アニメ2023.01.23

マッドハウス社内に潜入!映画『金の国 水の国』制作の裏側に迫る

東京
クリエイターズステーション編集部
editor.W
編集者W
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森の中で、手前の青い蝶が飛び回るシーン。

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蝶の動きを指示する紙を見せていただきました。

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監督の持つ紙の束の厚みからも、手描きでの表現が大変だったことが伺えます。

2023年1月27日(金)に公開する、映画『金の国 水の国』

その公開を記念して、1月17日(火)にスペシャル鼎談&マッドハウスツアーが開催されました!

株式会社マッドハウスさんのオフィスに伺い、アニメーション映画制作の裏側を取材してきましたので、たっぷりの写真とともにご紹介していきます!

◇目次◇
・マッドハウスツアー
 監督のデスクにお邪魔! 渡邉こと乃監督
 監督のデスクにお邪魔! 撮影監督・尾形拓哉さん
スペシャル鼎談
 原作に誠実に向き合い、作画にこだわり
 長編アニメーション作りは、「監督のエゴが大事」
 「アウトサイダーを許容できる会社」マッドハウス
 未来のクリエイターへメッセージ

 

 

マッドハウスツアー

マッドハウスツアーでは、渡邉こと乃監督と、撮影監督・尾形拓哉さんのデスクを訪問しました。
なんと監督自ら、『金の国 水の国』のこだわりポイントを、解説していただきました!
クリエイター必見の、絵コンテや作業データも見せていただき、終始大興奮しっぱなしのツアーを、写真とともにお伝えします!

監督のデスクにお邪魔! 渡邉こと乃監督

渡邉こと乃監督のデスクでは、映画『金の国 水の国』の主人公で<金の国>の王女・サーラの設定資料や絵コンテ、進行表などを見せていただきました!

映画『金の国 水の国』は、岩本ナオさんの人気マンガが原作の劇場版アニメ。
原作の作風を表現するために、通常CGで処理するような場面も、手描きで生の質感を出せるようこだわったそうです。

例えば、主人公・サーラの登場するシーンで使われる資料はこんなにたくさん!

PC画面には主人公・サーラの設定資料と背景イメージが映しだされています
 
絵コンテ
画面の動きや表情の指示が細かく書かれています。

タイムシート(アニメーションのタイミングや撮影の際の指示が書き込まれる用紙)
1秒の間に何枚の絵が必要か、これで管理しているそうです

 

 
タップと呼ばれる位置を固定する穴に絵を固定し、原画のラフを背景と重ねて演出が確認します
原画と原画の間をつなぐ動画をパラパラ漫画のように見せてくれる渡邉監督

これらの資料や作画をもとに作られたのが、下の写真のシーンです!

PC画面に映し出されたシーン。サーラが森の中で空を見上げるシーンになりました!

 

他にも、貴重な資料を見せていただきました!

サーラが泣いてしまうシーンの原画

橋の上でサーラとナランバヤルが話すシーンのレイアウト

 

監督のデスクにお邪魔! 撮影監督・尾形拓哉さん

次は、別フロアにある撮影監督・尾形拓哉さんのデスクへ。

こちらのフロアは少し照明が落とされていて、PC画面に集中できる環境になっていると感じました。

尾形さんに、撮影監督として関わったシーンをいくつかご紹介いただきました。

加工前
加工後
加工前
加工後
ひらひらと舞い落ちる花びらは3D。手前と後ろで素材は別にして、見せ方を変えているそうです

おおーーー!すごい!!!!印象ががらりと変わります。
こんなに変わるものなのかと驚きと感動で声が出てしまいました。

渡邉監督のデスクで見たサーラのシーンも、尾形さん率いるチームによって繊細な表現が施されていました。

加工前
加工後
森の中の木漏れ日を表現

また、こんな細かいところにもこだわりがありました。

加工前
ベタ塗りの状態で納品される
加工後
敷物の柄を追加。肉やパンのツヤも表現

この画面では、キャラクターがメインですが、画面の中のほんの一部分をこだわることで、リアリティが変わってくるのだそうです。

本作を見て印象的だったのは、作品のやさしさとあたたかさに包まれる感覚。そして画面のどこを切り取っても美しい、作り込みの丁寧さと細やかさでした。

クリエイターさん一人ひとりの仕事ぶりが、作品の仕上がり全体に大きく影響を与えているのだと感じました。

 

