仮想空間にリアリティをもたせ 居心地のいい空間をつくる
- 東京
- 株式会社ココア 社会・技術基盤戦略担当部長 濱岡邦雅氏
事業としての成功イメージは、 ディズニーランド。
2007年に会社設立し、2008年4月からサービス開始。やはり、セカンドライフの日本上陸がきっかけで企画された事業なのでしょうか?
それは、全く違います。決して強がりではなく(笑)。昨年のあのブームとは全く無関係に、それ以前からプランニングされていた事業ですし、プランの中にセカンドライフが意識された部分はほとんどないと言っていいほどです。
では、『Meet-Me』は、どのようなビジョンでプランニングされているかをお聞かせください。
何を意識していたかを説明すれば、SNS、そしてゲームソフト『おいでよどうぶつの森』です。 前者は、次世代SNSのプラットフォームが3D化すれば、かなり『Meet-Me』のライバル的な存在になるでしょう。後者は、いわば無目的な一風変わったゲームで、それが累計4百数十万本のヒットを記録している。そのように、ユーザーがWebやゲームに求めることが変わりつつある、変わるとしたらどう変わるのだろうという思いを強く反映させたのが『Meet-Me』だと言えます。
なるほど、仮想空間という点では共通しますが、セカンドライフとはかなり違ったアプローチで企画されているわけですね。
さらにわかりやすい解説をするなら、事業としての成功のイメージは「ディズニーランド」でしょうか。東京23区という広大な空間で、人々が、思い思いにエンターテインメントの時間と空間を消費することに、そんなイメージを重ねています。
なるほど、なるほど、すごくわかりやすいです。
ビジネスモデルとして解説すれば、料金はユーザーから直接、月額会員料や土地などのアイテム購入代金をいただく課金方式がベースになります。その課金をB2Cとすれば、『Meet-Me』という街でのビジネス展開を考える企業の参入も可能。参入企業への課金は、B2Bと言えます。そして、この空間を広告スペースとして利用したい企業からの出稿もOK。 B2CとB2Bと広告――3つの柱となるのが、『Meet-Me』のビジネスモデルです。
居心地のいい空間をつくるには、 場所と空間のリアリティが必要。
2007年にかなり盛り上がったメタバース(3Dバーチャルコミュニティ)も、ここへきて収束というか、冷え込んでいるように見えますが。
外部から見ると、おそらくそう見えるのでしょうね。ですが『Meet-Me』に関して言えば、比較的順調というか恵まれていると思います。初年度からトヨタ自動車さんが本格参入(東京湾に大規模都市「TOYOTA METAPOLIS (トヨタメタポリス)」をオープン)するというエポックメイキングな事柄もありましたし。 確かに2008年は全体として見ると、2007年の過剰な熱狂から世界的不況も重なり、この市場が急速に冷え込んだ感は否めません。しかし、『Meet-Me』を楽しんでくださる個人のユーザーについて言えば、登録数や接続時間、またサービスにお金を払ってくださる方々の数も急速に伸びてきていて、水面下での新たな胎動を感じています
どんなところが、支持されていると思いますか。
『Meet-Me』のプランニングにあたっては、まず、「提供する私たちは、仮想空間に何を求めるのか」を徹底的に議論しました。その結果、導き出された答えは、「人と人とのなごやかなコミュニケーションの場でありたい」です。 デジタル化された現代、実生活では人と人とのつながりが希薄になり、「ご近所づきあい」のようなものも消えつつある。「『サザエさん』の世界のようなふれあいが生まれるようにしたいね」と、それはまさに夢として関係者一同が共有しています。 また、日本という国の四季折々の季節感も大切にしていきたいと思っています。そんなところが、ユーザーに理解、共感していただけているのではないでしょうか。
東京23区が、実際に再現されているという部分も、かなり大きな特徴ですね。
