アニメ・映画から受けた影響と感動。3DCG映像作品づくりに感謝を込めて
- 東京
- 株式会社Flying Ship Studio 代表取締役 沼口雅徳 氏
アニメを企画・演出から手掛けたい。その思いで会社設立の荒波に飛び込む
沼口さんは、学生時代に人形アニメを作っていたそうですが。
油絵を描いていたので画家になりたい・絵を描く仕事をしたいと思い、東京造形大学の絵画専攻に進みましたが、入学後、人形アニメを作り始めました。映画も好きだったので、最初は実写映画を撮りたいと思ったのですが、 ビデオカメラで友達を撮影して、内輪で楽しむような作品しか出来ないだろうなと思い、悩んでいました。
当時、新宿の映画館でチェコアニメ特集のオールナイトがあって、それを見たときに、今まで見てきたアニメとは違う、ストップモーションアニメ※の存在を初めて知って「これは面白い」と思いました。大学のアニメサークルの上映会は面白い作品ばかりで、「これだ!」と思い、アニメサークルに入リました。そこでビデオカメラの使い方を教えてもらって、人形アニメを作り始めたのです。学園祭で上映したところ、すごく評判が良く、お客さんが感想を書いてくれて、絵を描いていた時には得られなかった反応がとてもうれしかったです。掘っ建て小屋を改造したような場所での上映に、行列ができて、自分が作った作品でみんなが盛り上がっている……。その時の喜びが今につながっています。
※静止している物体を1コマ毎に少しずつ動かしカメラで撮影し、あたかもそれ自身が連続して動いているかのように見せる映画の撮影技術、技法。アニメーションの一種であり、SFXの一種。コマ撮りともいう。
大学卒業後は、どんな道へ進んだのですか?
卒業後、1年くらい大学の助手のようなことをしながらフラフラと過ごしていました。その頃、映像制作会社の株式会社白組が手がけた『鬼武者3』を見て「CGでこんなに面白い表現ができるんだ。自分も勉強したい」と思い、白組に入社しました。CGの知識は全くありませんでした。 白組ではチームリーダーの八木竜一さん(『friends もののけ島のナキ』『STAND BY MEドラえもん』監督)にずっと影響を受けてきました。「こういう人になりたい。この人を超えたい。」という思いがありましたが、自分が超える姿を想像できませんでした。白組初期の八木さんの若い頃の話を聞くと、純粋に制作の仕事だけでなくいろいろな仕事をして、徹夜もして、荒波を乗り越えてこられたそうです。
次第に、もっと演出や企画に携わりたいという思いが強くなり、これからのキャリアを考えるようになりました。そうして自ら荒波に飛び込んでみようと思っていた頃、昔からの知り合いの2人と再会し、「自分たちで会社をやってみよう」と、3人で合同会社NEFT FILMを5年前(2012年)に立ち上げました。それまでは、自分で会社を立ち上げようなんて、全然考えたこともありませんでした。そのうち、業務が拡大してきて、設立者3人がそれぞれ、独自の方向性で仕事をするようになり、2016年11月、5年目の節目で株式会社Flying Ship Studioとして、新たにスタートしました。
「映像作品を作りたい」という思いから会社を作られたのですね。
いろいろな映像作品に人生を変えられてきたので、自分も人の人生を変えるような作品を作りたいという目標があります。それを目指して今、会社経営に取り組んでいます。
次のステップへ。Flying Ship Studioとしての新たな飛躍
設立(=株式会社に組織変更)したことで、以前と変わったことはありますか?
