プライドとモチベーションの もてる事業に進出しなければならない それはとてもさし迫った問題でした
- 東京
- 株式会社ニューズ・ツー・ユー 代表取締役 神原弥奈子氏
これまで、企業のPR(パブリック・リレーション)は新聞、テレビ等のメディアを通して行われるのが基本だった。それを大きく変えたのは、もちろんインターネット。企業が自社HPを持つということはつまり、企業がPRのための自社メディアを持つということなのである。企業情報の流通は、ネットPRで一大変革しつつある。 そんな時代に、独創的なIT広報技術を駆使してクライアント企業の広報活動を支援する会社。それが株式会社ニューズ・ツー・ユー(News2u)だ。提供するのは「掲載されるかどうかわからない」というプレスリリースへの不安を払拭したネットPRサービス「News2u リリース」、社内コミュニケーションの活性化をスピーディ&低コストで実現した「News2u 電子社内報」などOne and OnlyなASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)サービス。顧客から要望があれば、WEBサイト制作も含めたPR、広報コンサルティングも行う。株式会社ニューズ・ツー・ユーは、ネット上の企業情報流通を独自の視点と技術でビジネスに育て、大躍進している。代表取締役/神原弥奈子さんにお話を伺った。
「News2u社内報」が企業情報流通なのに対して、 「News2uリリース」は企業が社外とコミュニケーションする情報流通を支援する。
2001年に現在の「News2u.net」開設、「News2uリリース」提供開始、そして株式会社ニューズ・ツー・ユー設立。この年を境に、御社は大きな躍進を始めますね。
そうですね。受託制作の会社からサービスカンパニーへ大転換を遂げました。前身である株式会社カプスは私が編集制作活動をするために設立した会社で、その後WEB制作がメインとなっていった制作会社です。その後、企業のインターネット支援なども手がけるようになり、2001年からASPサービス提供を開始しました。
ASPサービスに進出したきっかけは?
当社には、自社開発した電子社内報がありました。要は、自分たちの、「グループウェアをちゃんと使いたいよね」というニーズをシステムとして構築してみたら、他社さんにも使っていただけるものになった。それがきっかけのひとつになったのは、確かですね。 グループウェアを使ってみてわかるのは、人は自分が入力するのはめんどくさく感じたりするくせに、情報はいくらでも受け取りたいということ(笑)。そうした問題を解決することで、企業内情報流通が支援できるとわかってきたのです。
神原さんみずからが、システムのアイデア、ビジネスのアイデアを出したのですか?
とにかく私は新しいもの好きで(笑)、グループウェアの使いこなしも率先する社長ですから。中途採用した社員の定着率が悪いのはなぜだろう?と分析してみたら、情報共有のためのグループウェアの使用が障害になっているとわかった。ITへのリテラシーの違い、使いこなしの違いが温度差になっているなら、そこを解決したいと思ったのが始まりでした。そこでできあがったシステムが、後に「News2u社内報」になっていくわけです。
「News2uリリース」とは、どんなサービスですか?
「News2u社内報」が企業内情報流通なのに対して、「News2uリリース」は企業が社外とコミュニケーションするための情報流通を支援するものです。アイデア自体は1998年くらいには固まっていました。
サービス開始までに3年かかった理由は?
主にマーケットリサーチに時間をかけたからです。このサービスが、既存の広報支援会社にもできるもので、安易に参入できるようなものならば手がけないほうがいい。その辺を慎重に調べ、判断しました。
WEB制作は、大切なDNA。私にとってもビジネスのルーツです。
受託制作の会社からサービスカンパニーへの大転換には、かなりの労力を要したようにも思いますが。
答えになるかどうかわかりませんが、私は、誰でもできるようになると、途端にモチベーションが下がるのです(笑)。1995年前後はまだ、HPが作れるというだけですごいことだった時代。HPの受託制作に、「私たちにしかできない仕事」というプライドがもてました。しかしその後、競合も増え、価格競争が始まりました。プライドとモチベーションのもてる事業に進出しなければならない。それはとてもさし迫った問題でしたから、サービスカンパニーへの転換は、ある意味必然だったのです。
WEB受託制作は、今も御社の事業の柱ですね。
大切なDNAだと思っています。技術スキルを蓄積し、共有する上でも重要ですし、お客様の声を直接聞く中でインターネットにどんなことが求められているかを知る、重要な情報入手チャンネルでもあります。私にとってもビジネスのルーツですから、いつまでも大切にしていきたいですね。
ASPに進出するにあたって、技術者などの増員は必要でしたか。
受託制作時代からプロデュース、技術、デザインの3部門は確立していました。WEB制作には、立ち上げ後の運営やオリジナルプログラムなどが求められるようになっていましたから。「News2u社内報」や「News2uリリース」の開発は、当時の既存スタッフと蓄積技術で十分に対応できました。
基本機能は、ほとんど変わっていません。 変わったのはむしろ、市場だと感じています。
ASPサービスである「News2u社内報」「News2uリリース」は、今年、サービス提供開始から7年目に入っていますね。
おかげ様で、事業として順調に育っています。うれしいのは、サービスの新規顧客獲得のデータを分析すると、既存顧客からのご紹介がもっと多いことです。お客様がお客様を紹介してくださるというのは、当社のサービスに満足していただいている証だと思いますから。
この7年で、両ASPサービスはどんなところが変わった、進化しましたか?
