WEB・モバイル2012.09.13

学ぶことを楽しみ、 周囲から 刺激を受けて。

Vol.85
講師/WEBクリエイター( KICKS Web ) 千貫りこ(Riko Sengan)氏
 
株式会社フェローズは、ロクナナワークショップさんと一緒に、9月25日(火)19:00~「90分でわかる!スマホ・タブレット対応サイト制作・入門編」セミナーを開催します。PC用に作成されたHTMLファイルと、CSSを活用してスマホ・タブレット対応にする方法などをご紹介するものです。セミナーの講師としてお迎えする千貫りこさんに、これまでのご経験や、WEB業界でどのように力を付けていけばよいかなど、色々なお話をうかがいました。

きっかけはスクールから。色々なご縁でフリーのWEBクリエイターに。

千貫さんのプロフィールには「ちょっと不思議な経歴」とありますね。

そうなんです(笑)社会人になる前は、音楽学校で電子音楽(MIDI)を学んでいました。バブルが弾けた頃に卒業だったので、いざ社会に出てみたら音楽制作のお仕事は激減していました。1年半ほど努力してみたのですが「音楽でやっていくのは無理かも」と感じて、「これからどうしようかな…」と考えながらTV局のイベント制作部のアルバイトや事務の派遣社員などをしていました。 ちょうどその頃CD-ROMがマルチメディアコンテンツとして注目を集め出したのを知り、おもしろそうだなと思ってスクールに通ってみたんですね。そこで出会った先生に「これからはWEBがおもしろいよ」とうかがったことが、WEBの世界に入るきっかけになりました。

フリーランスとしてお仕事を始めるまでは?

スクールを卒業後は、4年半ほど派遣で働き、あるシステム系大企業の事業部サイト立ち上げに携わりました。当時まだ自社サイトを持っている企業は少なく、あまり予算を掛けられないということで、担当は派遣社員の私だけでした。制作~管理まで1人でやっていました。その後、WEB制作会社に正社員として入社し、ここでも4年ほど働きました。フリーランスになるまでは8年ほど組織にいたことになりますね。

講師や執筆のお仕事に携わるようになったのは?

WEB制作会社で一緒だった同僚から、雑誌の執筆を紹介されたのが最初です。彼女は先にフリーランスで文章を書く仕事をしていたのですが、たまたま電話で話していたときに「こんな仕事があるんだけどやってみない?」と言われたのがきっかけです。そこから1年くらいは、お声掛けがあれば積極的に執筆をお受けしていました。するとちょうどその頃に通っていたWEB業界のセミナーの主催者が本を作ることになり、「共著書の1人としてどう?」とお誘いをいただいたんですね。不安でいっぱいでしたが、参加することで自分の名前が入った本が出ました。書籍はこれがスタートだったように思います。 講師のお仕事のきっかけは、あるセミナーで素晴らしくプレゼンテーションがおもしろい方がいらしたんですね。その感動を講師ご本人に伝えたら覚えてくださって、しばらく経ってから「講師の仕事があるんだけど?」とご紹介いただいて。これも御縁だと思ってお受けしたのがきっかけです。みなさんに支えられてばかりですね(笑)

やみくもに新しい技術を追いかけるのではなくまずは基本をしっかりと。

ご自身の講義で心掛けていらっしゃることは?

講師のお仕事は今年で4年目で、いま都内2カ所で講義を担当しています。生徒として来て下さった方はご希望があれば、FacebookやTwitterでつながるようにしていますね。積極的な方とは勉強会を開いたりすることもあります。生徒さん同士で、いま40人くらいのコミュニティになっているんですが、その中でお仕事が生まれたりするのが嬉しいですね。

最近の生徒さんはどんな方が多いですか?

大学生~20代、これから新しくWEB業界に入りたい方など様々ですが、最近は新しくWEB担当になったので勉強したいといらっしゃる方が多いです。昔はWEB制作会社で働いている生徒さんが多かったのに比べると、企業の内製化が進んでいることを感じます。予算削減など、外注に出せない事情があるのかもしれませんね。 またこれまで更新作業だけを担当していた派遣社員さんが、仕事が少なくなってきたのでゼロからWEBサイト構築ができるようになりたい、スキルアップしたいといらっしゃるケースも増えています。

WEBクリエイターはどうやってスキルを磨いていけばよいと思いますか?

