新潟も「世界の一部」。 ここから生まれるオリジナル作品で目指すは世界!

東京
株式会社新潟アニメーション 代表取締役社長 後関 健一 氏
新潟アニメーションはその名の通り、新潟市を拠点にアニメ制作を手がける会社です。代表取締役社長の後関健一(ごせきけんいち)さんは、アニメ会社の新しいエコシステムの確立と、オリジナル作品の実現を目標に、新潟・東京間を行き来する日々を送っています。会社の設立の経緯、拠点として新潟を選んだ動機、人材開発、新しい働き方の提案など、新潟から世界を目指すという期待に満ちたお話を伺いました。

物を作ることは、人を作ること。 新潟の専門学校と組んでアニメ会社を設立

株式会社新潟アニメーション

新潟アニメーションを設立したきっかけを教えてください。

前職のモバイルコンテンツ会社を退職して、アニメ、マンガ、ゲームの会社を設立しようと起業ネタを探しにアジアを巡りました。シンガポールで出会った日系の経営者の方達に、現地で今盛り上がっていること、話題になっていることを聞いたところ、サッカーのアルビレックス新潟のサテライトチームがシンガポールにあることを知りました。新潟のサッカーチームが、なぜ、シンガポールで?と思いますよね。新潟の専門学校グループ(NSGグループ)の代表者がアルビレックス新潟の会長でもあり、海外で起業する人や進出しようとする人を支援していたのです。「新潟に面白いグループがあるんだな」と思いました。 日本に戻ってNSGグループのアニメ専門学校を見たら、新潟で10何年と続いていて、卒業生も多く活躍していました。一方、新潟にコンテンツ会社はまだ数社しかありませんでした。そこで専門学校と組んでアニメ会社を作ろうと立ち上げたのがきっかけです。

後関さんは、これまでどのようなキャリアを歩んでこられたのですか?

私は就職活動をしていないんです。大学時代にテレビの放送作家の事務所に転がり込んで、20代の頃は放送作家をしていました。地上波には新人がすぐに担当できる場所はなかったのですが、衛星放送が立ち上がった時期で、幸運にも、歴史物の番組で構成を担当させていただきました。

衛星放送の次の大きな流れとして、テレビ局がi-モードのサイトを番組連動で作り始めました。携帯コンテンツ用にテレビ番組のゲームシナリオを書いてみたところ、「これは面白い。」と、ゲームやマンガの新しい可能性を感じて、30代でモバイルコンテンツ会社へ転職しました。そこではディレクションから人材開発まで手がけるようになり、研修の講師などもしていましたので、「物を作ること」は、「人を作ること」、このふたつは密接に繋がっていると実感しました。

会社名のモデルは、サッカーのクラブチーム。 地域に根差した取り組みで、ブランド力を上げたい

社名やロゴデザインの由来を教えてください。

日本海をイメージした青で、新潟の頭文字「N」をデザイン。夕日をイメージしたオレンジのラインは新潟県のような部分が、佐渡島を表しています。

日本海をイメージした青で、新潟の頭文字「N」をデザイン。夕日をイメージしたオレンジのラインは新潟県のような部分が、佐渡島を表しています。

 

ロゴは、新潟の頭文字「N」と、新潟県の形を表しています。色は日本海のブルーと、夕日のオレンジです。会社名のモデルは、地域に根差したサッカーのクラブチームです。「新潟」という地名と、アニメーションの会社だということがダイレクトに伝わることを考慮して決めた社名です。 会社のブランドイメージは、社名ではなく「作品」から生まれると思っています。地域密着で発信して、今後、世界的に作品が知られるようになって、「どこで作られたアニメだ?」と海外の人が関心を持った時に、「日本にある都市、新潟だよ」「新潟アニメーションという会社が作っているんだ!」と社名で伝えることができます。

事業を立ち上げたいという思いは、いつ頃からお持ちでしたか?

モバイルコンテンツ会社に在籍していた頃から、起業を目指す仲間と土日に集まって、実験的に企画を作ったり、海外のモバイルコンテンツの状況を調べたり、3年ほど、勉強会的な形で準備をしていました。きっかけになったのは3.11です。直接被害に遭ったわけではないのですが、東京で震災を体験し、いつ死んでもおかしくないと思いました。帰宅難民となりオフィスのあった渋谷から川崎の自宅まで歩いて帰ったり、ボランティアに参加したりする中で、40歳になって60歳までのあと20年で、ひとつに打ち込めるものは何か、と考えたら、今まで関わってきたテレビ、モバイルコンテンツ、人材開発等と、アニメ、マンガ、ゲーム関係の事を、自分の集大成としての仕事をしたいと思ったのです。

日本酒、銀食器など、物作りのポテンシャルが高い新潟。 アニメ制作にも通じる土壌

制作部のある本社の新潟スタジオ

制作部のある本社の新潟スタジオ

起業ネタを探してアジアを巡られていたのに、日本からスタートすることを決めたのはなぜですか?

1年間海外を周ってあらためて分かったのは、「自分の強みは日本人であること」でした。そして、地方の魅力と、日本にはいくらでも可能性があることに気づきました。ある意味、新潟も「世界の一部」だなと感じました。日本のどこでも「世界の一部」だと思いました。

新潟を選んだのは、どのような点が決め手でしたか?

