ミッション23「国旗検定1級をリベンジせよ」

ミッション23
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター / コピーライター
Akira Kadota
門田 陽

<猿でもできる前回の反省>

当クリエイティブ探検隊も開始からもうすぐ丸4年になります。その過去22回の中で唯一失敗に終わったのが今から3年前の「ミッション6 国旗検定1級に合格せよ!」でした。今回はそのリベンジ。失敗はできません。 合格するには全100問中78問の正解が必要。前回僕の正解は58問という不甲斐ない成績でした(※写真①)。あのときの経験と悔しさを思い出してと言いたい所ですが、妙に楽しかったことくらいしか覚えていません(苦笑)。試験日は10月17日(土)、今日はもう9月26日(土)、あれ!?あと3週間しかありません。このままでは前回の二の舞です。勉強にあてる期間は前回同様3週間、ただしコロナ禍で通勤時間や移動時間がほとんどないのでその分はかなり余裕ができそうです。またこの2年で国旗に関するものを見つけるとチェックする体質になっているため根拠のない自信だけはむやみに育ちました。さて、勉強開始です。

写真①

<猿にはできない現状の把握>

人は忘れる動物です。特に僕は忘れることについては抜群に自信があります。本棚の後ろから前回使用した蔭山英男氏監修の「辞書びきえほん国旗(※写真②)」を引っ張り出してまずは全197の国旗をチェック。旗のデザインだけ見て答えられた数は90カ国。前回の初見は65カ国だったので大分よいですが、試験のときには8割以上160カ国は覚えていたので、やはり相当忘れていました。ま、忘れるのは大得意なのでメゲはしないけど、これではまるでダメなのです。国旗と国名が100%一致してようやく全体の半分50問がクリア。国旗検定1級の場合、残り半分50問は国や国旗の細かい知識が試されるのです。前回はその辺の下調べなく勢いと猿知恵で何とかなると考えていました。そして思い切り木から落ちて多少気付いたことがありました。

写真②

<アナログでやってみる>

単純暗記には限界があります。若くフレッシュな脳はもう持ち合わせてないですし、そもそも勉強は不得意。たとえばアンゴラ(共和国)とアンドラ(公国)。旗と名前は一致しますが場所を聞かれるとわかりません。そこで全197の国の場所を世界地図で調べました。そして白地図を用意。1カ国ずつ色鉛筆で塗って国旗と一緒にノートに貼っていきます。1カ国1ページです。それが出来たらそれぞれの国旗を先ほどの参考書やネット等で調べて気になるポイントを書いていきます。このノートが計3冊半(※写真③)。これを作るのに丸2週間。随分手間がかかりました。おかげでアンゴラはアフリカの南部にあり国土は日本の約3倍、ダイヤモンドや石油などの地下資源豊かな国で旗には歯車と鉈(なた)が描かれ、一方アンドラはフランスとスペインに挟まれた屋久島ほどの小さな国で旗の紋章には牛が2頭描かれているという区別ができるようになりました。

写真③

英単語のスペル等と違ってこのタイプの暗記には手書きはかなり有効だと感じました。さらにこの自作のノートと別に自作の問題用紙も作りました。旗に動物が描かれている国を集めたものと、色の紛らわしい三色旗の縦バージョンと横バージョン。国名を赤で手書きしてAmazonで購入した大きめの赤シートで隠して覚えました(※写真④)。赤シートを使ったのは高校生のとき以来ではないでしょうか。ノートが完成して残り1週間はひたすらこのノートと問題用紙を繰り返しめくって記憶を定着させようとしました。反復作業です。

写真④

<万国旗を見たい衝動>

ところが僕はこの反復作業が大の苦手。同じことを何度も続けると心が息苦しくなってしまいいけません。加えてコロナでしばらく外出もしていません。試験本番3日前。とうとう気持ちが爆発して何も手につかなくなりました。そこで、一日仕事を休み感染対策を万全にして外へ向かいました。気分転換です。目的地は万国旗の下。子どもの頃に運動会の日、青空を下から見上げたあの景色を見たくなったのです。はい、まるで唐突。コロナ渦ですので運動会に巡りあうのは諦めて商店街を目指すことにしました。駅前などのザ・商店街なところには必ずというほど万国旗があったイメージですが、それはおそらく昭和の頃の話。過去の記憶や都内の商店街のホームページなどを頼って東奔西走しましたがなかなか見つかりません。品川区の戸越銀座商店街にも江東区の砂町銀座商店街にも以前はあったそうですが、今はありませんでした。それから山手線全駅前で降りて見てまわりましたが全滅。10月半ば、東京は日が暮れるのが早くなりすでに夕方。望みを京浜東北線沿線に絞り上野から鶯谷、日暮里、西日暮里、田端、上中里、王子と来て諦めかけたとき次の東十条駅で見つけました!念願の万国旗、しかも商店街いっぱいに張り巡らされています(※写真⑤⑥⑦)。唯一残念なのは既に夜で空が真っ暗だったこと。でも一日を費やした甲斐はありました。心はスッと晴れました。

写真⑤

写真⑥

写真⑦

<いざリベンジへ>

試験当日は朝から冷たい小雨が降っていました。試験は9時5分から。場所は今回も東京大学駒場キャンパス5号館(※その他に大阪、名古屋、札幌、福岡など全国9都市で同時開催だそうです)。早起きをして家を7時半に出ました。渋谷で井の頭線に乗り換えてスマホの国旗クイズアプリを見ていたら隣に座った6歳か7歳くらいの男の子が覗き込んできて僕より早く答えます。横からお母さんが「やめなさい、あ~、ごめんなさいね」と僕に謝りますがいやいや大丈夫です。彼も同じ試験を受けるいわば同期の桜。今回も受験生の8割以上は小学生。多くの子どもには保護者も連れ添っていますが感染対策のため試験会場には本人だけで臨みます。2年前は和気あいあいとした会場でしたが今回は全員マスクで静かでやや緊張感もありました。