みなさん環境やお仕事は様々だと思いますが、私自身に照らし合わせて言うと、新しい技術を今すぐ身につけなきゃと思っていると、つぶれてしまうと思うんです。昔と違ってWEB制作で知っておくべき範囲がますます拡がっている現状に、げんなりしてしまいがちです。そこで私が生徒さんにお伝えしたいのは、まず基礎をしっかりと。例えば流行りの最新技術としてHTML5の目新しい部分を勉強する前に、正しいタグを選べるようになることが大切ですね。制作会社さんが作ったサイトなのに、タグ選びが正しくできていないソースを結構見かけます。見た目は美しくても、ソースが汚い。最新のCSS3を勉強するのは大事なことですが、その前提姿勢が「限定された環境で綺麗なものをつくることができればいい」というのでは、プロとして不十分かもしれないと思います。 インターネットで情報を伝えるために必要な本質的なこと、それはライティング・レイアウト・サイト構造も含むと思いますが、基本をしっかり学んでおくことが大切ですね。基本を理解しておけば、仕事で知らないことをやってくれと言われたときにも、Googleで検索すれば大抵やり方は出ているのでなんとかなります(笑)ただ、ここでも少し注意が必要で、見つけた情報を鵜呑みにするのではなく、なぜそうするのかを理解した上で活用することが重要なんです。 ソースをわかりやすく書く、しっかり設計する、そうすることで次の担当者やチームの仲間がソースを読み解いたり編集する労力が半分で済みます。あやふやな知識で寄せ集めた技術を使って作られたサイトは、ちょっとしたバランスで崩れてしまいますよね。基本をしっかりと押さえた上で、さまざまな視点から工夫をこらした状態を作り上げる、それがプロの仕事だと思います。

移り変わりの激しいWEB業界。学ぶことを楽しみ、周囲から刺激を受けて。

千貫さん自身は、普段、どのようにWEB業界の情報収集をされていますか?

情報収集のためには、セミナーに通うようにしています。フリーになったばかりの頃は、コーダーとして下請けの仕事を自宅で黙々とこなす日々でした。フリーになって2年ほど経った頃からセミナーに行き始めたのですが、それがきっかけでいろいろなことが変わっていきました。いまはせっかくセミナーに出るなら懇親会もぜひ!と思えるのですが、昔は億劫で、懇親会に行ってもつまらないまま帰ってきて後悔したり(苦笑)でも続けているとだんだん知り合いもできて、楽しくなってくるんですね。仕事はセミナーを楽しみにがんばろう!と思えるようになりました。 フリーランスって、孤独な人が多いですよね(笑)技術に取り残されているんじゃないかという焦りもあります。友達でも同僚でもない同業者と情報交換ができるセミナーは、貴重な場だと思いますよ。いまでも月に2回ほどは何かしらのセミナーを受けています。セミナー以外ではFacebookやTwitterで著名な方とつながって、そこから情報を得たりしていますね。

これまでに影響を受けたクリエイターさんといえばどなたでしょう?

まず挙げたいのは、神崎正英さんですね。『ユニバーサルHTML/XHTML』『セマンティック HTML/XHTML』などの著書や、彼のサイトは何度も読み直しました。HTMLの意味・意義を教えられた存在です。 お二人目は初めて参加したセミナーの講師だった神森勉さんです。アクセシビリティの重要性に「目からウロコ」でした。それまでは「デザインカンプをWEBページの形にすること(だけ)がコーダーの仕事」だと思い込んでいたのですが、その認識が間違っていたと分かり、それと同時に自分の仕事に大きなやりがいを感じるようになりました。 最後は長谷川恭久さんです。WEB制作まわりに関する概念的な部分で、リアルタイムでも大いに刺激を受けています。ブログだけでなく、「Automagic」というタイトルのPodcastsも配信されています。つい最近、電子書籍も発表されました。

最後に、これからWEBクリエイターを目指す方々にメッセージをお願いします。

移り変わりが激しい業界なので、勉強し続けることは必須ですが、それをどうやって楽しむかが鍵だと思います。勉強を苦痛だと思ってない人は、お勤めでもフリーランスでも、活き活きお仕事していると思います。勉強し続けるのはしんどいかもしれませんが、常に変化していることは醍醐味とも言えると思います。 同じお仕事の仲間を見つけて、情報交換したり、刺激を受け合ったりするのもいいですね。そのためにはセミナーは手っとり早い手段だと思います。小規模の勉強会などもあちこちで開かれているので、FacebookやTwitterなどで勉強会の情報を探すのもおすすめですね。 生徒さんにはご自分のサイトを持ってくださいとお伝えしてます。セミナーで興味を持ったことを試す場があると、学んだことが定着します。仕事では試せない新しい技術のうっぷんを晴らす場にもなります(笑)私も1995年から自分のサイトを定期的に作り変えて今に至ります。サイトを作るのが大変という方は、ブログで情報発信されるのもいいですね。勉強会に行った、こんな本を読んだなど、文章にアウトプットすることで頭の中で整理されるのでスキルアップの近道になります。 インプットしたことは、忘れないうちに何かのかたちでアウトプットする。これをやっている方は、就職するスピードも早いように思います。サイトもブログも、転職活動の材料としても使えるのでおすすめですね。またそのサイトを見て、どなたかからお仕事の依頼があるかもしれません。 いまWEB制作をやりたい方が多いので、競争は厳しいかもしれませんが、やる気次第で道は必ず開けます。これからのみなさんのご活躍を、心から応援しています!

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