そうですね。たとえば、これほど多種多様な日本酒が揃う地域は、新潟以外ないでしょう。中には、ミシュランの三ツ星の店で食前酒などに使われているものもあります。ノーベル賞パーティ用の銀食器が燕市で作られていたり、最初のiPodの裏面の磨きの技術も新潟でした。物作りの土壌として、新潟はポテンシャルがすごく高いと感じました。そうした物作りの現場に実際に行ってみて、お酒も食べ物も美味しいし、新潟が好きになりました。物を作るという点では、アニメ制作にも通じるものがあると思います。

新潟と東京、それぞれのオフィスの役割について教えてください。

本社の新潟スタジオは制作部として機能しています。新潟には、弊社の他にもアニメ会社ががあって、そこと連携しながら新潟でアニメーションを制作する土台作りに3年かけて取り組み、これからまた長期にかけて、さらに新潟の人材を増やして育成していくところです。 東京事業部は新潟本社と同時に立ち上げ、制作・企画営業として、特に営業の拠点としての役割を担っています。私は、新潟と東京を行き来して、月の半分くらいは新潟、もう半分を東京で過ごしています。将来的には東京にもスタジオ機能の一部を設けて、制作スタッフを置きたいと思っています。

モバイル業界を経験した視点から、アニメ業界に対して思うこと・提案などはありますか?

アニメ業界は、今、転換点にあるんじゃないかと思います。私がモバイル業界にいた頃は、着メロ・着うたの勢いがあった時代で、IT業界の動向がコロコロと変わり、技術開発の知識に追いつくだけでも大変でした。それに比べて、アニメ業界はデジタルに対しての導入度合いがまだまだだと感じましたが、それはチャンスでもあると思います。昔、アニメの制作進行の仕事は手描きで描かれた紙の原画を回収するため、クルマで各スタジオを周ることが中心でしたが、今はバイク便や専門業者がありますし、今後デジタル化が進めば、現場を管理する人間によるプロジェクトマネージメント的な、IT業界のような管理法へと変わっていくのではないかと思います。IT業界出身の自分としては、今までのアニメ業界とはちょっと違ったスケジュール管理・コスト管理・クオリティ管理など、どんどん導入していきたいですね。新しい会社だからこそ、新しい取り組みを最初からできると考えています。

新潟アニメーションでは、すでにそういった業務フローが取り入れられていますか?

私たちの会社自身のことももちろんなのですが、もっと業界として活性化する状況を整備した上で、新潟でアニメを作るエコシステム、新しいアニメーションの作り方「新潟モデル」を確立したいと考えています。東京の既存のシステムを変えるというよりは、新潟スタイルを作ろうと、土壌を耕して種をまいているところです。それが5年後・10年後には芽が出て花開くと思います。

地に足をつけながら、オリジナル作品を世界へ。 地方での新しい働き方・物の作り方を確立したい

今後、新潟アニメーションをどのような役割・存在にしたいとお考えですか?目指していること、将来の展望・夢などを教えてください。

目標のひとつは、テレビ・劇場用のオリジナル作品を作る体制を整えることです。アニメ会社は大手から分家して、下請けの仕事から10年・15年かけて仕事が増えて、体制が整ってからオリジナルを、というケースはあるのですが、当社は最初からオリジナルを企画しようと思っています。すぐ形にすることは難しいですけれど、制作能力を高めながら企画を準備しています。自分達が作りたいものに取り組める会社として、今までとは違うアニメ会社を目指しています。その時の目線は常に「世界」を忘れないようにしていきたいと思っています。地に足をつけながら、目線は世界を見ていたいですね。

海外進出についてはどのようにお考えですか?

世界には、日本のアニメやマンガの熱狂的なファンがいるにもかかわらず、影響力は大きいもののビジネスとしてはまだまだ余地がたくさんあるので、むしろそれがチャンスです。 今後、日本国内の市場だけではビジネス的に難しいことを考えると、世界に目を向けるべきで、映画といえばハリウッド、ITといえばシリコンバレーというように、なぜ日本の練馬区や杉並区がアニメの聖地として注目されないのか、そのギャップがあることがチャンスだと思います。 今まで、アニメ会社にいたわけではない人間が地方からアニメを作って発信することは、新しいチャレンジとしては面白く、ビジネスとしてのチャンスが転がっていると感じています。

一緒に働くスタッフに対して、会社としてどのようなことを求めますか?

個人の能力やクリエイティブセンスも必要ですが、集団で仕事をしていく中で、みんなで何か作っていくことへの気持ちと新潟という場所で作ることに対して何かしら思いがある方であれば、一番うれしいですね。 弊社は、「クリエイターの働き方を変えていきたい」と考えています。家庭やプライベートをちゃんと充実できるバランスのとれた働き方です。今、いろいろな会社が在宅でも仕事ができるよう取り組んでいますが、雪国の新潟では、吹雪いている日は家で仕事ができるなど、地方での新しい働き方・物の作り方を確立していきたいですね。

そうなれば、新潟で働きたいと思う人も増えそうですね。

Uターンはもちろん、Iターンで働きたい人も歓迎します。永住・移住するのではなく、一定期間、修業する感覚で、地元の人達と交流しながら仕事をすることもできると思います。

取材日: 2016年10月6日 ライター: 保坂久美

株式会社新潟アニメーション(Niigata Animation Co.,Ltd.)

  • 代表者名: 代表取締役社長 後関 健一(ごせき けんいち)
  • 設立年月: 2014年2月
  • 事業内容: 映像作品の企画・制作/映像作品の製作並びに権利保有 クリエイターの育成、マネージメント並びに権利保護
  • 所在地: <本社・新潟スタジオ>新潟県新潟市中央区東堀通1番町501-1 パークサイド白山211 <東京事業部>東京都新宿区新宿7丁目26-7 ビクセル新宿1F
  • URL: http://www.niigataanime.com
  • お問い合わせ先:上記HPの「CONTACT」より
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