スペシャル鼎談

マッドハウスツアーの後は、スペシャル鼎談(注:ていだん…3人が向かい合って話をすること)に参加。そこでは、今回長編アニメーション作品の初監督を務める渡邉こと乃監督に加え、マッドハウスが輩出する日本アニメ界を牽引するクリエイターである、『時をかける少女』(2006)、『サマーウォーズ』(2009)、『おおかみこどもの雨と雪』(2012)で細田守監督とタッグを組む映画プロデューサーの齋藤優一郎さん、監督を務めたテレビアニメ「ソードアート・オンライン」が話題を呼び、のちに『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』で長編初監督を果たし、2019年には『HELLO WORLD』が公開された伊藤智彦さんの、まさに業界最前線で活躍するクリエイターが集結。渡邉こと乃監督が描く本作の魅力やクリエイターに求められることなどを語っていただきました。

 

左から、伊藤智彦さん、渡邉こと乃監督、齋藤優一郎さん

 

原作に誠実に向き合い、作画にこだわり

作画は、やはりこだわったポイントだと語る渡邉監督。映画を見た伊藤さんは「誠実に原作に向き合って作られているなという印象も抱いたし、大きな画面で見るための絵になっているな」と感じたそう。原作のファンだからこそ「原作を知らない方にはどう伝わるのだろうか」と考えていたという渡邉監督は、その感想を聞いて「自信になりました」と話していました。

また、本作のストーリーは、敵国同士の2人が偶然出会い、“小さな嘘”から夫婦を演じているうちに恋に落ち、両国が戦争にならないように頑張るというもの。戦争というシビアな部分があるため、絵柄には気を使い、やさしいタッチで構成したとのこと。

また、齋藤さんは「絵のトーンがカラフルでやさしくて寓話的だからこそ、主人公たちの主体性がより強くあぶり出されている」と指摘。この作品が伝えたいテーマが特に表れているラストカットをぜひ劇場で見てほしいと語りました。

 

長編アニメーション作りは、「監督のエゴが大事」

長編アニメーション映像を劇場で届けていくには、「これをやらねばならない、やりたいという監督のエゴが大事だと思っています」と伊藤さんは語ります。監督のエゴは、「制作が大変だとわかっていても譲れない」という部分の他にも、原作で1コマしかないところに、どれくらいの尺を使うかにも表れるのではないかと語りました。
また、原作があったとしても、映画は「僕のものですよ」と言える度胸や覚悟、想いを持つことが重要だとお話されていました。

映画鑑賞後に絵コンテを取り寄せたという齋藤さんは、渡邉監督のこだわりが作品に反映され、「監督がやりたいことを絵コンテでも支配している感じがすごくした」と語り、監督の色がついていて、「自分の色として作品をある種支配できたのが素晴らしい」と評価していました。

渡邉監督は、マッドハウスのレジェンドクリエイターたちが参加し、「こと乃イズム」で束ねていった作品であることについて、「現場ではすごく先輩方に助けられた」という感謝とともに、「自分の色が出ているとしたら上手く大御所たちに甘えられたのが映像として上手く出たのかなと思います」と語りました。

また、今後について渡邉監督は、思春期に自分自身が閉塞感で苦しんだ経験があるので、コロナ禍で閉塞感を感じる人々や「過去の自分」を助けに行けるような作品を作りたい、と力強く語っていました。

 

「アウトサイダーを許容できる会社」マッドハウス

マッドハウス出身の渡邉監督、伊藤さん、齋藤さんから見て、「マッドハウスはアウトサイダーを許容できる会社」だと語ります。

齋藤さんは、マッドハウスにはその作品を作るために自分は生まれてきたんだという人たちが皆、企画を一心不乱に作るバイタリティにあふれていたと語ります。
「『ここまでやらないと映画にならないよ』という自分にしか見えないバーがあり、その、見えないバーを超えていく感覚は、マッドハウスのクリエイターと一緒に作品を作る中で教えてもらいました。自分の中でそれを作っていけたことは、自分にとっての財産であり、他のスタジオやチームではなかなかできないものなのかもしれません。」

