視していますか?

健康に育って自分の好きな所にはまるのが一番ですが、まずは「言われたことをそのままできる人」 ですね。それは学ぶことに繋がると思います。また、しっかり学べば自然と独立心が出てきます。「そのまま」がモットーです。 それから「返事はハイ」「時間を守る」、この3つだけです。これは、感謝に繋がります。簡単なようですが、案外出来ない人が多いですね。これができれば、挨拶や笑顔などは自ずからできるようになります。

インターネット配信番組を発展させた チャレンジ精神豊かな「シアターネットTV」

歯に衣着せぬ討論番組をはじめバラエティ豊かな番組を配信する「シアターネットTV」

歯に衣着せぬ討論番組をはじめバラエティ豊かな番組を配信する「シアターネットTV」

シアターネットTV」をスタートしたきっかけをお教えください。

元は「ピラニアTVちゃんねる」という当社のサイトで無料配信していたチャンネルでしたが、視聴者数が増えてコストに限界が出てきました。ビジネスとして確立するために、もっとチャンネルを広げようと考えていた時、ニコニコ動画やYouTubeが流行しはじめたのです。そこで、ローコストで始められるニコニコ動画の有料チャンネルにも番組を持ち、2010年にスタートしました。 ジャンルは、政治・社会等の討論番組や、歴史・音楽・アートなど幅広く手掛けています。また、「昔ながらの日本の良さを継承していきたい」という思いもありまして、伝統工芸の番組も手掛けています。外国の方も興味を持っていますので、そういった人達にも情報を届けられると思うと嬉しいですね。 幅広いジャンルの方達にご出演いただきまして、発言をカットせずお届けしています。こちらが演出をするより、「素晴らしい人をそのまま撮ればいい番組になる」という考えなのです。

既存のメディアでは、時間やスペースの制約で、カットせずに全てを伝える事は難しいですね。

一生懸命話しても知識や経験のない人に短く編集されてしまう、といったフラストレーションを持った方達が思う存分話してくださいます。その点に意義を感じた方に、その後も出演していただいていますね。私もテレビ出演の経験がありますが、意図していることと違う部分しか使われなかった不満がありましたので、その気持ちが分かります。「人生はシアター」ですから、どの人もその人にしか演じ切れない自分がいる、それをそのまま伝えたいという思いが強くあります。

雑誌とテレビとの違いで、大変だと思われたことはありますか?

こういうテレビ番組を作りたいと思っていましたので、大変だったとか苦労したと感じたことはありません。楽しくて仕方がないのです(笑)。映像は伝わる力が強く、表情や声のトーンの説得力がありますね。テレビに関わって映像がいかに大事かということが分かりました。 ネット時代になりメディアのインフラが急激に変わってきているので、皆が知りたいと思っていた本当のことを知ることができるようになったわけですね。伝えたいことをそのままを伝えることが私たちの役割です。

日本の将来のために最も大切な「教育」 ネット上に全国版の学校を作る取り組み

親子で学び・楽しむ教育コンテンツをお届けする「ベストキッズ」

親子で学び・楽しむ教育コンテンツをお届けする「ベストキッズ」

現在、さまざまなジャンルの番組を制作されていますが、さらに力を入れていきたいジャンルはありますか?

ネットのヘビーユーザーだけでなく一般の方達にも親しんでいただきたいと考えていますので、「教育」に力を入れ、お母さんと子供達がスマートフォンやタブレットで気軽に見られる動画の配信に取り組んでいます。現在、「ベストキッズ」という名前で、本格スタート(2014年夏の予定)に向けて準備中で、スカパーで午前中の放送や、YouTubeチャンネルに番組を増やしています。今後オープンするオリジナルサイトでは、他の子供達にとって有害な動画に移動することなく、安心して見せられるようにと考えています。

「教育」に対する思いをお聞かせください。

私達も出演者の皆さんも「もっと日本を良くしたい」という思いがあります。そこで将来の日本のために「教育」に力を入れなくては、と思いました。実際の学校はお金が掛かる、通学が遠いといった難点がありますが、ネットなら全国の人が好きな時に、好きな場所でアクセスできます。今の子供達は生まれた時からデジタルが身近にあるので、これはチャンスだと考えています。

