会社としても制作者としても 常に実験を心掛けていきたい
- 東京
- メディアフォーユー株式会社 代表取締役 里田剛氏
生き生きとしたタッチで、 会社紹介やマニュアル映像を。
HPに公開されている制作実績を拝見すると、「さすがTVマン!」と声をかけたくなるようなカメラワークに目を奪われます。
僕自身、TVをめざした動機がドキュメンタリーだったせいもあるでしょうね。会社立ち上げの初期には、「押し売り映像」と称して企業の社長室を訪ね、「これなんですか?」という調子でいきなり撮影を始める突撃制作なんかもやっていました(笑)。できあがった映像の臨場感を気に入ってくれた社長さんが制作を依頼してくださり、さらに知り合いの企業を紹介してくださるという輪の広がりで実績を積み上げた時期もありますから。
実績映像には、えもいわれぬ作風を感じますから、クライアントさんにファン心理のようなものが芽生えてもおかしくないですね。
「ファン」は言いすぎでしょうが、紹介で受託するケースはかなり多いです。実は僕、会社を設立してからこれまで、「営業」というものをしたことがないんです(笑)。誤解してほしくないのですが、「営業なんてしなくてもOK」と思っているわけではないんです。経験がないので気が引けて、どうしても「仕事ください」と言えないんですよ。これは大きな欠点と悩んでいるんですが(笑)、幸いにしてここまで、紹介やリピート、そこに奇跡的出会いも(笑)加わって、実績を積み上げることができています。
ほとんどの制作実績をHPアップしていますが、映像の著作権は問題ないのですか?
はい、そこは大丈夫です。当社は基本的に制作した映像の著作権を保有させていただいているため、2次利用権もしっかり持っています。
なるほど、そういうやり方があるのか。クライアントさんの理解は得られていますか?
事前にそうご説明しますし、契約書も交わしていますから。中には拒否されるクライアントさんも存在しますが、ほとんどの場合合意できています。「どうしてもだめ」というケースでは、著作権を買い上げていただくことで解決しています。 ただ、著作権は当社にあると言っても、それはクライアントさんの映像使用に制限を設けるものではありません。海外では当然の、「映像の著作権は、制作者にある」との基本的な位置づけを確認する意味あいが大きいんです。
ネット時代は、実は、 「誰も見てくれない」映像が増える時代。
里田さんの事業ビジョンを聞かせてください。
会社設立当初の事業の柱は、ご存じのとおり、映像の受託制作です。もうしばらくそこに力を集中するつもりですが、軌道に乗って以降の展開は2つの視点で考えています。ひとつは、映像のレンタル事業。メディアフォーユーがつくり、アーカイブした映像作品をネットなどを通してレンタルするビジネスモデルです。もうひとつは、映像公開サイトの運営。ここにアップする映像作品も自社制作として、閲覧者をたくさん集める。そのうえで映像の販売や広告収入でサイトを育てる構想です。
なるほど、やはりネットは重要なプラットフォームになりそうですね。TV出身の映像制作者がネットを利用して新ビジネスを立ち上げるっていうのは、いかにも現代的な事象ですね。
ネットの普及で、映像制作の環境も劇的に変わりましたからね。気軽に映像制作を手掛けて公開できるようになった。ただ、問題は、気軽につくれて公開できる現代は、実は、その分「見てもらえない」リスクもある時代ということ。「つくって公開できた」と、「見てもらえている」は同義語ではないのです。こんな時代だからこそ、ネットにアップされる映像は、それぞれに独自の世界観がなければ見向きもされない。その厳しさを感じ取っている人は、あまり多くはないとは思いますが。
里田さんは、TVの世界に10年以上在籍されていたとのこと。その経験は、今後、どのように生かされるのでしょう。
まず言えるのは、日本のTVマンたちは「ぶっちぎり」と言っていいほど優れた映像作品をつくりつづけてきましたし、今もつくりつづけています。僕の制作者としてのプライドも、そこに依る部分が大きいと感じます。そして、TV界に長くいて、つくづくわかったのは、大手TV局は、事業の中心にある広告ビジネスが最大の関心事で、映像の権利ビジネスにはあまり関心がないという事実です。そこに不平を言っている暇があったら、制作者としての実力を試すために独立すべきだろう。それが会社設立の動機になりました。
会社としても、制作者としても、 常に実験を心掛けていきたい。
里田さんは会社経営者というより、映像制作者としてこの会社にかかわっているのだとわかります。
そうですね。お金をもらいながら、練習している感覚はあります(笑)。どんな仕事であっても、制作作業のどこかに実験は組み入れていますしね。もちろん、水面下ではお金をもらえない実験も常に心掛けてもいます。先ほど触れた「押し売り映像」も、受注につながらなかった場合は無報酬ですし、「これは面白い」と感じたことには、まずカメラを回してから考えるようにもしています。8月に上映会を開催した「世田谷早朝ダンスクラブ」のドキュメンタリー映像なども、友人に声をかけられてピンときて、毎週週末にカメラをかついで通った末に完成したものですから。
現在は、里田さんの他に社員2名の制作体制とのこと。若手お2人を育てながらの制作であり、会社経営なのでしょうね。
いろんなことを教えながら、一緒に考えながら毎日を過ごしています。僕は、いわゆる徒弟関係でスタッフをひっぱるつもりはないので、彼らの自主性や個性を大切に育てたいと考えています。ひとつだけいつも言っているのは、「実験すること」ですね。毎日、常にいろんなアイデアを持つよう心掛け、機会をみて実験してみる。どんな手法も取り組みも、実際にやってみて、成功も失敗も、自分の腑に落とさなければ実になりませんから。
取材日:2008年8月7日
メディアフォーユー株式会社
- 代表取締役:里田剛
- 事業内容:
- 映像制作
- Webサイト企画 制作 運営
- モバイルサイト企画
- 制作運営設立:2006年10月24日
- 資本金:100万円
- 所在地:〒150-0042 渋谷区宇田川町2-1 渋谷ホームズ919(クイック)
- TEL:03-5856-1666
- FAX:03-5856-1667
- URL:http://mediaforyou.tv/
- 問い合わせメール:HP「お問合せ」より
- 主な取引先
- 株式会社アイ・パッション
- 株式会社インテリジェンス
- 株式会社エンタテインメントプラス
- オリジン東秀株式会社
- 株式会社ジョナサン
- 世田谷保健所
- ソニーマーケティング株式会社