WEB・モバイル2006.08.10

有能な女性へのサポートは 日本経済や日本社会への貢献にもなるはず

東京
有限会社フォーウーマン 代表取締役 金澤悦子氏

image

働く女性を支援するコミュニティサイト「はぴきゃり」を知っているか?残念ながら文字通りの女性専用サイトなので、男性諸君にはそれを体感、実感する術はないのだが、主にブログを通して働く女性の悩みや成功体験を共有し、応援しあおうというコンセプト。今までありそうでなかったユニークかつ意欲的な活動を展開しているサイトだ。有限会社フォーウーマンは、その企画と運営をしている会社。代表取締役の金澤悦子さんは、みずからも「編集長カナザワの『日ハマタ昇ル』」というブログを公開しつつ、「はぴきゃり」を通じて多くの女性が「出会う」「つながる」「成長する」ことを応援している。 ※この秋、金澤さんの書いた本『ハッピーキャリアのつくり方』(ダイヤモンド社刊)が発売されます。

 

ある日体調を崩して、仕事を休まざるを得なくなった。 休んで、スローダウンしてみると、まわりに同じような悩みを抱えた女性がたくさんいることがわかったんです。

会社設立の動機は?

働く女性は孤立していて、いろんな悩みを抱え込んで苦しんでいる。一番の問題は、そういう女性が日本中に点在していることです。日本のどこかに同じ悩みを持った女性がいるとわかる、そういう人とつながる。つまり、点が線になるだけで悩みの多くは解消される。そう考えてコミュニティサイト「はぴきゃり」の設立を思い立ちました。有限会社フォーウーマンを2005年1月に発足し、同年10月に「はぴきゃり」をスタートさせました。

「働く女性の悩み」は、金澤さんの実体験でもある?

そうですね。私は株式会社リクルート、株式会社キャリアデザインセンターで転職情報誌やキャリアアップマガジンの営業を担当していました。ライフスタイルは、まさに仕事一辺倒。突っ走ってました。もちろん、面白くて仕方なくてそうなったのですが、数字を達成することの達成感に熱中して、熱中しすぎて、ある日体調を崩しました。営業先で言葉が出なくなってしまい、仕事を休まざるを得なくなった。休んで、スローダウンしてみると、まわりに同じような悩みを抱えた女性がたくさんいることがわかったんです。

「働く女性の悩み」とは?

私の場合は、20代を突っ走って、30代にさしかかったときにそれ以降のキャリアが見えなくなった。見通す材料が見つけられなかったんですね。気づくと立場的にはたくさんの部下や後輩を抱えていて、相談する相手は社長くらいしかいない。その社長は男性で、私の抱えている悩みや不安を共有してもらうことは難しい。キャリアの先を行く女性に相談してみたいけど、そういう人を見つけるのはすごく難しいし、そういう方が側にいてくれるという幸運はそうそうころがっているものではありません。そして、「働く女性同士をもっとつなげる仕組みはないものか」と思うようになりました。

そして、「はぴきゃり」のアイデアが浮かんだ?

いえ、在籍していた株式会社キャリアデザインセンターで、女性向けのキャリア転職マガジンの提案をしました。それが、「ウーマンtype」です。

「ウーマンtype」は大成功を納めた雑誌だと聞いています。その企画者であり、初代編集長が金澤さんだったんですね。

はい、そうです。確信はありましたが、実際はそれを上回る実績が残せました。社内的には「そんなもの出しても売れないよ」という疑問の声もありましたが、創刊と同時にかなりの反響をいただき、軌道に乗りました。

「ウーマン type 」の成功が、「はぴきゃり」の立ち上げへと続いているわけですね。

そういうことになりますね。

年収は下がりました。でも、全然ストレスがなくて楽しいですよ。 本当にやりたいことをやりたいようにやっていますからね。

「はぴきゃり」は、独立し、ご自身の会社を設立してスタートさせましね。

元来、独立志向を持った人間でしたから。「働く女性を支援する」というテーマを見つけて以降は、タイミングを見計らっていたという感じですね。

「ウーマン type 」の成功を置いてくるのは、もったいなくはない?

そういう感覚は、ないですよ。むしろ、軌道に乗り、後輩たちに手渡すことができると確信したので退社が決断できました。

立ち上げからまだ1年経っていませんが、「はぴきゃり」は現在どれくらいの規模になっていますか?

