WEB・モバイル2010.04.20

IT業界にとっての一大チャンス クラウドコンピューティング分野に打って出る

東京
エクスウェア株式会社 代表取締役社長 滝本賀年氏
 
クラウドコンピューティング(cloud computing)という言葉、最近よく耳にするようなりましたね。ユーザーは、クラウド(雲)の向こうにたくさんあるプロバイダのサービスを自由自在に選んで、組み合わせて利便を享受する。近い将来、一個人はシステムやアプリケーションを所有する必要はなくなり、クラウドから利用した分の利用料を払うようになるのだ。なんていう予測もあるようです。 いずれにしろ、なんとなくわかりそうだけど、実態はまだ闇の中。そんなクラウドコンピューティングへのトレンドを、実際にビジネスチャンスと受け止め、取り組んでいる技術会社さんからお話を聞く機会がありました。エクスウェア株式会社は社員数30人規模の、本当に小さなシステム開発会社ですが、積極的にこの分野に打って出ています。2010年4月に代表取締役社長に就任した滝本賀年(かずとし)さんが、取材に応じてくださいました。

クラウドコンピューティングは、 IT業界にとってピンチであると同時にチャンスでもある。

ところで、クラウドコンピューティングとは、いったい何なのでしょう?

その問に簡潔に答えられる人は、まだいないと思います。関連企業各社、それぞれに違う解釈をしていますし、どれが正しいとも言い切れません。 ただ、少なくともIT業界にとってはある意味一大ピンチであり、同時に一大チャンスでもあると言えるでしょう。

ピンチとチャンスとは、どういうことでしょう。

グーグルやアマゾンが提供するサービスでほしい機能がまかなえてしまえば、受託開発を業務とする当社のようなシステム開発会社は仕事を失います。同様に、サーバを必要とするのがグーグルやアマゾンクラスの大手サービス会社のみになっていけば、サーバを製造、販売する各社も顧客を失います。そういう最悪の想定を考えれば、明らかに大ピンチと言えます。 ですが消える業務がある反面、生まれる業務があるのは世の常。当社はそのような発想で、クラウドコンピューティングを飛躍のチャンスととらえているのです。

では、そのチャンスとは、具体的には?

現状、クラウドコンピューティングは、インターネット上で手に入るシステムやサービスでバーチャルに何ができるか? という部分にスポットが当たっているようで、仮想化技術に関する議論が活発です。 当社はそこから一歩踏み出し、スマートフォンに代表される次世代モバイル端末を使い、「いつでも、どこでも、だれにでも」使える技術にフォーカスした開発に乗り出しました。

2010年5月12日、 「第一回クラウドコンピューティングEXPO<クラウドジャパン>」 MOMONGA+(モモンガ・プラス)アンケートを発表。

「いつでも、どこでも、だれにでも」使える技術とは?

最新の開発実績としては、MOMONGA+(モモンガ・プラス)アンケートというサービスがあります。SaaSタイプのクラウド・アンケート・ソリューションで、オンラインでサービス申し込み、最短5営業日以内にサービス開通が可能。アンケートの設問も、Webブラウザから簡単に行えます。PCブラウザ、携帯電話、iPhone、Androidなどの各種スマートフォンに加えて、iPadからアンケート集計もできます。 2010年5月12日から東京ビッグサイトで開催される「第1回 クラウドコンピューティングEXPO<クラウドジャパン>」の出展ブースで、デモを兼ねて発表します。

そのような開発に関する、体制は?

この4月に私が社長に就任すると同時に、専任の部署を発足させ、エンジニア2人、営業担当1人を配属しました。たった3人の組織かと思われるでしょうが、当社は全社員30数人規模。全体の1割を新規案件にあたらせるというのは、かなりの冒険なのですよ(笑)。

かなりのリスクを払ってでも、クラウドコンピューティングに賭けてみる価値があると考えているのですね。

前述したように、この流れは、じっと待っていれば当社のような開発会社はじり貧であるのは確実。ならば、打って出た方がいいでしょう。 また、当社の技術者たちはもともとチャレンジ精神は旺盛です。社内には、業務とは別に個人意思で参加する「IT Zoo」と呼ばれるサークルがあり、残業時間と週末を使ってさまざまな技術的チャレンジをしてきました。ちなみに、私も一デザイナーとして参加させてもらっている活動です(笑)。 そういう気風が根づいていますから、クラウドコンピューティングへの興味も世の中で注目されるはるか以前から持っていましたし、技術提案を行ってきました。昨年発表したクラウド・受託開発ソリューション「COUGAR」なども、この「IT Zoo」から生まれたものです。

同じ「思い」を共有できるデザイナーと、 仕事ができればいいなと考えています。

クラウドコンピューティングに関するシステム開発、サービス開発においてデザイナーの役割はどうなっていくのでしょう。

これまでに増して重要になると考えています。クラウドコンピューティングに、ユーザーインターフェイスはなくてはならないものだからです。 これまで、特に業務系システムにおいては、インターフェイス、使い勝手といったことは二の次にされることが多く、デザインの優秀性なども顧みられることは少なかったものです。しかし、クラウドコンピューティングには、ユーザーのニーズを広く集めた上で形にするという側面が強くあります。限られた利用者が使えればそれでいいという認識は、通用しません。グラフィックデザイン的にも人間工学的にも、一般消費者を相手にする気構えでインターフェイスやデザインを真剣に考える必要があると、私は考えます。 エンジニアがつくる技術や仕組みは、どこかにひとりよがりな部分が出てしまうもの。それを使う人の立場からブラッシュアップしてくれるパートナーとして、デザイナーには大きな期待を寄せています。

これまで以上に重要になるであろう、デザイナーとの関係性については?

デザイナーに限らず、システムやサービスを開発、構築するにあたっては、参加者全員が「思いをひとつ」にすることがとても大切と思います。 同じ「思い」を共有できるデザイナーと、仕事ができればいいなと考えています。

エクスウェアのクラウドコンピューティングにかける意気込みを、あらためてお聞かせください。

気づけば、日本のIT産業は、10%の大手がさまざまな案件の元請けとなり、残りの90%の下請け業者が業務の振り分けを待つ「下請け構造」の業界となってしまいました。 もうそのような体制では、世界的なITビジネスの競争には勝てないと思うのです。私は、クラウドコンピューティングは、優れたアイデアが、少ない投資で、より多くのユーザーを獲得するチャンスのある世界と考えます。受託開発会社としては弱小に属する当社ですが、技術力とアイデアと意欲で、「いつでも、どこでも、だれにでも」使える技術をどんどん形にしていく意気込みです。

取材日:2010年4月

エクスウェア株式会社(略称:Xware )

  • 代表取締役社長:滝本賀年
  • 事業内容:
    • システム開発
      • 入札に関する技術支援
      • システム構築にかかわるコンサルティング
      • システム構築に関する受託開発
      • 各種スキルのエンジニア派遣
    • 製品開発・販売
      • オリジナルパッケージ製品の開発・販売
      • インターネット情報サービスの開発・運営
    • エンジニア教育
      • IT企業向けオリジナル技術者研修
      • 新入社員教育の企画・実施
      • 教育に関する助成金申請のコンサルティング
      • 入社前研修の企画・実施
      • インターンシップ、会社説明会の企画・運営
  • 設立:1995年3月
  • 資本金:1,000万円
  • 所在地:〒140-0001 東京都品川区北品川1-11-1 寿ビル4F
  • Tel:03-3474-0760
  • Fax:03-3474-0761
  • URL:http://www.xware.co.jp
  • 問い合わせ:info@xware.co.jp
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