CM制作のあり方 クリエイティブの手法に関して これまでにない可能性

東京
株式会社レッドビジョン 代表取締役社長 河東龍氏
 
動画、イラスト、写真投稿のコンテストサイトである、CM王国(http://cm-king.com/)を運営する株式会社レッドビジョン。CMのアイデアを広く一般に募り、企業広告の制作手法にまったく新しい可能性を提示したCM王国は、業界関係者からの注目も日々大きくなりつつある。 「これはいわば、1億総クリエイター宣言でもあるのです」と語る、代表取締役社長/河東龍(かわ・とうたつ)さん。前職の人材ビジネス企業での営業職時代、採用広告の制作にあたって相談相手となるクリエイターの選択肢があまりに狭いと感じていたことを、そのまま新事業へと結びつけた。ネット時代ならではの新着想と新ビジネス--それはCM制作のあり方、クリエイティブの手法に関して、これまでにない可能性を提示した、きわめてユニークなチャレンジなのである。

大予算を抑えて良いCMを作りたい企業は多い。 だから、CM王国が生まれた。

CM王国

採用広告の制作経験が、CM王国の立案に結びついているのだそうですね。

思い入れのあるクライアントさんに、少しでも良い広告案をご提示したい。そう考える僕にとって、「今、手の空いているのは彼だけだから」「制作発注先は、このリストから選んで」というさまざまな“しばり”がいつも悩みの種でした。より良いものを作るには、より多くの案を集めるのが理想だろう。できることなら、日本全国から案を募りたい。常々そう思っていたものです。

それで、独立・起業に際して、CM王国のアイデアを事業化することにした。

そうですね。独立は1年以上前から計画していましたから、縦軸に自分の「強み」や「経験」を、横軸に事業分野ごとの「可能性」「集積性」を置いたマトリックスを作り、慎重に事業選びをしました。100以上の候補の中から選んだのが、CM王国を含めたネット関連事業でした。

夢を形にする――ベンチャーならではの、選択肢ですね。

ただ、CM王国は、僕の個人的な夢だけで立ち上げたわけではありません。人材ビジネスにたずさる中で、特にベンチャー企業と呼ばれる新興企業さんたちが、想像以上に宣伝やPRのニーズを持っていることを知ったのです。1本数千万円や数億円という予算は割けないけれど、自慢の商品を宣伝したい、プロモーションをしたいというニーズはものすごくある。となると、CM王国のようなアイデアは「あり」だな。そのような勝算もあったからこそ、事業として立ち上げたのです。

率直に申し上げて、着想自体は誰にでも出せそうに思います。実際に事業としたことが、本当にすごいと思う。

ありがとうございます(笑)。繰り返しになりますが、ニーズに確信が持てたことが大きな推進力になりました。

投稿作品の事前チェックは 最優先課題として力を注いでいます。

それで、肝心のクライアントさんからの反応は?

きわめて良好です。少なくとも、宣伝、広報の担当者さんレベルでは「これは面白いアイデアだ」と、共感や関心を示す反応を多くいただいています。その辺は事前の予測どおりでした。もちろん、いくつか予測を超えたこと、想定外のこともありましたが。

想定外とは、たとえば?

特に動画の場合、アマチュアの投稿作品とはいえ、商品を扱いますし、企業のロゴだってインサートすることになる。投稿作品をそのまま使う必要はまったくないのですが、受賞作品を決めるにあたって、宣伝担当者の判断を超えた部分、つまりは法務やブランディング室のような大枠を管理するセクションの判断も必要になってくるのです。コンテストの開催→受賞作の決定フローは、当社が当初に見積もったものより大幅に時間がかかるとわかりました。

なるほど、やってみないとわからないことはたくさんありますよね。

そうですね。ですから、立ち上げからこの1年、CM王国の詳細はいろいろ柔軟に変化していますよ。

たとえば、どんなところに変化がありましたか?