<会場での出会い>

試験の開始時間まで控えの教室で待っていたときのこと。少し前に座る低学年の男の子がスマホで見ていたのは2年前に僕が書いたコラムでした。「それね、オレが書いたんだよ!」と名乗る勇気はなかったけれどテンションが上がりました。さらにそのあと、スーツ姿の係の男性が僕に近付いてきました。勝手に控えの教室の写真(※写真⑧)を撮っていたことを注意されるのかなと思いきや、「門田さんですよね?」と聞かれ「はい」と頷くと「門田さんの国旗検定の記事読みました。また書いてください」と言われ途端に打ち解けました。またさらにそのあともう一人、マスクで顔がわかりませんが40代くらいの男性が僕に近付いてきます。身構えていると「門田さんですよね、松下です」と言われます。うん!?同じ会社の同じフロアに勤める優秀な後輩の松下くんではないですか。「へ~松下くんも国旗が好きなの?」と思ったら小学生のお子さんの付き添いでした。そりゃそっか。試験自体は滞りなく行われました。試験時間は50分ですが小学生諸君たちは開始20分を過ぎる頃から次々と退室。僕は終了時間まで粘りました。2年前よりはよい手ごたえを感じましたが明らかなミスやまるでノーマークな問題もあって落ちたかもなぁ、と思いながらの帰途でした。帰り道、スマホで次回の検定開催日(2021年3月14日)を確認しました。

写真⑧

<結果発表。国旗検定の傾向と対策>

2年前はすぐ(1週間後)に結果がわかりましたが今回はコロナの影響もあるのでしょう。発表までに1カ月間かかりました(試験当日にそのお知らせはあったので気長に待ちました)。結果は100問中81問正解で無事合格(※写真⑨)。あ~、ほんとによかった。ジワ~ッとうれしくなりました。ところで国旗検定は3つの級までの同日受験が可能です。実は僕は今回、1級がダメだったときのこの探検隊の保険も兼ねて2級と3級も同時に受験しました。おかげさまでこちらのふたつも合格しました(1限目3級、2限目2級、3限目1級)。結果的にこの2級と3級を直前に受けたことが相当よかった。今回の勝因と言っても過言ではないかもです。

写真⑨

ここからは僕の勝手な予想ですが、おそらく試験問題を作るスタッフはどの級も同じメンバーなのではないでしょうか。今回3級の問題で「国の形のシルエットがデザインされているのはキプロスとどこ?」という問いがあり、2級の問題には「国の形のシルエットがデザインされているのはコソボとどこ?」というのがありました。これは1限目の3級の試験後すぐに確認したので2級のときには軽く解くことができました。同じように国旗の中の星の色や太陽のカタチ等を問う問題も2級3級を受けなければ直前に参考書を見直さなかったと思うので間違えたはずです。あと今回も1級の問題にはキューバに関することがでました。僕はコロナ直前の今年2月に仕事でキューバを訪れたのですが、それがなければ解けなかったと思いました。ラッキーでした。過去に行ったことのある国については自作ノートに参考書的な記述だけでなく個人的な思い出も書いたほうがその国に愛着がわいて試験の最中にもページを頭の中で復元できるのでオススメです。それから国旗検定は問題用紙を持ち帰れませんし過去問なども市販のものはありません。僕は今回「辞書びきえほん国旗」の他には「学研まんが 国旗のひみつ」や清水書院の「話したくなる世界の国旗」や河出書房新社の「世界一おもしろい国旗の本」を仕事の合間や寝る前に読みました。それと身の回りのノートやクリアファイルや下敷きなどの文房具を国旗仕様のものにして常に国旗を意識するような体制でモチベーションを上げました(※写真⑩)。

写真⑩

<再びあの場所へ>

合格の通知がメールで届いてすぐに思ったのは「あそこにもう一度行かなくちゃ!」でした。一カ月前とはまるで違う心持ちで訪ねたのはここ東十条商店街。空は快晴、天高く旗そよぐ秋です(※写真⑪⑫⑬)。あまりにも気持ちがよくてマスクは付けたままですが、上を向き万国旗に「ありがとー!」と声を出したら、女子高生が「キモい」と言いながら横切りました。ゴメンゴメン。

写真⑪

写真⑫

写真⑬

<おまけ 198番目の国>

僕はこの10年間、主に仕事で毎年3~4カ国は海外を訪ねていたのですが、コロナ禍でどこにも行けなくなりました。そしてこのリモートの期間(現在進行形)に世界地図を眺めたり過去行った場所の写真を整理したりスクラップブックをこさえたりするうちに妄想の国をいくつか作り始めました。架空の国の架空の土地で暮らすなぜか金髪の自分を電子黒板に書いては恥ずかしくてすぐ消しています。その妄想の国の中から一つだけ紹介したいので見てください。国名は「ニコポン」。「日本」とは双子の国で2025年、富士山の大噴火によって太平洋上にできた面積もカタチも現日本とそっくりな国。ただそこに暮らす人々は今の日本人よりもすこし穏やかでいつも笑っています。国旗はこれです(※写真⑭)。

写真⑭

プロフィール
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター / コピーライター
門田 陽
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター/コピーライター 1963年福岡市生まれ。 福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州を経て現在に至る。 TCC新人賞、TCC審査委委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。 趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

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