映像2021.12.10

瑞々しい若手俳優の演技を終始楽しむための映画『衝動』

東京
映像編集&コピーライター
秘密のチュートリアル!
野辺五月
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久々に渋谷らしい渋谷を見た。
まず最初の感想はそれだった。コロナ禍のせいなのか、こんなに人が多い渋谷は久しぶりだ。ありふれた東京が懐かしく感じる。
人混み、雑踏、若者、汚いと新しいの入り混じるカオスな絵。
街並みがとても絵になる。そういえばこんな感じだったと少しだけ哀しい気持ちで鑑賞を終えた。
今、渋谷を描くときは、勿論大分戻ってきているけれど、大変だと思う。
ファンタジーとして元の世界線にするのか、がっつりコロナ後ないし最中に定めるのか。今回の話は一応コロナを踏まえていながらも、ちょっとその辺を曖昧な感じにしていたようだけれど、「懐かしい」印象が強かった。

舞台は2020年、違法薬物の運び屋として働く少年ハチ(倉悠貴)と、あるトラウマから声を出せなくなった少女アイ(見上愛)。良くも悪くも典型的なボーイミーツガールものである。少年は少女に恋をし、現状を顧みる。自分を変えたいと思い、動く。不器用に進みだす。が……。
後は本編を見ていただければということで、敢えて濁しておくことにしよう。

ヒロインが魅力的で、斜に構えた空気から見た目もとてもよい。
まっすぐな主役二人に恥ずかしくなるようなシーンもあるし、予想はついてしまうけれど、どうにも目を離せない瞬間を持つ役者が多く……正直なところ、役者たちのはじめの(ないし、初期の)映画作品として後々取り上げられるのではないだろうかと、こっそり思っている。
他にもなかなか凄まじい役どころにトライしたショウヤ役の見津賢の怪演は見ものであるし、園子温監督・岩見美映監督の作品などが控えているユウコ役:錫木うり――彼女も監督らによるチョイスされる所以の分かる、いい意味でえぐい側面を見事に体現した演技をしている。またハチの唯一の友人で同じく運び屋をする少年:ナイキ役の工藤孝生、出番はそこまで多くないが爪痕を遺す不思議な透明感のヒナ役:池田朱那。そしてキーパーソンになる兄ヒカル役の川郷司駿平など、恥ずかしくなるような青春ど真ん中の叫び、痛みを瑞々しく演じている。
はっきりいってこれからどんどん活躍していくであろう俳優たちを、ここまで集めきった作品もなかなかないと思う。
言い方はわるいが、俳優の青田刈りをしたい方にお勧めの一作だ。

カメラは独特で、撮影の仕方だろうか?どこかドキュメンタリーのような生感が出てくる時もあれば、切り取りたいと思うようなMVのように美しい一瞬もある。
歪な部分もあるが、それこそが狙いなのろう。
欲を言えば脚本は語り過ぎのきらいがあるのが残念だった。演技のできる役者がそろっているので、もう少し間をいかして、言葉でなく、見せる演技に託してもよかった気はしないでもない。ただ若者の『衝動』に相応しい作品に仕上がっていた。

 

映画『衝動』


STORY

舞台は2020年の東京・渋谷。名前を失った少年、声を失った少女。

絶望し、社会の片隅に生きる孤独な二人が出会い、物語が動き出す。

その出会いは罪か、罰か、それとも―――。

 

CREDIT

倉悠貴 見上愛

見津賢 錫木うり 工藤孝生 池田朱那

川郷司駿平 山本月乃 佐久間祥朗 三村和敬

村上淳

 

監督・脚本・企画:土井笑生 音楽:Day on Umbrella

撮影:茅野雅央 照明:石川裕士 録音:黒沢秋(BLAZE LEGION) 美術:前田巴那子

スタイリスト:大石真未 ヘアメイク:飯塚七瀬 助監督:遠藤航哉 スチール:senobi

製作:映画「衝動」製作委員会 配給:SAIGATE

2021|日本|シネマスコープ|ステレオ|DCP|R15+|117分 

©映画「衝動」製作委員会

公式HP:https://saigate.co.jp/shodo/

公式SNS:Twitter(@filmshodo2020)

プロフィール
映像編集&コピーライター
野辺五月
学生時代、研究の片手間、ひょんなことからシナリオライター(ゴースト)へ。 HP告知・雑誌掲載時の対応・外注管理などの制作進行?!も兼ね、ほそぼそと仕事をするうちに、潰れる現場。舞う仕事。消える責任者…… 諸々あって、気づけば、編プロ・広告会社・IT関連などを渡り歩くフリーランス(コピーライター)と化す。 2015年結婚式場の仕事をきっかけに、映像畑へ。プレミア・AE使い。基本はいつでもシナリオ構成!のひと。コロナで趣味の飲み歩きができず、近場の映画館へ入り浸り中。

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