機械を知る
ある程度編集になれると、現場では様々な機械やソフトファイルの規格になれる必要が出てきます。更にそこがわかってくると現場の撮影状況や、機材についても少しだけかじっておきたい気持ちになることも。
ポスプロなど編集の箱でひたすら作業するエディターになる場合は(ノータッチでも)いいのですが、今は特に小さなプロダクションで自分で撮影から行う、ないし、部分的に撮影にも入る案件がでてくると思います。
機材を教わりたい、少しでもわかりたい――とはいえ、なかなかとっつきづらいところ。
そこでおすすめなのが一日でざっくり何が撮影・放送に必要かわかって、今後どういうものが流行るか見られる場所 展示会です。
コロナ禍で、オフラインのイベント=展示会が長い間封印にあっていましたが、今年は少しずつ立て直しています。オンラインイベントをメインに据えることのしやすいソフトの展示会はまだいいのですが、機材は触ってなんぼ、試してなんぼなところもあるため、今年早速再開していました。11月17日から19日のInterBEEがその最たるものです。
InterBEEは、CEATECと並ぶ二大機材祭典です。特にInterBEEの方がソフトを扱う側面では新しい情報に満ちています。編集としては、この先どんなタイプの素材が増えそうか、どういうソフトが主流になるか、今後の動向を読むのにも便利です。例えば少し前の話でいうと4Kがどれくらい主流になるかなどは、InterBEEでつかめました。
「4K撮影機材」でなく、「4Kを編集できる機材」が初期は間に合っていなかったのですが、その後PC・サーバー側の管理ソフトなども含め4K対応の機材が次々現れるタイミングがあり、そろそろ全般的に4K製作が始まるなという流れが読めたのです。
※裏は3D背景
今回の展示ではUnreal Engine(3D)の背景とプロジェクターの連携がそこかしこでみられました。3D投影したものをそのまま背景として使えるようになっているデモンストレーションです。予算間の問題はありますが、場合によってはロケより安く、かつ自由度が高いため、背景をCGで賄う流れは増えるとみられます。少し前からソフト側はUnity・Unreal Engineともにゲームのみならぬ映像の背景として扱う流れがでてきていましたが、プロジェクタが出て実寸でそのまま撮影に用いることができるようになるため、フレキシブルなものとして使われる可能性が高まったといえるでしょう。
編集者側でみれば、編集は今後撮影素材だけでなくて、この際の背景素材との連携や制作含めて、制作ソフトを3Dソフト側へも渡らせる勉強がマストになるかもしれません。4K・8Kなどの画質・画像の高まりから、デジタルサイネージなどの別の投影へのブースの入れ替わりも見受けられました。
また今回は音響関連や3D音響などの部分での広がりもありましたが、やはりこのご時世なので「配信関連」が全て増えてきたなという感じがします。スイッチャー、画面コントローラ系はミニマムなものも多くなりました。少し前はYoutuberやBloggerなど向けのカメラなどが幅をきかせていて外へ外へが大きく取り扱われていましたが(規模的に個人向けが増えたためそこは減ってはいないのですが)それ以上に配信機材と有料配信サービスなどが増えてこの先流行るジャンルが見て取れます。こうして今と、次にどういう部分が編集に関係するかを展示会はリアルに伝えてくれます。
ほかに、現在の状況では、会社はもちろん社会にも出てこない最新技術の応用を一歩も二歩も先に知れるという利点があります。
今回の展示で私はチェックしたのは明治大学の「味覚ディスプレイ」です。
なめると味がするディスプレイなのですが、これが結構すごかったです。体感できる時間があって、やってみました。粉末で調整しているようなのですが、仕組みはそこまで理解できていません。ただチョコレート、りんごと、ピザをためしたのですが、匂いまで少しします。今の段階でなんだかわからないけれどきっと何かに応用されていくなという感覚を知るのはとても面白かったです。
次に注目していたホログラムコンタクトも体験はまだですが興味深く拝見しました。コンタクトでVR世界的が覗き見られたとなるとなると、Oculous的なゴーグルも眼鏡もなしにVR・ARはもっと進むかもしれません。
これら研究成果がみられるブース群に、落合研究室の透明ディスプレイ、しゃべるとAIが解析して字幕でみられる現物がありましたが、精度が完璧でびっくりさせられました。Nextレベルのものでいうと、これが今一番現実にはやく普及するでしょう。
こういう新しい技術がみられるのも、次のサービスへのヒントになると思いました。
今回は3日間のイベントのうち1日だけの参加でしたが、おしまいに関係者やこういうことに興味のある深いメンバーとの交流ができて、充実した一日でした。編集は内側でやることが多いですが、その外の世界にこそヒントや次に勉強するべきことが転がっているように思うので、籠らずどんどん外に出る時間も大事にしていきたいものです。