動画プラットフォーム(VOD)のお話
今回は、再びの緊急事態宣言でアレコレ見る機会が増えたので、VODサービスについて(市場のお話ベースで)ちょこっとだけ見ていきたいと思います。
動画配信サービス(VOD)とは一定の料金で見放題になる動画の配信サービスです。
有名どころは、AmazonPrimeVideo、Hulu、Disney+、Netflix……他にU-NEXT、FODプレミアム、DAZN、TELASA、Paravi、dTV等もあります。
携帯からテレビからパソコンから端末の選択肢も広く、サクッとみられて沢山のコンテンツを選べるので楽しめること請け合いですが、世界でのシェアはどうなっているのか?日本ではどういう流れになっていきそうかを簡単にまとめていきます。
まず動画配信市場5年間予測(2021~2025)レポートに紹介されている状況ですが、2020年の市場規模、国内はNetflix、Amazonプライムビデオ、U-NEXT、DAZN、Huluの順で伸びていました。
ただこの資料が発表された頃とはコロナの状況もあって「映画」と「配信」の開始時期が乖離している前提など……大分様子が違っているのも事実です。
また今でもまさにニュースになっていますが、Disney+をはじめ、配信スタート/配信と劇場同時スタートの映画を公開する制作・配給会社が増えてきました。
劇場に足を運ばない分、VODが伸びるか?というと、また別の話かもしれませんが、確実にこれまでとプラットフォーム事情は変化していくことが伺えます。
一つはより早く、スタートの作品を独占できるかという点に注目が集まるからです。
また現在『ブラック・ウィドウ』の封切についてスカーレット・ヨハンソンが訴えている通り、「契約」の問題もあります。コロナが長引いて、劇場公開優先のスタンスが崩れることが常態化すると収益構造も変わってくるでしょう。
そうなると、会員側のお金のかけ方(現在劇場公開同時作品については、映画ばりに別途料金が発生することが多い※)も変わってくると思われます。
同時に、現在どのプラットフォームも力を入れているのが「ローカルカスタマイズ」と「提携も含めた自分のところでの制作」です。出資をして、いいコンテンツを買うだけでなく、提携先、ローカライズを考えながら各国で制作をしてしまう……そのことが独自性=集客力を与えるという思想です。
実際映像関係の片隅で仕事をしていると、「既存のプラットフォームよりも、VODプラットフォーム自らの制作の方がコストも時間コストもちゃんとかけている」という声がちらほら聞こえてくるようになりました。セットの凄さや、一部の豪華なキャストのためではなく、制作の座組そのものがそれぞれのプラットフォームと、それを持つ親会社の国・文化に準じている部分は少なからずありそうです。
現状、日本の動画配信市場の成長スピードでいくと、2025年にかけて年平均11.1%の成長率を見せ、2025年には6,583億円という試算が出ていますし、儲けが見込めるからこそ「投資」も増えます。またNetflixについては8月末から9月にかけて(実際はもう少し前からですが)制作陣向けのアンケートや意識調査がとても増えたように感じています。
現場の人間がどう動いているか、何を大事にみており、どのコンテンツへの手ごたえを感じているか……質問が細かい分、狙いが分かりやすく思いました。
ローカライズについては、各所力をいれている様子がうかがえますが、実際世界規模でみるとVOD市場はどうなっているか……此方も軽く確認してみました。
まずVOD市場は欧米特に北米で高い普及率となっています。
アメリカではNetflixの加入率が60%以上ともなっており、カナダでも45%を超えています。ヨーロッパ、イギリス・イタリアのSky系列などこちらに来ていないサービスもありますが、いろいろな形でVODが広がっているのは事実です。
ではアジアではどうかといいますと、実は中国こそ、北米市場を始めて上回り、デジタル動画の市場規模首位にたっています。
というのも、中国はグレートファイヤーウォールといわれるインターネットの検閲システムが存在し、国民に対して都合の悪い情報をなるべく出さないように防いでいる状況があります。
そもそもネット関連、他国のサービスは入りにくいのです……。
中国のファイアウォールは強固なので、有名なところでいえば、YoutubeやTwitterは基本的に中国では見られませんし、VODについても同じ。またその為見るにせよVPNを通す前提になってしまうので、反対に、VOD業者側がVPNやプロキシからのアクセスをブロックする方針をとった瞬間に見られなくなります。
現在は多少緩和されて、Netflixもいくつかの有料VPNを通してならば見られますが、いつまでもつか分かりません。
アジア圏最大の市場である中国については、このようにそもそも「中国側」のサービスでないと太刀打ちできない状況が付いて回ります。
その利点をいかして、中国制作の動画配信サービスが出てきて、アジア圏を席捲しているのが2021の状況です。
有名どころはテンセント(腾讯)の腾讯视频。日本版も字幕が付くのが遅いなどはありますがアプリが出ており、WeTVという名前で知られています。他にiQiyi(爱奇艺,愛奇藝) などYoutubeの有料/無料チャンネルとうまくミックスして海外にアプリ連携のサブスクで売り出されています。
アジア圏ではこの破竹の勢いに地元の動画配信サービスが疲弊し、テンセントに買い付けられる例が出てきています。例えばマレーシアの「アジア版ネットフリックス」として名高いアイフリックスもそのうちの一つです。
テンセント自体が中国内でアリババや、百度系との競争があることもあり、海外市場へ目が向いている様子もあり、今後中国関連の動画プラットフォームも伸びていくでしょう。
キーになるのが言語対応とローカライズです。、Netflixの先程のアンケート話も……Netflixが地元企業と組んだ独自番組を作り、利用者を少しずつ伸ばしてきた流れを作ってきたことから、「次への一手」として、日本のみならず、伸びそうな地域に向けて動いている現状の表れだと思います。アップルのアップルTV含め、巨大企業が注力しているVODの流れ……規模が大きくなりコンテンツがよくなるほど地元企業=国内の企業はプラットフォームという意味では戦えなくなる部分もあると思います。
逆に「制作」「コンテンツ」自体を持っている場合は、それが目当てなので、よそに流れません。全体的にハードウェアからソフトウェア、プラットフォームからコンテンツへの流れを感じています。
・いいモノをちゃんと出していく
・ローカライズ×世界規模を見る
VOD市場の拡大を切っ掛けに「なんとなくメジャー×国内」から「ニッチでもよいものを世界へ」という流れに期待しています。
といいつつ、個人的には映画を劇場で見るという体験もとても好きなので、それはそれでどうなるか心配もしています。
はやく安心して映像を外でも!皆と!楽しめるようになりたいものですね。
また、ハードの側面は「音」に注目が集まっているのですがこれはまた別の機会にお話したいと思います。
今回はちょっと長くなってしまいましたが、ここまで!
次回はゆるっとアジアの広告話等できればいいなぁと思っています。