王道は回避し 相手が「?」となるような 隙間を狙っていく
- 東京
- 花咲けピクチャーズ株式会社 勝野明彦氏
社名は初耳でも、Yahooアバターの「花咲けミー!」を知っている人は多いはず。花咲けピクチャーズ(2007年に株式会社ポリゴンズから名称変更)の開発した「花咲けミー!」は、オリジナルキャラクターグッズ「パウダービーズクッションMOGU花咲けミー!」として6万個を販売するヒット商品にもなっています。同社は、設立当初からWeb3Dキャラクター制作に特化した営業戦略を持ち、アバターやフラッシュアニメーション制作はもちろんのこと、アバターがサイト上を動き回り解説をおこなう「アバナビ」なる新サービスでも注目されている。そんなユニークな会社と斬新なビジネス戦略を生み出した勝野明彦社長が、インタビューに応じてくださいました。
大手が取り組まない仕事が、Web3Dキャラクターであった
正直申し上げて、Web3Dキャラクターを専門とする制作会社さんがあるとは知りませんでした。なぜ、そんなことを(笑)思いついたのですか?
話せば長くなるので、短く説明しますね(笑)。当社のような後発会社は「わかりづらい仕事」に乗り出さなければ、大手さんにかないません。そうそうたる顔ぶれの大手さんが割拠するデジタルコンテンツ業界の王道は回避して、説明しても相手が「?」となるような隙間を狙っていかねば。それが「わかりづらい仕事」です。私の場合それは、すぐに「Web上の3Dキャラクター」やアバターだと着想できました。
どうしてでしょう?
誰もやっていなかったから(笑)。会社(有限会社ウィンウィン・エンターテインメント)を設立した1998年当時、少なくとも日本の業界関係者の間ではWeb上の3Dキャラクターは無理だと思われていた。だからこそ、先んじてやろうじゃないかとなったわけです。後にアメリカやスウェーデンで専用ツールが開発されて誰にでもできるようになりましたが、先鞭をつけた分だけ当社が先にいけたのだと思っています。
でも、作れればいいというものではありませんよね。クオリティが高くなければ受け入れられるはずはない。
私は制作者ではありません。もしかしたら、そこがよかったのかもしれない。事業のアイデアは出せるが、自分では線一本ひけるわけではない。だから制作の現場は実力のある人に任せなければならないし、実力ある人と組めなければ一歩も前に進めないと自覚していましたから。
なるほど、制作会社だからといって、経営者が制作者である必要はないですね。
そうかもしれませんね。そのせいで、当社は営業企画をないがしろにしない会社になったのだと思います。営業企画がさまざまな企画をたて、デザイナーが優れたものをつくるフローがとても上手くいっている。設立当初は私が営業企画を担当していましたが、今は選任スタッフに任せています。
事業を企画し、制作をプロデュースするというようなことは、もともと得意だった?
前職の教育産業の企業で、新規事業としてデジタルコンテンツ開発にたずさわっていました。基本的に、その当時の経験が生きていますね。
社員には、「35歳までに独立しよう」と言っている。 独立後に、当社とゆるやかな連携を気づいてもらえるのが理想。
現在の社員構成は?
9名の社員のうち、1名が営業企画、8名がキャラクターデザイナーです。平均年齢は24.5歳と、かなり若い。なにしろ社員には、「35歳までに独立しよう」と言ってますから。
社員に独立を促すなんて、御社にとって損失ではないのですか?
私自身、前職の会社で先輩から同じ薫陶を得て、実際にそうしましたから。一人前になってひとり歩きできるようになった“もと社員”と、ゆるやかな連携をしていきたいのです。そのために、社員がどんどん成長する、面白いチーム作りを目指しています。
なるほど、そういうイメージか。合衆国とか、地域連合のような感じでしょうか。
私が独立して、最初に構想したのが「5人で2億5000万円を売上げる会社を12作って連携する」です。5人一組の“ビジネスバンド”が縦横無尽に暴れまわり、連携するイメージですね。12という社数には特別の根拠はないのですが(笑)、社員の独立の一環で、そのグループの一翼を担う会社が生まれることも期待しています。
いずれにしろ、「35歳までに独立しよう」はユニークな経営手法ですね。
私が「35歳で」と考えるのは、まず35歳からであれば、プライドを捨て、0からリスタートできるから。また、私にとって経営とは、人が成長することが第一義なので、会社に囲いつづけるのは成長を止めることになると考えているからなのです。
「お客様と社員が成長する」―――― その軸がぶれるくらいなら、売り上げは伸びなくてもいい。
制作力があって、企画力ある。そこが、御社の2本柱なのでしょうね。
そう自負しています。両方を兼ね備えた制作会社は、けっこう少ないですからね。特にアバターは最近、制作だけでなく企画と運用の力も期待される分野になりつつあります。当社でも今、ファッションアバターで企画から運用まで手がけていて、アパレルと同じような「52週のマーチャンダイジング」を実現させて高い評価をいただいています。
新しい分野へのチャレンジは、まだまだつづくのでしょうね。
今年7月には業界の有志を募って、仮想空間ビジネス研究会を立ち上げる予定。セカンドライフの上陸は喧伝されたほどのブレイクにはつながりませんでしたが、仮想空間自体は底知れぬ可能性を秘めたコンセプトです。ビジネスの可能性を多くの人と考え、研究して、まったく新しいデジタルコンテンツビジネスを見出したいと思っています。
今後の目標は?
大目標としてあるのは、「5人で売上げ2億5000万円/営業利益10%のビジネスモデル」を作ることです。直近の目標としては「アバター制作では、日本一」を目指し、「アバナビ」を成功させることに注力しています。
取材日:2008年4月
花咲けピクチャーズ株式会社(旧:株式会社ポリゴンズ)
- 代表取締役:勝野明彦
- 資本金:10,000,000円
- 事業内容:
- キャラクターデザイン開発
- デジタルコンテンツ制作
- フラッシュアニメーション、ムービー制作
- Webデザイン
- キャラクターグッズ企画・販売・プロモーション
- 設立:2001年7月
- 所在地:東京都渋谷区恵比寿南1-2-11 フォーシーズン恵比寿ビル9F
- TEL:03-5724-6405
- FAX:03-3712-1410
- URL:http://www.hanasake.jp/
(関連会社) 株式会社アバターデザイン研究所 http://www.avatarlab.jp 株式会社エフエーラーニングラボ・ウィンウィン http://www.e-winwin.co.jp