主に、クライアントさんのベネフィットの部分ですね。より大きく、有意義で、選択肢の広いサービスをご提供できるよう努力しています。開催コンテストをアフィリエイト会社やブログサービス会社との提携で、より多くの人に知らせることや、受賞作品をより広く公開することなど、CM王国の活用によってさまざまなプロモーション手法を選べるようになってきています。

クライアントさんの立場に立って考えると、やはり、アマチュアクリエイターの作るものにはそれなりにリスクを感じます。

それは、もっともですし、実際のクライアントさんもまったく同じ思いをお持ちです。ですから、CM王国では、投稿作品の事前チェックは最優先課題として最大の力を注いでいます。

もし、本当に「変な」CMが投稿されたり、ネットにアップされてしまった場合は?

当社が、つまりCM王国が責任を持って、投稿者と掲載サイトに削除を働きかけます。

投稿ジャンルは、(1)動画、(2)静止画、 (3)テキストの3つの柱を持っています。

ところで、CM王国は「動画専門」投稿サイト、なのですか?

そこへの誤解が多いのに、困っています。CM王国は、「動画専門」ではありません。投稿ジャンルは、(1)動画、(2)静止画、(3)テキストの3つの柱を持っていて、企画書のみでも、キャッチコピーのみでも投稿できます。環境が整いつつあるとはいえ、動画を自由自在に作り込める人は、まだそんなに多くないのです。

受賞、当選の秘訣なんて、ありますか?(笑)。

あったら、僕が教えてほしいですね(笑)。受賞作の傾向などをお知りになりたかったら、ぜひCM王国のサイトを訪れてください。全受賞作が公開されていますから。ひとつ、大切なポイントを指摘するとしたら、公募の概要をよく読むこと。実は、公募主旨や応募規定、商品の特徴などをまったく無視した作品が、まだまだ多い。みなさん、見落とすのか、作っているうちに夢中になってしまうのか、とにかく「作りたいものを作っちゃいました」となってしまうようで(笑)。

受賞した作品、投稿された作品の著作権はどこに?

著作権は、制作者と規定しています。クライアントさん、つまりコンテストの主催者は、応募作品の2次使用権を持ちます。実は当初は著作権をクライアントさんとしていたのですが、それでは制作者が自分の作品を作品集として公開できないことがわかって、規定を変えました。

なるほど、なかなかうまい仕組みになっていますね。ところで、本当のCMとして採用されたアイデアは実際にあるのですか?

あります。残念ながらクライアントさんとの申し合わせがあり、どのCMがと明らかにすることはできませんが。「これは、プロにはできない発想だよな」と僕も関心した作品が、クライアントさんに絶賛され、そのままのプロットでCMに採用されています。もう、オンエアもされていますよ。

今後、CM王国を、どんなサイトに育てていく構想ですか?

僕の思い描いている構想は、まず、CM王国の活動を通じて、コンテンツのアイデアを求める企業さんが、「全国から公募する」という選択肢を持てることを知らせたいし、広めたいですね。一種の啓蒙活動になるのかな、と思っています。 もうひとつは、CM王国を広い意味での「登竜門」に育てたいと考えています。このサイトを通じてCMクリエイターが育つことはもちろんですが、たとえばマネジメント会社などと提携してアイドルやスターを生み出すことだってできるはずです。 さらに、投稿がゆえのリスクを排除し、もっと広く企業のPR活動に利用してもらえるようなサービス。たとえば、クリック募金の仕組みを利用して、地球環境や世界平和を考えるキャンペーンに大手企業のCSR予算を投入してもらえるような仕組みを作っていきたいと考えています。

取材日:2008年6月26日

株式会社レッドビジョン

  • 代表取締役/河 東龍(かわ・とうたつ)
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:
    • インターネット関連事業
    • WEBサイト企画・開発・運営
  • 設立:2007年2月
  • 所在地:〒169-0075 東京都新宿区高田馬場4-17-15 トーヨービル804
  • TEL:03-6272-4740
  • FAX:03-6272-4741
  • URL:http://redvision.jp/
  • 問い合わせメール:info@cm-king.com
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