個人のアーティスト活動に加え コラボにも力を入れていきたい
- Vol.98
- アーティスト 高橋宣光(Senko Takahashi)氏
美大卒業後にニューヨークへ 画風の違う絵を描けることが強みに
高橋さんは、今に至るまでにどのようなキャリアを積んできたのですか?
小さい頃から絵を描くことが好きで、大学は美大に進みました。美大を卒業して、すぐにニューヨークに行ったんですよ。映画のカメラマンをやっていた兄の知り合いが経営している会社で、デザイナーとして働いていました。もちろん最初はアシスタントからスタートして、ありとあらゆる雑用をしましたね。ニューヨークの会社なのですが、古き良き日本の体質が残っている会社で、朝は先輩が出社する30分前には来て、夜は先輩が帰るまで帰れない生活でした。1日18時間くらい働いていたのではないでしょうか。
なぜいきなりニューヨークへ?
学生時代から女性の絵を中心に、いろいろなテイストの絵を自由に描いていたのですが、日本では「画風を決めないと大成しない」とか「女性の絵を描いても売れない」とか、いろいろ言われまして、日本はちょっと窮屈だな、という反発心みたいなものがありました。ニューヨークに行って絵を見せたら「これは全部お前が描いたのか?すごい!」と、画風の違う絵を描けることを評価してもらえましたからね。
ニューヨークでも仕事以外に絵は描いていたのですか?
そうですね、学生の頃からですが、仏像の絵をよく描いていました。ニューヨークの日本料理屋さんに飾ってもらったりしましたよ。絵を売ってほしい!と言われることもありましたが、その当時は原画を手放したくなかったので売りませんでした。
日本に帰ってきたのはいつですか?
4年後ですね。最初は日本に戻ってくるつもりはなかったのですが、いろいろありまして(笑)。
小説のキャラクターをデザイン 15巻続くヒット作に
日本に帰ってきてからは、ずっとフリーで活動されているんですか?
ニューヨークでそれなりに人脈もできて、日本でも順調に仕事がありましたので、プロジェクト単位で組織に所属することはありましたが、基本的にはずっとフリーです。多かった仕事は、CM制作会社から発注される絵コンテですね!本当にたくさん描きましたよ。CMやゲームのキャラクターデザインの仕事も多かったですね。いろいろなテイストの絵が出せるので、重宝されたのかもしれません。
商業デザインの仕事をしながらも、アートとしての絵は描いていたのでしょうか?
絵はずっと描いてました。特に美人画を多く描いていて、美人画で二科展に10年連続で入選しました。
高橋さんの描く女性は、独特の艶っぽさがありますね。
私の父はカメラマンで、母は女優だったのですが、実は母にちょっと似ていると言われるんですよ(笑)。女性の剣豪が登場する小説のキャラクターデザインを手がけた時は、表紙の女性を見て「ジャケ買い」する人が多かったようで、最初は単発の予定が15巻も続くシリーズ物になりました。
デジタルはすべて独学 自分の表現ができればいい
商業デザインの仕事を多くされていますが、すべて手描きで描いているんですか?
最初はもちろんすべて手描きでしたが、今では量が必要な時は、ほぼデジタルで描いていますね。ディズニーは手描きが多いでしょうか。デジタルと手描きが混在することも多いです。デジタルで初めて描いたのは2002年で遅かったんですよ。それまでまったくのアナログ人間だったのが、必要に迫られてMacを買ってイラストレーターとフォトショップを入れて、詳しい人につないでもらって、さあ頑張ろう!という状態でスタートしました。
まさにイチからのスタートですね(笑)。
マニュアル本見てもさっぱりわからないし、すべて独学でやってきました。色の重ね方も手作業と同じような感覚で作っていますね。きちんと学んだ人から見れば「どうしてこんな使い方をしているんだろう」と思われるかもしれませんが、自分の表現ができれば良いので(笑)。
肩書きはボーダーレスの時代に コラボレーションで話題を提供したい
現在は多方面で活躍されていますが、肩書きとしては?
昔はアーティストとイラストレーターにはっきりした線引きがありましたが、今はふたつの職業がボーダーレスになって、差がないと思っています。また絵に理屈を付けるのは好きではないので、「現代アート」として見られるのにも抵抗があり、ただ絵を見て感じ取ってもらえればいい、と思っています。今後も個人としての絵は描き続けていきますが、ディズニーのようなコラボレーションの機会があれば積極的に取り組んで、世に話題を提供していきたいですね。
高橋さんの描いた原画を買える機会があるそうですね。
1月にお台場でディズニー公認アーティストの描いたアートを集めた展示会が開催されます。そこで原画や版画を販売する予定です。自分から個展を開くことはないので、ちょっと緊張しています(笑)。
量を多く描く時期は絶対に必要 絵は経歴や厚みで見せるもの
高橋さんのように絵を描いていきたい若い人へアドバイスをお願いします。
まずは枚数を多く描くのが大前提ですね。量を描く時期は絶対に必要です。絵のベースがないのに崩したり、自分ならではの「はずし」を無理にすると、すぐに見破られますから。絵は、それまでの経歴や努力や厚みで見せるものだと思います。抽象画は描ける人が最終的にたどり着く場ですよ。
今も高橋さんは多く描いているのですか?
構想を練るときには、ひたすら描きますね。考えながらとにかく描いていると、インスピレーションが産まれます。そして、描いたら人に見せて、多くの人の評価を聞くことが大切です。もちろん反発することもありますが、自分では気づいていない部分を指摘されることもありますから。評価されて、自分の絵を見直して次に活かして進化していく。今でもその繰り返しですよ(笑)。
取材日:2013年11月29日 ライター:植松
Profile of 高橋宣光(Senko Takahashi)
東京都生まれ。17才で池袋西武百貨店にて2人展開催。18才の時、吉祥寺で個展。 多摩美術大学卒業後、1987年にニューヨーク・マンハッタンに渡米。グラフィックデザイナーとして広告のデザイン/イラストを手がける。 1990年にソ-ホ-のベネディッティーギャラリーで作品展示・発表。その後、帰国してフリーランスのアーティストとして活動。 現代美術家・故池田満寿夫氏、アートディレクターの故鈴木八朗氏、テリー伊藤氏他、多数の著名人から評価をされている。 ◆HP:http://www6.plala.or.jp/SENKO/TOP/top.html
■ディズニー Art Expo 2014 ディズニーアーティスト達の夢の共演! 夢と冒険のディズニー・アートエンターテインメントを一堂に!
出展アーティスト: デビッド・ウィラードソン、ピーター・エレンショー、シム・シメール、ドナト・ジャンコーラ、デビッド・タトウィラー、リネ・タトウィラー、ガイ・ヴァシロヴィッチ、ステファン・マーチンエアー、メリッサ・スーバー、ジェニー・チャン、クリスチャン・ラッセン、高橋宣光(順不同)
・開催期間:2014年01月11日~2014年01月13日 ・開催時間:11時00分~19時00分 ・会場:会場ホテル グランパシフィック LE DAIBA B1F パレロワイヤル
★2014年01月13日(月・祝):ディズニー公認アーティスト高橋宣光のライブペインティング開催!★