ネットでしたら、世界中のお母さんと子供達に届けることができますね。

デジタル時代の今も、子供達は読み聞かせが好きです。たとえば、紙芝居の番組を見たお母さん達が「私ならもっとこんなお話を読み聞かせしたいわ」と考える「きっかけ」を届けることが狙いなのです。アニメだけでない、子供達のための「本当に伝えるべき教育の原点」を伝える番組を作りたいと取り組んでいます。ネット上に全国版の学校を作ろうと思っているのです。

ご自身が受けた教育では、どのようなことが印象に残っていますか?

子供の頃、父がギリシャ神話の読み聞かせをしてくれたのですが、挿絵のページでパッと素早くページをめくっていた箇所がありました。高い所にしまわれた本をこっそり手に取りそのページを見ると、裸の絵でした(笑)。ですが、物語は一切省略せずに読んでいました。不思議なもので、子供は自然と自分が分かるところだけをつかんでいます。たとえば、ゼウスの浮気の場面では雲がピンク色になる描写があります。子供の頃とても印象に残りましたが、その意味を深く考えず、素直にそのまま受け止めていました。しかし何度も読んでいくうち、大人になって自然と分かるようになるのですよね。

「シアターネットTV」で発言をカットしないという姿勢は、その体験が根底にあるのですね。

父が読んでくれたギリシャ神話が私の原点です。物語は年齢を経て読み返すと、もっと深い意味が分かります。 自分の人生が深まると同時に読解力も変わっていきますから、大人が子供向けにアレンジしたり、内容をカットする必要はないと思います。

「おしゃれ」と「食」を発信して 女性がいきいきと輝くネットワークを広げたい

教育以外では、今後どういったことに取り組みたいとお考えですか?

女性のネットワークを作ろうと思っています。女性にとって大切な「食」「おしゃれ」を発信していきたいですね。子育ては総合職で、お母さんはその家の大蔵大臣や文部大臣でもあり、全てです。子育てをして自分が教育されると思います。まず「食」は、自分がおいしい物を食べなくては興味が湧きませんし、おいしい料理は作れません。 シアター・テレビジョンでは2014年より『TOKUKOのフランチ巡り』『エガワクニコの美味しい料理教室』といった女性や食にフォーカスをあてた番組も制作しています。

「おしゃれ」についてはいかがでしょうか?

おしゃれは女性を磨くことですから、まさに自分の勉強です。頭の体操。ですがお金をかけるのではなく、自分をどうやってきちんと伝えることができるかが大切で、「頭を使う」のです。 まずはお手本を探して真似をするのでいいと思います。体型や雰囲気は一人一人違いますから、自分に合うように考えれば、自然とその人のおしゃれになります。買って、着慣れて、初めて自分のものになる、まさに「学習」です。失敗した経験も「学習」になります。「学ぶ」は「真似ぶ」ことから始まりますから、それが自分のものになれば「自立」です。

 

編集部注※ おしゃれに関しては、著書『おしゃれの大事―女の作法』(著:浜田マキ子)にも詳しいのでぜひご読みください。(電子書籍も販売中)

 

最後に、今後についてお聞かせください。

5月から親会社を離れ一本立ちしますので、ようやく幼稚園に入園したような感じです。上場して初めて社会に認められると思っていますので、やっとその入口に立つことができたといったところでしょうか。まだまだこれから成長していきます。

取材日:2014年4月30日

株式会社シアター・テレビジョン Theater Television Co.,Ltd.

  • 代表取締役社長:濱田麻記子(はまだまきこ)
  • 設立年月:1995年11月22日
  • 資本金:110,560,000円
  • 事業内容:CS放送の番組供給事業/報道、教育、映画、舞台芸術、アート、音楽、趣味、娯楽、演芸、催し物などの視聴覚物の制作・販売・配給・興行事業/インターネット動画配信事業/出版/イベント運営 ほか
  • 所在地:東京都港区虎ノ門2-2-5 共同通信会館ビル2F
  • URL:http://www.theatertv.co.jp
  • お問い合わせ先:上記HPの「お問い合わせ」より
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