1対1のインタビューで”人”に迫る 雑誌「経済界」のビジョンとは
- Vol.100
- 株式会社経済界 代表取締役社長 佐藤有美(Yumi Sato)氏
創刊50周年の「経済界」 時代に合わせて登場する経営者も変化
会社としての「経済界」の事業構造を教えてください。
雑誌「経済界」の発行と広告収入、さらに書籍の出版、「経済界倶楽部」の運営が主な事業です。「経済界倶楽部」は会員制異業種交流会の先駆け的存在で、35年以上の歴史があり、現在は会員1000社以上の規模になっています。
やはり雑誌「経済界」が軸となる事業なのでしょうか?
はい、弊社の軸となり、基幹事業となっているのは雑誌です。創刊50周年で、名のある経営者の方にはほとんど登場してもらっているのではないでしょうか。雑誌「経済界」は経営者の「人」にフォーカスした、インタビュー中心の内容です。雑誌を基点にして築いてきた経営者ネットワークは、弊社の大切な資産です。
経営者とネットワークを築き続けることは難しくないのでしょうか?例えば、昭和の時代と現代では、経営者のバックグラウンドや人物像が変わってきていると思います。
確かに、時代によって注目される業種は変わってきます。近年はITなどの情報ビジネスの分野が成長し、それによって注目される経営者も変わってきました。時代に合わせてフォーカスすべき「人」をしっかりと見極め、取材を通してお付き合いをさせていただいてます。例えば、ソフトバンクの孫正義社長は、創業直後の無名時代から父(創業者の佐藤正忠氏)が着目していて、「面白い男がいるよ」とよく言っていました。孫社長がまだ苦しい時代に「経済界」で取りあげて記事にしていたことをご本人も「励みになりました」と感謝していたそうです。
創業者の父から突然の指名 編集者から社長へ
創業者の父である佐藤正忠氏から社長を引き継がれたのはいつですか?
2001年です。社長に就任する前は、一編集者として働いていました。
編集者としては、どのような仕事をしていたのですか?
当時は「経済界」以外の雑誌も手がけていて、中高年向けの生活情報誌などを担当していました。社長の娘でしたから、面倒な存在だったかもしれませんが(笑)、先輩の女性編集者に鍛えられたり、怒られたり怒ったりしながら、とにかく楽しく仕事をしていましたね。編集の仕事が大好きで、やり甲斐を感じていました。
編集者からなぜいきなり社長に?
どこの会社でも社員は会社を良くしたいと思っていますし、良くしたいからこそ「不満がひとつもない」社員はいないと思うのですが、私自身も一編集者として、会社に不満がありました(笑)。そんな時に担当していた雑誌が休刊となり、編集の仕事ができないなら「こんな会社には追いて行けない」とばかりに、私も会社を辞めて編集者として独立しようと事務所まで準備していたんです。ところが、ある日急に父に呼び出されました。父は本当にマイペースで人の話を聞かない人だったのですが、その時だけは「うちの会社どう思う?」と聞かれ、私の話をじっと聞いてくれました。
「この会社どう思う?」と聞かれて、どう答えたのですか?
当時は出版不況で雑誌や本が売れず、経営的に岐路に立っていたんですね。一編集者とはいえ娘ですから遠慮がなく、「やばいでしょ、こんな会社。経営責任があるでしょ!」と言いたい放題でした(笑)。それからしばらくして、「お前が社長をやれ」と言われて、驚きましたね。それまでは編集のことだけで頭がいっぱいで、経営のことをほとんど知りませんでしたから。
雑誌だけではないビジネスを 創業50周年を機にWebをリニューアル
出版ビジネスが大きく変わっていく中での社長就任だったのですね。
出版ビジネスを取り巻く環境が大きく変わり、雑誌の販売収入だけでは経営的に成り立ちません。しかし、雑誌は弊社の「顔」です。爆発的に販売部数が伸びなくても、魅力的なものを作っていかなくてはならないと思っています。本屋にいけば、雑誌「経済界」があり、買わないまでも面白そうだなと手に取ってくれて、軽くパラパラとめくってもらえるようなものを作ることが、弊社の最大の広告宣伝です。収入減は他のビジネスで賄っていけばいいのです。
他のビジネスとは、具体的には?
まずは出版ですね。出版は力のある著者がいれば、ヒットが見込めます。幸い、弊社は魅力的な経営者とのネットワークがあります。例えば、SBIホールディングスの北尾吉孝社長のブログをまとめた本がヒットしました。ビジネス本に限らず、暮らしや子育ての生活情報系の書籍や小説、新書も出しています。また、今後はWebに力を入れていきます。
例えば、どのようなWebの展開を考えているのですか?
現在も電子書籍の配信プラットフォームサイトのhontoで経済界の電子書籍版を販売していますが、春にはオンラインメディアの立ち上げを予定しています。オープン型のニュースサイトとは異なり、奥深く読み応えのある解説記事を会員限定で提供していきます。本誌の主要読者である政財官界の幹部・首脳に加え、次世代経営者層やスタートアップして間もない経営者層にもアプローチしていきたいと考えています。さらに、スマートフォン版のサイトの同時オープンなど、今後の経済界の新たなチャレンジにご期待頂きたいですね。
1対1のインタビュー中心の方針は不変 人と人を繋ぐことで、日本経済を元気に
「顔」である雑誌「経済界」の今後の編集方針は?
これからも経営者の人に迫っていく方針は変わりません。弊社では「金の卵発掘プロジェクト」を開催していて、「これから」の若手経営者を取り上げたいですし、現役で輝いている経営者、さらにベテランの経営者と、バランス良く紹介していきます。やはり経営者はお互いのことを知りたいんですよね。今はWebで検索すれば、名のある経営者のキャリアや考え方を知ることができますが、1対1でインタビューすると、Webや記者会見では知ることができない「人」や「ビジョン」が見えてきます。
1対1のパワーを大切にしていくのですね。
実は、昨年創業者である父が亡くなりました。父が亡くなり、変わっていかなければならないところもありますが、父が築いてきたインタビュー中心の編集方針は、弊社にとっては今後も守っていくべき原点です。この1対1のパワーを活かした企画として、経営者対編集者だけでなく、経営者同士の対談も考えています。会員制異業種交流会の「経済界倶楽部」のコンセプトでもあるのですが、人と人を繋ぐことで、日本経済を元気にしていきたいです。
取材日:2014年2月10日 ライター:植松
Profile of 佐藤有美
株式会社経済界 代表取締役社長
<以下はHP代表挨拶より> 経済界グループは、1964(昭和39)年に私の父・佐藤正忠が創業し、経済誌の発行および、書籍刊行、経済界倶楽部などの異業種交流会の運営を行っております。
父より経営を継いで13年目を迎えました。 経済は常に流れ、動き、変化しています。今、この厳しい経済状況の中、情報産業として、明るいニュースを発信すると共に、経営者同士の交流を深める場を通して、きらりと光る新しい情報提供をお届けしてまいります。
ダイヤモンドの原石のような産業・企業・経営者などの情報を皆様にお届けし続けるため、社員一丸となっていっそう努力してまいる所存です。
■株式会社経済界 http://www.keizaikai.co.jp/ ■佐藤有美オフィシャルブログ「虎ノ門で働くオンナ社長」 http://ameblo.jp/yuyumi310/ ■佐藤有美氏Facebook https://www.facebook.com/yumi.satou.393