形で教えず、考えて判断させる そこから応用力が生まれる
- 東京
- 株式会社グラスルーツ 代表取締役 小野真由美氏
愛・地球博協会の会期後公式サイトをはじめ、多くのサイト制作で実績を残している会社です。設立は1984年。20年以上の歴史をもっていますが、社長の小野さん曰く「2000年前後が、第2創業期だった」とのこと。事実、それ以降、インターネット分野で会社は大きく伸びている。広報代理店としてスタートし、様々なトライを繰り返し、インターネット制作を手がけて大成功。チャレンジすることの大切さを「実験する楽しさを忘れない会社でありたい」という言葉で表現する、小野さんとグラスルーツの素顔に迫ってみたいと思います。
利益を追求することはわかっていましたが、成長を追及するということに興味がなかった。経営者としては、かなり晩生(おくて)ですね(笑)。
「2000年前後に第2創業」とは、具体的にはどういう意味ですか?
それまでは、自分の責任が負えない範囲で規模を大きくするのが嫌だった。ひらたく言えば、人を増やしたくないと思っていました。そんな私が、「会社の経営は発展させてなんぼ」「スタッフに高いお給料を出し、みんなが幸せであってこそ、いい会社なんだから、そのためには発展させないわけにいかない」ということに気づいたのが、その頃という意味です。利益を追求することはわかっていましたが、創業して15年も経ってから成長を考え始めるなんて、経営者としては、かなり晩生(おくて)ですね(笑)。
では、それ以降、最大のテーマは「成長」?
そういうことではありません。成長というミッションは意識しますが、それが最初にくる会社にするつもりはありません。みんなの頑張りが、結果として成長につながる会社でありたいと思います。
ネットに挙がっている会社の沿革を見ると、「2001年、はじめてデザイナーを採用」とありますね。制作系の会社で、20年近くデザイナーがいなかったのか!とちょっと驚きもしました。
制作会社だからデザイナーがいなければならないとは思いませんが(笑)。たしかにその頃から忙しくなり、外注のデザイナーさんだけでは賄えなくなってきました。
現在のグラスルーツは、WEB制作会社?
たしかに現況は、売り上げの85%はネット関連です。しかし、WEB専門のつもりはありませんし、そうなるつもりもありません。当社は、あくまで企画制作会社。そういう自覚でやっていきたいですね。
アウトプットがWEBであることは、あくまで結果ということですね。
そうですね。企画し、ご提案したことが、結果的にWEBという形で結実していると考えています。
ということは、WEB以外の分野でもクライアントに提案していくわけですね。
もちろん、オファーが「WEBで」という案件は、WEBに関する企画をたてることになります。しかし私たちの発想は、いつもメディアにしばられないところに置いておきたいし、チャンスがあればWEB以外の企画も会社が伸びた秘訣はどこにあると思いますか?
会社が伸びた秘訣はどこにあると思いますか?
そうねですね。頑張ってきたから(笑)でしょうか。当社は営業担当という者がいませんから、営業が上手で成長したということだけはないと思います。あえて言うなら、私たちが手がけた仕事が、それぞれ次につながっている。どこかで誰かが見てくれていて、それを評価していただいて、次に声がかかる。そういう繰り返しで今に至っているのだと思います。
「ダメでもともと」という文化の会社は強い
御社HPには、「実験する楽しさを忘れない会社でありたい」とありますね。
チャレンジし続けたいということですね。事実、当社がネット関連の制作を手がけるようになったきっかけは、私が趣味で始めたHPでした。やりながら、「これなら仕事にできるかも」という感触を掴み、何を用意し、何を整備するかのビジョンが見えるようになりました。
「遊びの感覚」みたいなものなのでしょうか。日常の業務以外のところに、いかに刺激やきっかけを見出すかということですね。
とても大切なことだと思います。グラスルーツという会社は、常にそういう余地や余力がある会社でありたいと思います。
社員のみなさんにも、そういう意識を奨励しているんですね。
はい。企画というものは、会議室ではなく、ランチの席のよもやま話の中から出てくるものだと思います。稟議書を動かすような大上段のやり方は、少なくとも当社のやり方ではありません。「うまくいかなかったら、どうしよう」と思わずに、ダメでもともとでやれる会社は強い。誰かが発言し、誰かがそれに乗っていく。そうやって、どんどん社員から企画が生まれてくるのが理想です。
なるほど、その辺が御社の活気の源になっているようですね。
そういうことができる会社なんだという意識は、全社員で共有できています。一制作者として考えると、けっこう羨ましい。いい会社だと思いますよ(笑)。
のびのびした社風が目に浮かびます。
もちろん、のびのびし過ぎて野放しになってはいけない。プロとしての自覚も持った上での、バランスが大切ですね。
形、型で教えてしまうと、応用力が弱くなりますね。ですから、たとえば「企画書の書き方」のような本は絶対に読むなと指導しています。
今年だけでも、社員数が6人増えています。社員教育にも力を注ぐ必要がありそうですね。
スタッフをバランスよく育てるために気をつけているのは、「形で教えない」ということです。自分で考えることを重視します。考えて判断させる。そこから応用力が生まれると思う。形、型で教えてしまうと、応用力が弱くなりますね。ですから、たとえば「企画書の書き方」のような本は絶対に読むなと指導しています。形だけで書けたような錯覚に陥るのは、ほんとうに成長を妨げます。
今後のビジョンは?
大きなところで言えば、受託ではない案件に進出したいですね。
自社媒体というような意味ですか?
それも含まれます。現在、ある社員から「自主事業」の企画が上がって来ています。うまくいくかどうかは別として、ぜひ実現させたい。もちろんリスクは自分で背負うわけですら、収益の構想などを慎重にくみ上げる必要があります。
やはり、クライアントのある案件よりも、やりがいありそうですよね。
そうですね。もちろん受託案件も、アプローチを変えればもっと面白くなる。たとえばこちらから発案し、頼まれてもいないのに提案するような、言うなればプロデュース的な活動をしていきたい。そういうことも視野に入れています。
取材日:2006年8月24日
株式会社グラスルーツ
- 代表取締役:小野真由美
- 業務内容:
- インターネット関連コンテンツの制作
- 会社案内・広報誌・社史・宣伝ツール等、各種企業刊行物の編集・制作
- プロモーション企画の立案および実施
- その他各種マーケティング活動に関する企画・立案・実施・制作
- 設立:1984年11月
- 資本金:1000万円
- 所在地:〒107-0062 東京都港区南青山6-11-1 スリーエフ南青山ビル6F
- TEL:03-5774-5561
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