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WEB・モバイル2006.04.20

サービスってアイデアごとに おさまると気持ちがいい場所ってある ここだから輝くっていう場所がある

東京
アイランド株式会社 代表取締役 粟飯原理咲氏
おとりよせネット

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レシピブログ

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粟飯原理咲さんはWEBマーケティング界のカリスマである。大手通信会社勤務中に、メーリングリスト「LIFE」やWEBサイト「OL美食特捜隊」を成功させ大きな注目を浴びた。日経ウーマン誌選出「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」2000年度ネット部門第1位にも輝いている。そんな粟飯原さんが2003年にスタートさせた会社がアイランド。もちろんWEBサイトを企画、運営する会社です。インターネット上に次々に人気サイトを生み出す時代の寵児から秘訣の一端でも引き出そうと、少々意気込んでのインタビューでした。

サービスづくりのキーワードは「適想適所」。

名刺には、「WEBコミュニケーションをデザインする」とありますね。

そうですね、けっこう大きいことを書いてしまっています(笑)。生活者側から見て、こんなサービスがあったらワクワクするとか、楽しいといったことをWEB上で表現することを目標にしています。たとえば、「おとりよせネット」というサイトを運営しているんですが、生産者の方と生活者の方が、こうふうに出逢ったら素敵だよね……というコンセプトでつくりました。マッチングとサービス創造をめざしている会社とも言えます。

粟飯原理咲氏

アイデアがあれば個人でできないことはなかったと思うのですが、あえて会社を設立した理由は?

サービスをつくるときに、私のキーワードになっているのが「適想適所」。適材適所をもじって勝手につくった造語です。サービスってアイデアごとに、おさまると気持ちがいい場所ってある。ここだから輝くっていう場所があると思っています。 その意味では、必ずしもすべてのサービスを会社で立ち上げたほうがいいとは考えていません。「OL美食特捜隊」やくちコミ読書カフェ「Hon-Cafe」といったサイトでのサービスは、むしろプライベートでやったほうが生き生きするんじゃないかと考え、会社ではやっていません。つまり、その逆で、会社で提供したほうがしっくりくるサービス、たとえば、会社が提供しているという信頼感が必要なサービスもあるわけで、そのために会社が必要でした。

成功の要因は、やはりマーケティングの手法が卓越していたから?

自分がこういうサービスがあったらいいな、と思うサービスを突き詰めること。もうひとつ、企業の側が何を求めているのかマーケティングの視点で考えて、ビジネスとして吐き出せる場所をつくる。その2つを共存させられたことが大きかったと思います。

サービスは全て女性向け。それは自分の興味からスタートしているから?

それもあるかもしれませんが、インターネットらしい口コミというアプローチをしようとすると女性をターゲットにしたほうがやりやすい、共感市場が形成しやすいんです。ですから、今のところ、男性向けのサイトを運営しようとは考えていません。多くの男性は、等身大の意見よりも、プロの意見に耳を傾ける傾向にあるような気がして(笑)。でも、男性のスタッフは大いに歓迎です!

不安のあまり、1年分の広告を確保してスタートした 「おとりよせネット」。

サイトイメージ

サイトができあがるまでのプロセスを教えてください。

今、ちょうど「朝時間」というサービスを立ち上げようとしているんですが、たとえば、この場合には、最初にみんなが朝をどんなふうに過ごしているのかといった現状分析から始めました。それを1ヵ月。それから、どんな朝がすごせたら快適なのか、どんなサービスがあったら楽しいんだろうといったブレストをする期間が1ヵ月ほどありました。ちなみに、私にとってこの時期がいちばん楽しい時期です。そのあとは、現実に戻って2ヵ月間、予算を前提にできることの絞込みをし、その後、画面の構成固め、イメージワードの決定、デザインの決定、デザインを揉んでいる間にコンテンツを固めていく……という流れになります。サイトのアイデア自体は、1年以上前から温めていたものです。

かなり長期にわたる準備が必要ですね。事業を立ち上げたとき、運転資金はどうされたのでしょう。

最初に立ち上げたのが「おとりよせネット」だったのですが、もちろんうまくいくかどうかは未知数です。で、あまりにも不安で、不安すぎたので、サービスの立ち上げ前に広告営業をして、1年分の運営費を確保しました。それまで、営業経験はゼロ。自分でもよくやったと思います。

実績がないのに、よく営業が成立しましたね。

WEBの仕事は長いですし、自分たちが、お取り寄せをすごくやっていたので、だいたいページビューがどの程度いくかは、予想がついたのですね。その確信を頼りに、自分たちがいつも買い物をしているショップのオーナーにアプローチをしました。多くの方々の応援があったればこそです。

サイトデザインはすべてアウトソーシング。 プロデューサー視点を持つデザイナーが理想的。

サイトのデザインは、内部で?

