WEB・モバイル2010.08.20

WEBデザイナーに必要なのは 自分の仕事がビジネスの ステージ上にあるとの自覚

東京
株式会社ソシオアンドアソシエイツ 代表取締役 矢倉遠十吉氏
 
独立系ウェブ制作会社としては、老舗中の老舗。業界黎明期から活動、というより、勃興期にいち早くこの分野に進出し、業界を牽引してきた存在である株式会社ソシオアンドアソシエイツ(以下、ソシオ)です。 1980年代に事業開発を多く手がけ、そのノウハウをベースに90年代にウェブ業界への進出で成功。独自の視点と将来展望を持つ代表取締役の矢倉遠十吉(やくらおとよし)さんが、興味深いお話しをたくさん披露してくださいました。

発注された制作案件、製作案件を下請けが受注する というビジネスモデルはもう通用しなくなりつつあります。

企業理念の再構築に、取り組まれているそうですね。

十分に成熟しきった感のあるウェブの世界は、業界全体が変革期を迎えていると言えますし、当然のこととしてウェブ制作会社にも変革が求められています。当社が今後10年、20年を乗り切っていくための新たな戦略を打ち立てるには、ビジョンの見直しから手をつけるべきと考えました。

再構築の作業は、順調に?

再構築作業は、もうすぐに完了します。目指すべき方向は、ほぼ見えてきたと言えます。

可能な限りでけっこうですので、その「見えてきた方向」について解説をお願いします。

大枠として言えるのは、受託、請負いを前提とした制作ビジネスからの脱却です。大手メーカーがあり、そこから発注された制作案件、製作案件を下請けが受注するというビジネスモデルはもう通用しなくなりつつあります。それはウェブ業界に限ったことではありませんが、そんな時代をつくった張本人(笑)であるウェブ業界には特にその側面が強いと言えるでしょう。 制作能力を持った企業が、いずこからの発注を期待し、待っていて、事業が成立する時代は終わったと言えます。

制作会社が自律的にビジネスを開拓し、成立させるということですか。

そう言っていいと思います。当社の新しい経営方針(戦略)には、「クライアントの数だけ異なる提案を行える柔軟性と想像力を持つ」と明記することになりました。もっと具体的に言えば、インターネットでマーケティングのできる会社をめざしますし、クライアントの利益を創出できる会社をめざします。純粋な制作料金に対してコンサルティング料金が増え、収益構造が変わっていくことになるはずです。

技術者には、技術よりセンスを問いました。 センスとはつまり、 ユーザー視点をもって、すべきことをイメージする力です。

御社はウェブ業界への参入が1996年と、きわめて早いですね。

私がインターネットに興味を持ったのが1993年前後です。その後約3年は個人的に研究し、模索し、徐々に事業化の構想を固めました。1996年というのは某大手電機メーカーがHP制作室を開設した年で、まさにHP元年と言える年です。

それ以前は?

当社は事業開発系の経営コンサルティング会社として創業しました。1980年代後半にはスキー場開発にも進出しましたが、バブル崩壊で事業環境が激変した。そんな時にインターネットに出会い、大きな可能性を感じ、事業化を標榜したのです。

ウェブ業界での、成功の要因は?

まず、勃興期に参入できたこと。そして、勃興期に何が必要かを感じ取ることができたことでしょう。この時期には、まったく前例のない中で、既存の業界の技術やスキルを上手に転用しトライアンドエラーを繰り返しながらノウハウを確立することが求められます。つまりはビジネスモデルそのものを自分でつくっていく必要があるのですが、幸いにして私はスキー場開発に進出した折にそれを経験していました。

スキー場開発進出の経験を生かして、どんな戦略を?

たとえば、技術者には、技術よりセンスを問いました。センスとはつまり、ユーザー視点を持ってすべきことをイメージする力です。 また、制作力に関しては内製の方向性を打ち出しました。外の技術や能力に頼る構造では、すぐに淘汰されるからです。その方針は、今も変わりません。

ウェブデザイナーに必要なのは、 自分の仕事がビジネスのステージ上にあるとの自覚

ソシオが企業理念を変えてまで対応しなければならないネットの世界の変化とは、どんなものなのでしょう。

たとえば、ネットによるコミュニケーションとは、これまでは発信のみを意味していました。それが大きく変わったのは、2000年のEC(Eコマース)の登場と言われています。ECを単なるネットショッピングととらえた流通業者は衰退に向かい、同程度の解釈しかできなかったネット事業者も壁に突き当たりました。ECは流通革命であり、コミュニケーションの革命でした。これにより消費動向が変わり、ネット上の情報発信者のメンタリティが変わりました。その影響は検索エンジンの存在意義にも影響し、事実検索エンジン利用頻度にも変化が現れているそうです。 そのような多様な変化を、しっかりと認識、学ばなければ、ネットの世界で事業展開するのはとても難しいことと思います。

矢倉さんが、ウェブデザインに求めるものは?

テクノロジーが進歩し、コミュニケーションのあり方が変わっても、一貫して変わらないのがデザインの存在意義だと思います。 私は、デザインには2つの方向性があると思います。1つはロジックで構築されたデザイン、もうひとつは感覚に優れたデザイン。必要に応じて、その2つを使い分けるのが、ウェブディレクターの重要な仕事であることは、これまでもこれからも変わらないと考えています。

ウェブデザイナーが生き残っていくために、必要なのは?

前述の2つの方向性のどちらかにちゃんとした力を持つと前提した上で、大切なのは自分の仕事がビジネスのステージ上にあるとの自覚でしょうね。いかに優れたデザインも、ひとりよがりではウェブの機能のひとつにはなり得ません。そのための、人とのコミュニケーション力をいかに磨くかをよく考え、努力してほしいと思います。

取材日:2010年8月

株式会社ソシオアンドアソシエイツ

  • 代表者:矢倉遠十吉(やくらおとよし)
  • 事業内容:
    • ウェブサイトの企画コンサルティング
    • ウェブサイトの企画開発/運営管理
    • ウェブ関連各種アプリケーション・システムの企画/開発
    • コンテンツ編集制作 (エディトリアル)
    • インターネット広告企画/取扱業務
    • ウェブ制作関連翻訳 (英文コピー業務含む)
    • インターネットにおけるソーシャルネットワーキングサービスの提供
      • ソシオが提供するSNS 『Sure!』
        • 上記項目と関連したグラフィックデザイン全般
        • その他上記項目に関連する業務全般
  • 設立:1990年8月10日
  • 資本金:21,850,000円
  • 所在地:〒102-0073 東京都千代田区九段北1-12-4 徳海屋ビル9F
  • TEL:03-5212-3420
  • FAX:03-5212-3421
  • URL:http://www.socio-j.com/
  • 問い合わせメール:上記HP「問い合わせ」ボタンより
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