現在もマッドハウスに在籍する渡邉監督は、「この人がいるからこの作品をやるっていう熱量が残っているなと感じます」とお話されていました。

 

未来のクリエイターに向けてメッセージ

最後に、未来のクリエイターに向けて、メッセージをいただきました。

渡邉監督
「この業界は自分のやりたいことに対して、まっすぐ進める人が生き残るので、自分のやりたいことを二の足を踏まずにやる、やりきる気概を持つ、ということだと思います。」

伊藤さん
「コンビニとファミレスのアルバイト、あと恋愛は経験しておくと良いと思います。忙しいとやっている時間が無くなるので、やりたいことは時間のあるうちにやっておくのが良いですよ。コミュニケーションを取らなきゃいけないことが多分にあるので。アニメの制作現場に入ると、コミュニケーションを取らざるを得ない瞬間がいっぱいあるので、慣れておいた方が良いと思います。」

齋藤さん
「プロデューサーという仕事は、時代時代の価値観の中でチャレンジをして、新しいことを作っていくことだと思うんですよね。これまで映画というものがどのように産業として成り立ってきて、今何が問題で、これからどうなっていくのか。それをふまえた上で、自分だけじゃなくて、日本、そして世界を視野に、一歩を踏み出してほしい。そして、その時代を反映する新しい何かを作り出すためには、その時代を生きるさまざまな人と交わって自分も変化するということが必要です。そういうことを能動的にできる人が、クリエイターとして、作品を作っていけるのだと思います。ぜひ足を踏み入れてもらいたいですね。」

 

詳細は、後日、鼎談オフィシャル映像も公開されるそうですので、気になる方はぜひそちらをチェックしてみてください!

(クリステでも、渡邉こと乃監督のインタビュー記事を公開予定なので、乞うご期待ですよ)

 

そして、クリエイターさん一人ひとりのこだわりの詰まった映画、『金の国 水の国』をぜひ劇場で味わってください!!

 

 

『金の国 水の国』

ⓒ岩本ナオ/小学館 ⓒ2023「金の国 水の国」製作委員会

2023年1月27日(金)全国公開

キャスト:賀来賢人、浜辺美波、
戸田恵子、神谷浩史、茶風林、てらそままさき、銀河万丈、
木村昴、丸山壮史、沢城みゆき
原作:岩本ナオ「金の国 水の国」(小学館フラワーコミックスαスペシャル刊)
監督:渡邉こと乃 脚本:坪田 文 音楽:Evan Call
テーマ曲(劇中歌):「優しい予感」「Brand New World」「Love Birds」
Vocal:琴音(ビクターエンタテインメント)
アニメーションプロデューサー:服部優太 
キャラクターデザイン:高橋瑞香 
美術設定:矢内京子
美術監督:清水友幸 
色彩設計:田中花奈実 
撮影監督:尾形拓哉 
3DCG監督:田中康隆 板井義隆 
特殊効果ディレクター:谷口久美子
編集:木村佳史子 
音楽プロデューサー:千陽崇之 鈴木優花 
音響監督:清水洋史
アニメーションスーパーバイザー:増原光幸
プロデューサー:谷生俊美 
アソシエイトプロデューサー:小布施顕介
アニメーション制作:マッドハウス
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)岩本ナオ/小学館 (C)2023「金の国 水の国」製作委員会

 

ストーリー

敵国同士の2人が偽りの夫婦に!?2人だけの“小さな嘘”は、国の未来を変えるのか――。
100年断絶している2つの国。“金の国”の誰からも相手にされないおっとり王女サーラと “水の国”の家族思いの貧しい建築士ナランバヤル。 敵国同士の身でありながら、 国の思惑に巻き込まれ“偽りの夫婦”を演じることに。深刻な水不足によるサーラの未来を案じたナランバヤルは、戦争寸前の2つの国に国交を開かせようと決意する。お互いの想いを胸に秘めながら、真実を言い出せない不器用な2人の<やさしい嘘>は、国の未来を変えるのか――。

 

映画公式サイト:kinnokuni-mizunokuni-movie.jp
Twitter:@kinmizu_movie #金の国水の国 #最高純度のやさしさ

 
2023年1月27日追記:下記、鼎談オフィシャル映像が公開されました!

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