実は、サイトごとにイメージを固め、そのあとに、そのイメージにぴったり合いそうな方を、行き当たりばったりで探している(笑)。アウトソーシングを基本にしています。

デザイナーに求めることは?

デザイナーさん自身がユーザー視点を持っていっらっしゃる方であるという条件を大事にしています。もうひとつ、できる限り自分のテイストを持っている方を探しています。デザイナーでありながら、プロデューサーの視点がある方であれば、さらにありがたいですね。

もともとご実家がデザイン会社だそうですね。

取材風景

実は、アイランドという社名は、父がやっていたデザイン会社の名前をそのままもらったものです。

そうした家庭環境が今のビジネスに大きく影響している?

かなりしていますね。父は特許マニアで、常に新しいものを生み出そうとしている人でした。父が家族を集めて、ネーミング案のディスカッションをするような家庭でした(笑)。

会社のステージを上げようとしたときが転機だと思っています。

会社を拡大していく方針はありますか?

拡大するという発想は今のところ持っていません。つくりたいサービスをつくれればいいと始めた会社なので、去年まで売上目標さえなかったのです(笑)。自分たちがつくりたいサービスを成立させるためには、このくらい収入があればできるかな……といった感覚で進んできているんですね。創業3年目に入ってようやく、月間の売上予測を掲げるようになりました。 5人という少ない社員の数で、面白いことをやって、それを収益化するという点においては順調にきているのでしょう。もっと大きなプロジェクトを実現したいと思うようになったときが会社の転機になるのだと自覚しています。

今までで挫折感は一度もない?

ここまで、順調にきています。しかし、それは裏返せば冒険をしていないということだと思うんですね。人を増やして事業を拡大しようとか、強力に営業してサービスの売上を延ばそうとか、会社として、ステージを上げるために本当は必要だったことをしていないという側面があるかもしれない。ただ、楽観的に、このまま順調にいくとも思っていません。先ほども申し上げましたが、会社としてステージを上げていこうとするときに課題が山ほど出てくるんじゃないかという予感がしています。

WEB以外にもビジネスを広げていく計画はあるのでしょうか。

WEBだけと決めているわけではありません。たとえば、「Hon-Cafe」と「おとりよせネット」の副産物として、将来的には、本が置いてあって、美味しいお取り寄せのお菓子を提供してくれるようなカフェをやってみたい……といった夢はあります。

今後のビジョンを教えてください。

これからスタッフのライフステージが上がってくると、その中で結婚に関するサービスをやりたい、子育てに関するサービスやりたいなど、いろいろなアイデアが出てくるんではないかと思っています。その時々で、こういうサービスやりたいと思い立ったときに、ちゃんと実現できるプロの仲間がいるような環境を、きちんとつくっていきたいですね。

取材活動をしているとわかってくるものだけど、本当に凄い人ほど、実際に会ってみると、ひと目でわかる「凄み」なんてまったく発していません。粟飯原さんも事前の情報がなかったら、“おとなしいけどコロコロよく笑う女の子”以上の印象はなかったかもしれない。幸いにちゃんとしたビジネス上の質問を用意していたから、それにビシっとした答えが返ってきて「ああ、やっぱり凄い人なのだ」と実感できたという次第です。とにかくまあ、楽しそうです。そしてその、楽しそうなアイデアのいちいちが、「なるほどお」と頷かされる着想や方法論に裏打ちされている。そんな方がひっぱる会社の、“会社のステージが上がるとき”は、すぐにやってくるのだろうと思います。

取材日:2006年4月5日

アイランド株式会社

    • 代表取締役:粟飯原理咲
    • 業務内容:WEBを活用したコミュニティメディアのデザイン・企業-生活者間のWEBコミュニケーション設計
    • 本社所在地:〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿3-36-13-6F
    • TEL:03-5488-7588(代表)
    • FAX:03-5488-0024
    • E-mail:info@ai-land.co.jp
    • URL:http://www.ai-land.co.jp/
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