地元広島で100%自社開発! こだわりの子ども向けアプリが大人気
- Vol.112
- インタラクティブデザイナー/クリーモ株式会社 代表取締役 原崎正広(Masahiro Harasaki)氏
自分自身が納得できるアプリを目指した自信作! こだわって作り込めるのは、個人制作ならではの強み
Yahoo!JAPANクリエイティブアワードGold受賞おめでとうございます!
ありがとうございます。思い入れのあるアワードなので、とても嬉しいです。
受賞作品「あんざんマンと算ストーン」は、どのような経緯で制作したのですか?
2012年にリリースした「あんざんマン」の第2弾として制作しました。「あんざんマン」はリリースした後に小学校の先生から「このままでは学校では使いづらい」と連絡があったんですよ。学校でも使えるように変えてほしいとのことで、問題の難易度などのアドバイスをもらって、アップデートしました。おかげさまで2013年のApp Storeベスト教育アプリに選ばれたのですが、無理矢理アップデートしたところもあったので、自分では納得いかない点もあったんです。もう一度、自分で納得いくものを作ろうと第2弾を制作しました。
小学校の先生から連絡があったとはすごいですね!どんなところを変えてほしいとリクエストがあったんですか?
もともと大人のアタマの体操として使うことを想定して作っていたので、問題が難しすぎたり、ステップアップの仕方が小学校の指導要綱に沿っていなかったり(笑)。僕としても子どもが使うアプリを作りたかったので、ありがたいアドバイスでした。
「あんざんマンと算ストーン」は納得いくものに仕上がったのでしょうか?
はい、自信作です!今回は始めから子どもに使ってもらうことを想定して作りました。子どもに使ってもらうのに中途半端なものは作れませんから。
子どもだけでなく、大人が遊んでも面白いですよね。問題に正解すると手裏剣が飛んで割れていく動きや爽快感がクセになります!
その動きは、かなりこだわって作ったので、そう言っていただけると嬉しいです。工数的には削ってもかまわないところなのですが、そこにこだわって作り込むことができるのは、個人制作ならではの強みですね。
インターンとしてWeb制作を実践的に学ぶ 技術を活かすために東京の制作会社へ
原崎さんがクリエイターを志したのは?
父がおもちゃを手づくりしてくれるような人で、僕も小さい頃からモノづくりが好きでした。中学生の頃からPCを使ったモノづくりを始めて、高校卒業後は地元(広島県)のデザイン専門学校に入ったんです。グラフィック、映像、3DCGなど、PCを使った制作全般が学べる学科でした。ただ、やはり学校は基礎的なところから始めるので、すでにPCのモノづくりをかじっていた僕としてはもう少し実践的な制作をしたくて、地元のラジオ局でインターンとして働いていました。
インターンとしてはどんな仕事を?
ラジオ局のWebサイトを制作していました。PHPやFlashなど、学ぶことはたくさんありましたね。実際にユーザーに使ってもらうためのサイトを作りながら学ぶことができたのは、大きな経験でした。専門学校を卒業する頃にはある程度Webの技術は使えるようになり、技術を活かせる場を求めて東京で就職することに決め、制作会社の株式会社ロボットに入社しました。
就職後は、どんな仕事をメインにしていたのですか?
広告制作会社なので、プロモーションサイトをメインにWebデザイナーとして働いていました。当時はFlashを駆使したサイトが全盛で、入社時にはすでにFlashがある程度使えたので、いきなり仕事を任せてもらえました。忙しいけれども充実した毎日でしたね。ロボットのWeb制作部門は少数精鋭で、デザインだけでなくHTMLやプログラムを書ける人もたくさんいて、すごく刺激的な職場だったと思います。
iPadの登場でアプリ制作を決意 1ヶ月で作った最初のアプリがAppleのテレビCMに!
バリバリのフラッシャーだったわけですね。そこからアプリ開発へ軸足を移したキッカケは?
2010年にFlashに対応していないiPadが発売されて、Web業界全体が「今後はFlashではなく、アプリやHTMLがメインになっていく」という空気感になったんですよ。そこで「アプリを学んでおいた方がいいかな?」と考え、最初に作ったアプリが「かなもじ」です。
最初に作ったアプリも子ども向けだったんですね。
ちょうど結婚したばかりで、子どもに対して意識が向き始めたことと、自分自身も父が作ってくれたツールで「あいうえお」を覚えたので、そんなアプリを作りたいと思いました。1ヶ月でサクッと作りましたが、AppleのテレビCMで紹介してもらって、多くの人にダウンロードしてもらったんです。これには衝撃を受けましたね。
「衝撃」とは?
