見た人が「おお!」と 驚くようなものをつくって 発表するのは楽しい
- Vol.76
- マッドバーバリアンズ(MAD BARBARIANS) サイトウカツヤ(KatsuyaSaito)氏、サイトウマスミ(MasumiSaito)氏
あの時代、大阪ではグラフィックデザイナーもイラストレーターも、どんどんストリートに出ていました。
「マッドバーバリアンズ」という呼称は、いつごろから?
カツヤ)それ以前から、バンド名みたいでかっこいいからということでボチボチ使っていましたが、正式に使ったのは2000年だと思います。販売するためのTシャツをつくった時に、タグに使った。
マスミ)そうそう、私たちの活動自体も、あのTシャツづくりきっかけに、どんどん派生していったね。
結婚はいつごろ?
マスミ)東京に拠点を移した年ですから、2003年ということになります。大阪の友人たちに送別会も兼ねたお祝いをしてもらい、「行ってきます」という感じで大阪を後にしました。
お付き合いはそれ以前から?
マスミ)私はグラフィックデザイナーで彼はイラストレーターですが、1990年代後半に同じ事務所に働いていた時期があり、それ以来の付き合いです。 その後、「お互いにもっと好きなことのできる環境を」ということで会社を辞め、私は別のデザイン事務所に、彼はフリーにと前進しました。
おふたりの創作は、かなりストリートカルチャーの影響が見えますね。
マスミ)といいますか、そのものではないでしょうか(笑)。あの時代、大阪ではグラフィックデザイナーもイラストレーターも、音楽とまったく変わらない感覚でどんどんストリートに出ていましたから。
カツヤ)心斎橋のアーケードにアーティストたちがずらっと作品を並べていて、熱気ありましたね。
おふたりの「好きなこと」は、そういうストリートでの活動を通して形になっていったんですね。
マスミ)Tシャツが評判になったので次はポストカード、ステッカーというかたちで発表形態を広げていったんですが、それが大御所グラフィックデザイナー松井桂三さんの目にとまり、個展開催のお誘いをいただきました。
カツヤ)そうそう、あの個展が立体をつくるきっかけにもなった。
フィギュアで数々のヒット作を生んだマッドバーバリアンズの原点ですね。
カツヤ)あるパーティで個展の話をしたら、ある方が「ギャラリー展示するなら、立体ものがあった方がいいんじゃない」とアドバイスしてくださった。ちょっと考えると、僕の手持ちのキャラクターは・・・・「うん、簡単に立体化できる」・・・と(笑)、なりました。
マスミ)あのアドバイスがなかったら、フィギュアやキャラクターのビジネスへの派生は、なかったかもしれませんね。
時間はそれなりにかかっているようですが、プロセスとしてはかなりトントン拍子にキャラクタービジネスにたどりついているように見えます。
マスミ)まず、私たちはふたりともグッズづくりは大好きでしたし、何より、ストリート育ちです。ストリートでは「売る」がイコール、コミュニケーションなんです。だからグッズとして成立させる、販売するという展開にはまったく抵抗がなかったんです。
聞くところによると、マッドバーバリアンズのフィギュアはまず、日本ではなく海外で火がついたとか。あの『GAS CURRY & SPICE』ですね。
マスミ)最初に発掘してくれたのが、香港のフィギュアメーカーでした。その会社もまだ無名で、フィギュアビジネスそのものを一緒につくっていく感覚でお付き合いできたのが楽しかったですね。
それは何年ごろのこと?
カツヤ)声がかかったのが2002年、発売されたのが2004年です。
ということは、『GAS CURRY & SPICE』のプロジェクトと前後して東京に進出したんですね。
マスミ)そうです。東京に出て頑張ってみようというきっかけは、『GUS CURRY & SPICE』がくれたと言っていいです。
「すごくパンクな感じのヤツかなと思っていたけど、ぜんぜん違う!」と言われます。
さて、マッドバーバリアンズの基本コンセプトは「MAD、POP、ROCK、CUTE、おバカ」ですね。
カツヤ)かっこよく見えて、内容はちょっとおバカみたいなのをスタイルにしています。関西人ですから、どこかにお笑いが入っていないと気が済まない(笑)。
マスミ)お笑いのツボは、初めて会った時から似てましたね。
デザインやイラストで意気投合する部分もあったんでしょうね。
マスミ)いや(笑)、それはあまり感じることはなく、むしろ音楽で趣味が一致していましたね。
ところで、おふたりにはとても共通する部分を感じるんです。それは、けっこう真面目で前向きなこと(笑)。
マスミ)けっこう、指摘されます(笑)。
カツヤ)海外の方とお会いすると、「作風がこうだから、耳や舌にピアスがジャラジャラ入ってて、すごくパンクな感じのヤツかなと思っていたけど、ぜんぜん違う!」と言われますね。
自分のオリジナリティとして取り込んで、世の中にないなというものをつくっていくことが大事
作風からの単純な連想では、この人物像はわかりませんよね。ただ、実際にお話しすると、よくわかる。Tシャツ販売や個展のようなきっかけを、ちゃんとチャンスに代えているのは偶然じゃなくて、しっかりつくったり、準備したり、すべき時に交渉したりしているからですものね。
マスミ)確かに私たちは、局面局面でちゃんと考えてやっています。けっこう前向きなのも、その通りだと思います(笑)。ホームページ開設は今から10年くらい前になりますが、業界関係者に見てもらうと考えると、少しでもちゃっちい部分があったら見限られる。そう考えてかなりお金と時間をかけて、当時としては限界に近いほどフラッシュを駆使したものをつくりました。個展の招待DMなども、必要と判断すれば単価100円以上になる特殊印刷も採用しました。
カツヤ)とにかく、「意外と真面目だね」は、かなり言われましたね(笑)。
そういう地道な努力や姿勢って、どこかで見を結ぶんですよね。
マスミ)そう信じたいですね。
カツヤ)僕たちの活動は、世界的な「デザイナーズフィギュアブーム」に乗れたのが幸運だったと思います。
ここまでの活動は、楽しくやって来られた?
カツヤ)そう思います。
マスミ)いいサイクルで、新しいチャレンジをするチャンスもいただけていますしね。最近も、テレビで話題になった天才ギター少女のCDジャケットのプロデュースや、ハローキティとのコラボレーションや、考えただけでワクワクするようなプロジェクトに参加できています。
では最後に、読者であるクリエイターの皆さんにエールを送ってください。
マスミ)人の真似じゃなくて、自分の好きなこと突き詰めて、それを自分のオリジナリティとして取り込んで、世の中にないなというものをつくっていくことが大事ではないでしょうか。見た人が「おお!」と驚くようなものをつくって、発表するのは楽しいですよね。
カツヤ)自分の好きなもの、興味のあること究めてほしいですね。それは、自分の中での「究め」でぜんぜんいいと思うんです。そういう頑張りが、たぶん、いつか道を拓いていくんだと思います。
2011年08月24日
Profile of マッドバーバリアンズ
サイトウカツヤさんとサイトウマスミさんによる、イラストデザインユニット。2000年結成。「MAD、POP、ROCK、CUTE、おバカ」がコンセプト。04年発売のオリジナルフィギュア『GUS CURRY & SPICE』で一躍世界的に注目されるようになった。キャラクター・広告・デザイン・フィギュア・グッズ・ウェア・CDジャケットに至まで幅広く活動中!