結婚も仕事も子育ても全部あきらめない! がんばる女性たちの背中を押したい。
- Vol.127
- ヒラタワークス株式会社 代表取締役社長 / 出版プロデューサー 平田静子(Shizuko Hirata)氏
結婚も、仕事も、子育てもあきらめない。 普通の女の子でも、やる気があれば両方選べる!
大ベストセラー『チーズはどこへ消えた?』のプロデュースなど、出版プロデューサーである平田さんが、本を書くことになったキッカケは?
フジサンケイグループの出版社である扶桑社に在籍していたころは何冊もプロデューサーとして本を作りましたし、退職後も出版プロデューサーとして活動していますが、自分の著書が世に出るなんて、思いもしないことでした。雑誌『anan (アンアン)』の元編集長であり、今はマガジンハウスの編集局長である鉄尾周一さんからお話をいただきまして、トントン拍子に出版が決まりました。
『そういえば、いつも目の前のことだけやってきた』は、誰に向けて、どんなメッセージを込めた本なのでしょうか?
私は短大を卒業し、昭和44年にフジテレビに入社しました。当時のフジテレビは、女性は「25歳定年」ですよ!そんな時代ですから、キャリアアップしたいといった野望も持たずに入社したのですが、そんな私が結婚・出産、さらに離婚を経てシングルマザーとして子育てしながら、フジサンケイグループの女性取締役になり、42年間定年まで勤めることができました。 今の若い女性は、「仕事をするならば結婚や子どもをあきらめる」「子どもを持つならば仕事をあきらめる」の二者択一になっている気がしています。そんな女性たちに、短大卒のごく普通の女の子だった私ができたように、やる気さえあれば両方選べることを、伝えたいと思いました。
これまでも仕事と育児を両立している女性は大勢いましたが、学歴やキャリアがきらびやかで「特別な存在」の女性であった気がします。
女性が働き続けるためには、高学歴であったり、MBAを取得していたり、弁護士や会計士などの資格があったり、語学堪能で何ヶ国語も操れるなど、そんな特別な人ばかりで、平凡な自分には無理だと思っている女性にこそ、この本を読んでいただきたいと思います。 なぜなら、私は学歴も資格もない、さらに出世したいとか仕事で自己実現したいとか野心もなく、本当にごくごく普通の女の子でした。そんな私でもできるのだから、誰にでもできると、悩んでいる女性の背中を押したかったのです。
本には、すぐに実践できる仕事に対する考え方やヒントをまとめられていますが。
どれも特別なことではなく、やる気さえあれば今すぐに実践できることばかりですので、20~40代の、仕事も結婚も子どももあきらめたくないと悩んでいる女性に、普通の女の子でもできるというロールモデルとして参考になればうれしいです。
本を出版して、反応はいかがですか?
女性を対象としたセミナーなどに呼ばれる機会が多くなりました。 「勉強になりました!」「元気をもらえました!」と、多くの女性に声をかけられ、出版してよかったな、と思っています。
一流のクリエイターは、すべてが上質。 自分の中で咀嚼してアウトプットできるクリエイターを信頼。
出版プロデューサーとして、雑誌の編集長として、多くのクリエイターと接してきた平田さんですが、影響を受けたクリエイターは?
日本を代表するクリエイターの方々と日々仕事をさせていただいて、作品はもちろんのこと、考え方や人脈、人柄など、多くの影響を受けました。一流のクリエイターは、作品だけでなく、持っているものすべてが上質です。 特に影響を受けたのは、チェッカーズの総合プロデュースや、内田春菊さんを見出したり、多くの仕事を世に残した秋山道男さんですね。以前からその仕事ぶりに感銘を受けていましたが、突然、雑誌『CAZ(キャズ)』の編集長に就任することになり、リニューアル創刊号に向けてバタバタしていたときに、秋山さんの「大丈夫!」の一言に、大変勇気付けられました。秋山さんの頭の中では、「大丈夫」までのクリエイティブな道のりが計算されていたように思います。おかげで気持ちが楽になり、落ち着いて仕事に取り組めたことを覚えています。 ちなみに、フジサンケイグループを定年退職後に作った会社「ヒラタワークス株式会社」の命名も、秋山さんなんですよ。新幹線での移動中に命名してくれました(笑)。
平田さんはクリエイターに対して仕事を発注される立場ですが、どんなクリエイターと一緒に仕事をしたいと思いますか?