ブロガーが120人くらい。ページビューが約20万ページ/月。

収益構造は?

「はぴきゃり」からの収益は、まだ微々たるものです。「ウーマンtype 」の創刊経験を活かして、女性向けのwebサイトや紙媒体の企画、編集を請け負っています。

取材風景

当初は編集プロダクションとして会社を支えながら、サイトを維持する。かなり肝のすわったやり方ですね。

そうですね。それくらいの覚悟は持って立ち上げたつもりです。もちろん「はぴきゃり」での収益のあり方もいろいろ考えています。たとえば、秋を目標にブログを使ったキャリアカウンセリングを始める予定になっています。これは有料です。軌道に乗れば、収益構造はかなり良くなると思います。

バナーをたくさん入れたり、有料記事を掲載したりすれば、もっと直裁的に収益があがりますよね。

それは、まったく考えていませんでした。私がずっと身を置いていた情報誌の世界の広告モデルは、もう十分に経験しましたから(笑)。

広告モデルへのアンチテーゼもある?

反面教師にはしています。広告料をいただく情報作りは、大きく扱う情報イコール良い情報とは限りませんからね。ビジネスだけを考えたら法人向けに営業すれば成功するのはわかっていますが、今のところそれをするつもりはありません。

えー、率直な感想を述べさせてもらいますが、ということは、今は会社、儲かってませんね?

まだ目標値には達していません。でも、今の動きが必ず成功を引き寄せると確信しています。3年は我慢しようと心に決めています。

労働力不足が叫ばれる日本において、 有能な女性が職場で活き活きとできることへのサポートは、日本経済や日本社会への貢献にもなるはず。

120人いるブロガーは、金澤さんにとっては仲間?

仲間とはちょっと違うかもしれない。ブログというのは、それぞれが独立したコンテンツ。そのコンテンツのクオリティが生命線ですから、もしかしたら、私にとっては有能な書き手――タレントさんをたくさん抱えている感覚に近いのかもしれない。ブログの書き込みは毎日何10もあがってきます。自分でやっていてこんなことを言うのもなんですが、凄いことになっているなとは感じています。

ブロガーは審査のうえで採用?

審査しています。プロフィールとテーマをチェックして、最低限「はぴきゃり」のコンセプトに合う人、つまり「仕事」に関して書いてくれる方を採用しています。

ブロガーは今後も増える?

人数に制限を設けるつもりはありませんが、クオリティの維持にだけは注意を払っています。

「はぴきゃり」の発展のビジョンは?

まず、ブログの使い勝手は日々良くして行きます。それ以外は「ハッピーキャリア」という軸に沿ったことなら、あらゆることを吸収してくことになるはずです。

フォーウーマンという会社の今後は?

「働く女性の支援」を軸に運営していきます。今は、その最適ツールが「はぴきゃり」。それ以外にも有効なツールがあるとわかったら、そちらに進出することもあり得ます。

では、最後に、今後の意気込みを聞かせてください。

「働く女性が増えた」とはいわれますが、総合職に占める女性の割合はまだ10%程度です。そんな中で、頑張っている女性ほど孤立して、悩み苦しんでいる。そういう人たちがつながることで、つながることだけで救われたり、元気が出たりすること。私たちが「はぴきゃり」で目指しているのは、そんんな形の「働く女性への支援」です。労働力不足が叫ばれる日本において、有能な女性が職場で活き活きとできることへのサポートは、日本経済や日本社会への貢献にもなるはず。手前味噌に聞こえるかもしれませんが、それくらいの使命感を持ってこの事業を育てています。たくさんの女性の賛同と、たくさんの方々の支援がいただければ嬉しいですね。

取材日:2006年8月9日

有限会社フォーウーマン

  • 代表取締役:金澤悦子
  • 業務内容:働く女性のためのコミュニティサイト「はぴきゃり」の運営
  • 設立:2005年1月
  • 資本金:500万円
  • 本社所在地:〒154-0004 東京都世田谷区太子堂3-30-30
  • TEL:03-3410-1513
  • FAX:03-3410-1552
  • E-mail:4w@happycareer.jp
  • URL:http://happycareer.jp/
続きを読む
TOP