幻の『ドラえもん』たち
東京
ライター
来た、見た、行った!
かつらひさこ氏
好きな漫画はそれこそたくさんあるけれど、一番好きな物をどれかひとつと言われたら、おそらく『ドラえもん』を選ぶ。
笑ったり泣いたり共感したり、まさに「こんなこといいな」が描かれていて、子供の頃の自分にもう一度出会えた気持ちになるからだ。
先日『ドラえもん』のコミックスが約23年ぶりに刊行され、話題になっている。
ナンバリングは、何と「第0巻」。
小学館の学習雑誌6つ(『よいこ』『幼稚園』『小学一年生』『小学二年生』『小学三年生』『小学四年生』)それぞれで掲載された幻の第1話が収録されており、発売前から重版という人気ぶりだ。
筆者も近所の書店で「『ドラえもん0巻』品切れ、再入荷日未定」の文字を見た時、本が売れないと言われているこのご時世にとびっくりした。
数日後、コンビニにて入荷されているのを発見し、迷うことなく購入。
この巻には「ドラえもん誕生」という、この国民的人気漫画の出来上がるまでの漫画も収録されており、どちらかと言えばこちらが目当てだった。
藤子・F・不二雄先生が〆切直前になってもアイデアが浮かばず、「なまけていたわけじゃないのにどうしていつもこうなるんだろう」とギリギリまで苦悩しながら、かのキャラクターを生み出していく姿がユーモラスに描かれている。
(ご本人たちも「無責任な予告だった」と語る、「主人公が描かれていない伝説の予告」も収録されていて楽しい)
物を作り出す「生みの苦しみ」はどのジャンルも同じ厳しさがある気がして、笑いながらも何となく背筋が伸びたのであった。
一番最初と我々がよく知っている設定との違いも細かく解説されており、ドラファンでなくても必見の書となっている。ぜひ読んでみては。
プロフィール
ライター
かつらひさこ氏
1975年札幌市生まれ。自分が思い描いていた予定より随分早めの結婚、出産、育児を経て、6年前からライティングを中心とした仕事を始める。毒にも薬にもならない読みやすい文章を書くことがモットー。趣味はクイズと人間観察。