実はプランとして決定した時点では、それほど大きな特徴になるとは思わなかったのですが(笑)、結果的に他のサービスとの差別化に結びつきました。 なぜ、リアルな地図データを使ったかと言えば、ユーザーにとって居心地のいい空間をつくるには、場所と空間のリアリティが必須だと考えたからです。全く架空の仮想空間では、土地を買って家を建ててもそれは別荘にしかならない。土地にリアリティがあれば、選んで買った土地は“自分の過去の人生におけるなじみの場所”だったり、“憧れの場所”だったりするわけで、それは自分にとって「居場所」となりうるし、コミュニティも形成されやすくなるだろうと見込んだのです。
その見込みやプランニングが、見事に的を射ていたわけですね。
現実世界ではとうてい無理な「都内に複数の家を持つ」という庶民の夢がありますよね?仮想空間ユーザーにそのような行動が生まれるのか?と関心を持っていたのですが、やっぱりちゃんと生まれました。都心の一等地を中心に複数の家を持つユーザーは結構いるんですよ。 それでも1軒あたり月額数百円の課金ですから廉価に夢が叶えられますからね。ちなみに私は母校の大学の近くに家を1軒所有しています(笑)。
イベント企画は豊富に、 毎週のように提供しています。
その他、ユーザーの行動傾向で特徴的な点はありますか?
『Meet-Me』のユーザーさんたちの行動パターンは、見事にまちまちです(笑)。家に友人を招く人もいれば、渋谷のハチ公前で知り合った人と話しこむ人もいる。釣りなどのアトラクションも、とても人気を博しています。 運営サイドの心がけとして、イベント企画は豊富に、毎週のように提供しています。特に8月以降は花火大会や宝探しなど、どれも多くの参加者を得て大盛況でした。 メタバース内でのイベント企画は、やってみるとわかりますが、大変な労力を要します。ですが、『Meet-Me』は、いつでも楽しい何かがある空間でなければならないと、スタッフ一同身を粉にして(笑)、イベントを提供しているところです。
将来展望をお聞かせください。
まず、私たちは5年先、10年先の展望をもってこの事業に取り組んでいます。 これまで2次元のWeb、モバイル上で実現されたことは、近い将来すべて3Dにミックスされるか、置き換わっていくはずです。『Meet-Me』は、そんな次世代のありようを見越しての先行投資であり、プラットフォームの提示だと考えています。 プラットフォームが確立した先には、コンテンツのディストリビューターとして、例えば映画や絵画を提供するような役割も待っていくかと思われます。その場合も、もちろんメタバースであることを生かし、アバターの彼女と一緒に映画を観るなんていうことも可能にします。
海外に目を向けた事業展開は?
単純に『Meet-Me』の技術を持っていき、『Meet-Meサンフランシスコ』や『Meet-Me北京』みたいな海外進出というのはあまり想定していません。 むしろ、ソフトウェアの多言語化によって、海外のユーザーが東京を、日本を訪れるようになるスタイルでの展開を考えています。『Meet-Me』自体が、国の「Visit Japan」キャンペーンに匹敵する人の動きを生み出せるのではないかと期待しています。
取材日:2008年11月
株式会社ココア(Co-Core)
- 代表取締役社長:森山雅勝
- 業務内容:
- 3Dバーチャルコミュニティ(メタバース)の運営
- インターネットを利用したオンラインゲームの企画・開発・配信・運営管理
- 家庭用ゲームの企画・開発・販売
- 携帯情報端末向けのコンテンツ向けコンテンツの企画・開発・配信・運営管理
- キャラクター商品の企画・開発・販売
- インターネット上での電子商取引及び電子商取引仲介
- インターネットを利用した各種情報誌量の収集及び提供
- インターネット上の広告業務
- 前各号に付帯する一切の事業
- 設立:2007年3月12日
- 所在地:〒150-8530 東京都渋谷区渋谷3-25-18
- TEL:03-4363-4630
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