今まで会社でプロジェクトチームの一員として制作をしてきたわけですが、個人で制作したものがここまでたくさんの人に使ってもらえるんだ!と驚きました。それと同時に、大きなやり甲斐を感じましたね。
独立後は自社開発のアプリ制作に専念 地元で雇用を創出することにチャレンジしたい
現在は独立されていますね。
会社での仕事は充実していて不満もなかったのですが、もともと地元に帰ることは決めていました。一人っ子なので(笑)。アプリ開発に可能性とやり甲斐を感じたこともあり、これで独立してやってみようかな、と。今は100%自社開発のアプリに専念しています。
制作会社のWebデザイナーから独立する場合、在籍していた会社など、これまでのつながりから受託業務を行うことが多いと思いますが…。
東京の会社から仕事を受けると、せっかく東京を離れて独立する意味があまりないような気がしたんです。ゼロから価値のあるプロダクトを作って、地元で雇用を創出することにチャレンジしたいと考えました。成立している間は自社開発にこだわりたいですね。
現在の制作体制は?
デザインとイラストを妻が担当して、企画とプログラミングを僕がやっています。もう少し安定して収益が上がるようになったら、自分と同じようなインターンの学生を受け入れて、地元に恩返ししたいです。
今後のアプリ開発の方向性は?
子ども向けアプリにはやり甲斐を感じているので、続けていきたいですね。子ども向けアプリを作るときのこだわりとして、子どもの人生の役に立つこと、そして親子一緒に遊べることを心がけています。例えば「かなもじ」は子どもが文字のなぞり書きをしたら、それを認識して正解を表示することもできるんですが、あえて認識させていません。子どもは書いたら正解かどうかを知りたくて親に見せに行きますよね。静かにさせるためにスマホを渡すのではなく、そのコミュニケーションを大切にして欲しいです。
次のアプリは、すでに構想は出来上がっているのでしょうか?
いくつか並行して動いているものはあります。ユーザーの方もどんどんアプリに対する目が肥えてきて、「お金を払ってもらう」ために複雑化する一方なので、難しいところなのですが、そこはやり甲斐でもあり、楽しいところですね。
感情を動かせるモノを作ることが大切。 死ぬまでモノづくりを続けたい!
次回作を楽しみにしています!自分自身のクリエイティブで勝負している原崎さんに憧れる若いクリエイターは、数多くいると思います。そんな若きクリエイターにメッセージをお願いします。
当たり前のことかもしれませんが、自己満足ではなく相手の気持ちに立って考えることではないでしょうか。「相手」がアプリを使ってくれるエンドユーザーでも、取引先の担当者でも同じで、感情を動かせるモノを作ることが大切だと思います。あと、若い時は多少の無理は利くので(笑)、納期をきちんと守りつつもクオリティを追求したり、仕事以外のことに興味を持って触ってみたりして、クリエイターとして引き出しを増やす努力をした方がいいですね。僕もアプリ開発以外にもやりたいことがたくさんあります!
例えばどんなことですか?
3Dモデリングをしたり、VR(Oculus Rift)のコンテンツを作ったりしています。まだお金にはなりませんが、純粋に楽しいですね! 3Dプリンターまで買ってしまいました(笑)。好きでやっていることですが、クリエイターとしての本質的な力を高めることにもつながっていると思います。モノづくりが大好きなので、死ぬまで作っていたいですね。
※Skypeで取材を行ったため、特典動画はありません。ご了承ください。
取材日:2015年2月9日 ライター:植松
Profile of 原崎正広
クリーモ株式会社 インタラクティブデザイナー/代表取締役
1984年広島県生まれ。 学生時代に3DCG、映像制作、グラフィックデザインを学び、インターンシップを通してWebサイト制作を経験。 卒業後に制作プロダクションの株式会社ロボットへ入社し、インタラクティブデザイナーとして、企業のWebサイト制作に6年間従事。 独立後はスマートデバイス向けのオリジナルコンテンツを中心に制作し、2014年10月にクリーモ株式会社を設立、代表取締役に就任。
◼︎クリーモ株式会社 http://www.creemo.jp/