基本機能は、ほとんど変わっていません。変わったのはむしろ、市場ではないでしょうか。両サービスはインターネット人口が2,000万人と言われた頃から稼動していますが、人口8,000万人にさしかかるあたりから、明らかに利用者のインターネットリテラシーが変わりました。関心度も変わったと思います。
市場の、もっとも劇的に変わった部分は?
やはり、検索エンジンの進化でしょう。それまでHPをもつ企業は、HPを立ち上げればお客様がそこに訪れてくれると思い込んでいました。ところが、昨今、特に「WEB2.0」の話題が注目されるようになって以降、インターネットユーザーは情報を検索しているのだということが広く知られるようになりました。どんなに立派なHPを立ち上げても、そのURLをブックマークしてくれる方は多くない。大多数の人は、必要なときに必要なキーワードで検索し、その結果を利用する。その事実の認知は、とてもインパクトがあったと思います。そこで、当社の存在意義も大きくなった。時代の追い風を感じますね。
御社の考え、神原さんの考えに、時代が追いついてきたということでしょうか。
私はインターネットおたくなので(笑)、感覚はかなり先に行っていると思います。検索の重要性の認知も、実は私は、「2003年くらいには広まるだろう」と予測していたのですが、実際は、それよりちょっと時間がかかりました。ネットPRについても、コンセプトについて理解をいただくのに時間がかかった実感があります。「企業PRはつまり、マスメディアにとりあげられることでしょう」「とにかくテレビに出ることが大切なんです」というPRの既成概念では、当社のASPサービスは理解しがたいものでしょうからね。
大切なのはお客様との間に信頼関係を気づくことであり、 これまで築いた信頼関係をさらに大きくすること。
そんな既成概念に対しては、どんな説得をしてこられたのですか。
とりあげられるのを待つのではなく、常に情報が流通している仕組みを選ぶべきだということですね。「ここに情報があります」「ここに付加価値があります」と手を上げている企業にしか、お客様の検索にヒットするチャンスはありません。今、その視点の転換、価値観の転換がようやく形成され始めていると感じます。
今後の経営方針をお聞かせください。
「News2u社内報」も「News2uリリース」も、これまでになかったサービスです。使ったことのないサービスを使おうと考えてくださったお客様の期待を裏切らないメリットをご提供すること。常にそれを大切にしていたいです。さらに大切なのは、そんなお客様との間に、「ニューズ・ツー・ユーの提供するサービスは信頼できる」という信頼関係を築くことであり、これまで築いた信頼関係をさらに大きくすることだと考えています。どちらのサービスも、コンセプトは今後10年、20年通用するものだと自負しています。それを前提とした長期の組み立ての上で、常に努力すべきは信頼関係の構築。それに尽きると考えています。
取材日:2007年4月4日
株式会社ニューズ・ツー・ユー(英文表記:News2u Corporation)
- 代表取締役:神原弥奈子
- 資本金:4億7072万5000円
- 事業内容:
- ポータルサイト運営事業
- 各種ASPサービス事業
- ウェブサイト企画・制作事業
- 企業広報ソリューション事業
- 設立:2001年3月22日(1993年10月1日/株式会社カプスとして創業)
- 所在地:〒102-0082 東京都千代田区一番町8 一番町FSビル5階
- TEL:03-3512-0330(代表)
- FAX:03-3512-0331
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