オフィスや業務は以前のままなので、基本的には変わっていません。ただ、個人的には、社長業への覚悟・決意ができました。以前は他の2人に頼っていた面もありましたが、しっかりしていかなくては、という責任感が強くなりました。自分が引退するまで会社を残して次の人へ引き継いでいきたい、という思いもあります。
Flying Ship Studioの社名の由来と、ロゴデザインについて教えてください。
最初はロゴマークから作りました。ジャン=ピエール・ブランシャールという、ライト兄弟以前に飛行船でドーバー海峡を越える偉業を成し遂げた人物がいまして、彼が若い頃に描いた、空飛ぶ船の空想図が好きだったんです。空想図を描いた人が偉業を成し遂げた、その可能性を秘めた雰囲気に惹かれました。それを元にデザイナーと相談しながらロゴマークを考えました。社名は試行錯誤しましたが、ロゴ゙から発想してFlying Ship Studioと付けました。
3DCGを活用したアニメをメインに、クレイアニメも手掛けるユニークさ
Flying Ship Studioの事業内容について教えてください。
主に3DCGを活用したアニメ作品を手掛けています。企画、演出、絵コンテから、モデリング、アニメーション、コンポジット、作品の完成に至るまで、すべての工程に対応しています。その他に、クレイアニメや2Dアニメなども手掛けています。実写の仕事もあります。
デジタルの3DCGとアナログのクレイアニメが両立しているのはユニークですね。
3DCGだけを手掛ける会社はたくさんありますので、差別化につながっていると思います。変化球としてクレイアニメを求めるクライアントもいらっしゃいますし、当社の特徴になっています。
ホームページには子供向けのテレビ番組など、可愛らしい作品が多いですね。
可愛らしいジャンルは得意です。白組時代に『うっかりペネロペ』という番組に関わっていて、その縁で退社後も依頼がありました。そういったジャンルですと、演出や絵コンテや監督業に関われるので、当社のセールスポイントになっています。
オリジナル映画制作ができる体制を目指して、「やる気」、「素直さ」のある前向きな人と一緒に仕事をしたい
Flying Ship Studioを今後、どのような会社にしたいとお考えですか? 目指していること、今後の展望、将来のビジョンなどを教えてください。
オープニングにFlying Ship Studioのロゴが出る映画やアニメ作品を作っていくことが目標です。当社の会社案内には「人生に一番大きな影響を与えるような感動、価値ある作品を目指し、探求を続ける会社です」というメッセージを掲げています。それを実現するため、クライアントワークにしっかりと取り組んで信用を積み重ねながら、オリジナル作品の制作という目標に向かっていきたいと思っています。オリジナル作品を作ることは、今まで影響や感動を受けた作品への恩返しでもあります。
好きなアニメ作品はたくさんあると思いますが、中でも特に影響を受けた作品は何ですか?
パッと思い浮かぶのが、小学校低学年の頃、テレビで見た手塚治虫の映画『ユニコ』です。トラウマになるような強烈な印象がありました。宮﨑駿作品も好きで、幼稚園の時に見た『風の谷のナウシカ』も鮮明に覚えています。今までの人生の中で、数々のアニメや映画に救われてきました。「来週、このアニメを見るまでは、ちゃんと生きていこう」と、心の糧になっていました。そういった素晴らしい作品を作ってきた人達の思いを、自分なりに引き継いでいるつもりです。
映画づくりに向けて、今後の体制はどのように考えていますか?
5年後くらいには映画を作り始められる体制を目指しています。そうなると50人くらいのスタッフが必要です。現在の人数は18人ほどですが、まずはこの規模で新人教育の仕組みなどをしっかりと作って、その後でスタッフを増やしていこうと考えています。
一緒に働くスタッフに対して、会社としてどのようなことを求めますか?
基本としては「やる気」と「素直さ」のある人が伸びると思っています。また当社の業務は、仕様書がしっかりと固まった仕事だけではありません。クラアイントが「こういう感じのものを作りたい」と伝えたイメージを具体化し、さらにその人たちが思っていた以上のものを仕上げていくというケースが多くあります。ですので「対応力」「柔軟性」「アイデア力」が必要です。あとは、自分で勉強していく力を持った人ですね。当社はある程度、スタッフの自主性に任せているので、前向きに吸収していく意志を持った人には合うのではないかと思います。仕事をする中で自分の糧になることを積み上げていける人が伸びると思います。
取材日: 2017年2月24日取材 ライター: 保坂久美
株式会社Flying Ship Studio
- 代表者名(よみがな):代表取締役 沼口雅徳(ぬまぐち まさのり)
- 設立年月:2016年11月
- 事業内容:主に3DCGを活用した、映像コンテンツの企画、制作、配信及び販売
- 所在地:〒164-0012 東京都中野区本町6-35-14アダチビル6F・8F
- URL: http://www.flyingship.co.jp
- お問い合わせ先:上記HPの「CONTACT」より