与えられたテーマを自分の中で咀嚼して、何を伝えるべきか考えて提示できる人は信頼できますね。例えば、単行本の装丁デザインならば、ゲラを読ませて欲しいと自分から言ってきて、原稿を読んで、その本が伝えたいことを考えて、表現としてアウトプットできる人にお願いしたいです。
今回の本のデザインは?
イラストは城井文(しろいあや)さんにお願いしました。彼女は、私がプロデュースした秋元康さんの著書『象の背中』(産経新聞出版)のアニメーションを作ったクリエイターです。『象の背中』のアニメーションは、DVDとして発売されて大ヒットとなりました。彼女は、まさに、自分の中で咀嚼して表現できる人です。この本を出すことが決まったとき、「絶対に彼女にイラストを描いてもらおう!」と思いました。ヒラタワークスのホームページのイラストも彼女によるものなんですよ。
単純作業でも、工夫次第でオリジナリティが出せる 目の前のことを積み上げていけば、チャンスはやってくる!
クリエイターが指名で発注されるようになるには、何が必要でしょうか?
目の前の仕事をひとつひとつ積み上げていくことで、自分の“強み"を作ることでしょうか。「このジャンルなら、この人!」と思われるくらいに得意分野があると発注しやすいです。漠然と「何でもできます」と口を開けて待っていられても、発注側としては何をお願いしたらいいのかよくわかりません。自分のカラーがある人の方が、チャンスが巡ってきやすいと思います。「自分のカラー」というのは、オリジナリティにも通じますね。
与えられたテーマを自分の中で咀嚼しつつ、オリジナリティも出していく必要があるのですね。
人に言われてやるのではなく、自分の中に持っている力を、どんな条件でも出していく努力が必要だということです。咀嚼することと、自分の考えを曲げることは違います。仕事に対して信念と情熱を持って取り組み、人に言われようと「これが自分のオリジナリティだ」と思うところは曲げないことですね。本に関しても同じで、編集者が信念とクレイジーなくらいの情熱がなければ本はヒットしません。
本のタイトルにもありますが、まずは「目の前のこと」を積み上げて自分のカラーを作り出すことが必要ということですね。
お茶くみやコピーでも、与えられたことを自分の中で咀嚼して毎日しっかりこなすことが大事なのです。例えば、コピーを取るとき、クリップ止めがいいのか、ホチキス止めがいいのか、私は、内容を見て考えて判断していました。そうすると、この子に頼めば、きちんとしたものが上がってくると評価されるようになり、「この仕事やってみる?」と声がかかり、それも同じように目の前のことを積み上げていくと、見ている人は見ていて、次のチャンスがめぐってきます。 若いころの仕事は、単純作業が多くて、つまらないと思いがちですが、基本的な積み重ねこそ、信頼につながります。また、工夫次第でいくらでも個性やオリジナリティが出せます。目の前のことをプライドと自信を持ってこなしていくことこそが大切です。 一方で、好奇心を持つことも大切です。好奇心を持って、いろいろな人に会ったり、いろいろな場所に行ったり、いろいろなことから吸収してください。
平田さんのように好奇心を持って仕事に取り組むためには、どうしたらいいですか?
好奇心は、「もっと知りたい」という気持ちです。例えば、気になる異性がいたら、「この人のことをもっと知りたい」と思うのと、同じです。 難しく考えず、「知りたい」気持ちに忠実に、調べたり、人に聞いたりしてみると、そこからさらに好奇心が広がり、多くの気づきを得ることができます。
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取材日:2016年4月25日 ライター:植松織江
Profile of 平田 静子(Shizuko Hirata)
1969年フジテレビ入社。84年扶桑社へ出向。宣伝部にてPR活動。その後書籍編集部・編集長。テレビ・ラジオ本など、フジサンケイグループとの連動本を企画し、数々のベストセラーを生み出す。その後、雑誌『CAZ』編集長、書籍編集部部長を経て、同社執行役員、取締役、常務取締役などを歴任。映画版のエグゼクティブプロデューサーを務めるなど各方面で活躍。扶桑社を退職後はプロデュース会社・ヒラタワークス(株)を設立し、出版・イベント・マーケティングなどのプロデュース、企画プランニング・コンサルティングなど幅広いビジネスを展開する。
ヒラタワークス株式会社 http://www.hirataworks.jp/