クリエイター大歓喜!『羅小黒戦記~僕が選ぶ未来~』に 最強の日本語吹替版が登場!
【羅小黒戦記】はロシャオヘイセンキと読み、昨年、海外アニメ……中国産のオリジナルアニメ映画として、阿佐ヶ谷ユジクの約50席をまるまる1か月以上連日埋めつくし、異例のヒットとなった映画だ。
その日本語吹き替え版が満を持して登場!ということで、2019年9月からひそやかに作品を支持してきたクリエイターたちは、今頃興奮冷めやらぬに違いない。
かくいう私も、2019年冬にはこの作品の名前を聞いていた。Twitterでアニメ関係者が「阿佐ヶ谷ユジクが埋まっている」とスケジュールをRTし、「すごい中国アニメが現れた」ことを叫んでいたのが最初だ。
気になって調べたとき阿佐ヶ谷ユジク(現在残念ながら休館中)のスケジュールは一か月分まるまる(売り切れの)「×」がついており、がっかりしたのを覚えている。ついで、最初に上映した池袋HUMAXがアンコール上映にこぎつけてもいた。
その熱量はすごく、リピーターも多かった。足を運んだ人が「字幕がよくなっていた」「向こうのスタッフが黒板に絵をかいてくれてる!」「パンフレットが作られた!(※海外ではパンフレットは普通ないので後で日本のお客さんのため作られた※)」などなどアップデート情報をあげてくれており、そのひそやかな人気の広まりはミニシアターならではのヒットの前兆――「ただでは終わらないぞ」という予感をさせていた。
そして……2020年!この11月、それが現実になった。
アニプレックスの協力のもと、【豪華】日本語吹き替えが登場!なのである。
その吹き替え版……スタッフの布陣や完成度も文句なくスゴイのだが、先にここでストーリー(ネタバレなし)について、軽く触れておきたい。
【ストーリー】
主人公は人間の自然破壊により森を追われた黒ネコの妖精、シャオヘイ。
居場所を失い、さまようシャオヘイを助けたのは同じ妖精のフーシーだった。
フーシーは人里から遠く離れた島にシャオヘイを連れていき、仲間に会わせて言う、「これからここは君の家だ」。
ところが、穏やかなときは長く続かない。
人間でありながら館に所属する最強の執行人ムゲンが、フーシーたちの動きを不穏に思い、現れたのである。
戦いの末、ムゲンはシャオヘイを捕まえ、フーシーたちは逃れる。
「人間と共存する妖精」と、その場所(館)の存在を知らされ、それでも反発するシャオヘイ。しかし修行を提案するムゲンに「強くなれば抜け出せるかもしれない」と思い、受け入れるように――。
徐々になじむ二人の旅が始まる。
一方、取り返しにくるフーシーは、かねてからの「ある計画」を実行しようとしていた。
妖精と人間と……
シャオヘイが選ぶ居場所とは――?
共存は叶うのか。
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【クリエイターを魅了する新しさと、懐かしさ】
テーマは「妖精と人間の共存」。
この手のテーマは日本アニメでも飽きるほど繰り返されてきているが、描写とスケールの大きさには間違いない「新しさ」がある。
文化の差が生む、広大さ。
静止画のポスターでは少しわかりにくいのだが、みずみずしい背景の景色や、迫力ある戦闘シーン。グラフィック・デザイン的な側面でも参考になるが、何より画面のダイナミクス!!
是非劇場に足を運びたい。
またコミカルな主人公たちのやり取り・美味しそうな食べ物は、どこかノスタルジーを感じさせる【馴染みのある】アニメーションなのに、それでいてやっぱり【新しい】。
御託を並べることは簡単だけれど、
この作品の魅力はシンプル!あれこれ吹き飛ぶくらい、主人公がべらぼうに可愛い!!
動きのすばらしさ・テンポを崩さないセリフの応酬とともに、ずっと見てられる=ずっと見ていたくなるキャラクターなのだ。
子供から大人までワクワクさせられてしまう。
なお原作、罗小黑战记(luó xiǎo hēi zhàn jì/ルオシャオヘイジャンジー)は、2D作画のFLASHアニメであり、この映画は前日譚にあたる。
アニメ手前の漫画原作が2009年・2011年から28話配信された個人制作のFlash製……とてつもない話だ。
何せFlashといえば今年開発も配布も終了するツール……
しかも個人制作……こちらも、いろいろな意味で感慨深いし、クリエイターとしては夢のある話でもある。
作品はYoutubeでまだ公開されているので是非こちらもチェックしていただきたい。
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【吹き替えで入る 新しい魅力】
知る人ぞ知る中国アニメ映画が、多くの人が楽しめる【最高の日本語吹替版】として生まれ変わった!
吹替の凄みは、制作体制からもうかがえる。
配給はアニプレックス・チームジョイのチーム。アニプレックスのプロデューサーは社内の人間からプッシュされてこの作品を知ったそうだ。
音響監督には数々の大作タイトルを手掛けてきた岩浪美和氏。
立体的な音響=イマーシブサウンドの制作に積極的であり、『BLAME!』を皮切りに『ガールズ&パンツァー 最終章 第1話・第2話』、『ニンジャバットマン』などでドルビーアトモスを採用し、広げている音響監督だ。
近年だと、『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』を受け持ち、特殊音響系については主要映画館に直接出向いて調節したという逸話がある。
一方で、ローカライズにも縁が深い。中でも有名なのは『トランスフォーマー』シリーズ、『X-MEN』、そして『スパイダーマン: スパイダーバース』(吹替版)だ。
日本語版の演出は…聞いてすぐわかることはもちろん、キャラクターの口との尺の問題もある。
今回の吹替版で驚いたのは、元がアジア圏のものだからか、違和感のなさ。
「まるで日本で作ったんですよ」と言われたら信じてしまいそうな、自然とのめり込ませる音作りは、彼をはじめとする制作布陣のなせる技。
主人公のシャオヘイの花澤香菜、ムゲン役宮野真守やフーシーの櫻井孝宏他豪華かつ、安定したキャスティングは作品を丁寧に見せる意気込みを感じた。
まさに、満を持して登場の『羅小黒戦記~僕が選ぶ未来~』【最強の日本語吹替版】
クリエイター必見の今作、ぜひ劇場で確認してほしい。
ちなみに個人的に、特別音響の上映を期待している。
蛇足になるが、より詳しい情報を知りたいのならば、以下の先行記事も併せてみてほしい。
チームジョイ株式会社(東京・渋谷)で代表取締役CEOを務める白金(パイジン)氏のインタビューほか、私自身聞きかじっていたことの裏付けができ、勉強になった。
ITmedia 中国アニメ『羅小黒戦記』ヒットの舞台裏