映像2022.04.21

頭でっかちを避けるマーケティングの実験

飯能
映像何でも屋
秘密のチュートリアル!
野辺五月

前回は、トレンドチェックの仕方と、マーケティングについて書きましたが、今回はその購買行動について予測後「確認をしにいく話」です。
いったことのある場所だとあまり意味がないので、始めての場所/かつ、事前情報をこの手前まであまり入手していない場所で確認しようと思いました。
決めた行き先は、飯能の「ムーミンバレーパーク」です。
ニュースで見たけれど熱烈にいきたいわけではなく、かつ、どこだっけ?というレベルだった為、「熱心には狙っていない層」「けれど嫌いではなく、潜在的には顧客になる層」として自分を位置付けています。

 

さて、フィンランドの森を模した牧歌的な空気・都心から少しはずれた場所にある・アトラクションとショッピングモールがあるムーミンバレーパーク。価格は大人3200円/子供2000円。
昨年末リニューアルしたばかり。コンセプトは「Well-being」=「心もからだも心地よい状態を継続すること」だそうです。(ざっくりHPから調べました 参考:https://metsa-hanno.com/

その他軽い検索と、行った人の声を収集すると、
・子供向けのアトラクションが多いため、中は子供連れが多い
・価格1Dayなので、土日の午前が混みそう
・内部のカフェ・レストランと、外部併設施設が分かれているが収容人数がちょっと読めない
・アクセスは悪くなさそう。
といったことが掴めてきました。

更にそれらを加味して、自分なりの予測として、テーマパークとしては狭そう/買い物と写真が目当てが多いかもしれないことを追加。
駄目押しに、ターゲットの1軸になりそうなムーミンのヘビーユーザー七名ほどにきくと、既に経験済み/そうでないと割れはしましたが、「コロナがなければ(再び)行っていた」という答えが多く、ほぼ全員が興味をもっていました。

私自身は「絶対囲い込みたい層ではなく、まあ来てくれるようになるといいという層」にあたりますが、彼女・彼らの熱量を見ていると、狙いとしては悪くないのではないかと思いました。

実際はどうなのか?
どういう層が多く、どういう人気/どういう行動パターンが多いのでしょうか。
確かめられる範囲ですが、一日ポイントを回りながら観察すると、予想と違う部分が沢山ありました。

まず根本的なところですが、アクセス面。
これは公式サイトを含めて載っている中身の印象からは少しずれていました。
ムーミンバレーパークに行くためには基本的に2つの駅からバスがでている予定でした。
しかし、これが仕方ないことなのですが、コロナの影響で片方が取りやめになっています。
そのうえ、鉄道が違う経営母体なので横の繋ぎはありません。取りやめられた側についてしまうと、必然的にタクシーを使うしかなくなります。しかもタクシー乗り場は小さく、車の数は多くありませんでした。
私は歩いてみることにしたのですが、これが大失敗で、予想時刻よりも長くかかりました。(アップダウンが多少あるためだと思いますが)
帰りは逆側から帰りましたが、こちらは快適で、直通のバスもしっかり通っています。
ただし来てる人たちをみると、マイカーの方が多く、併設の温泉施設や、ショッピングモールなどをみるに、車需要がベースであることが伺えました。


次に、ムーミンテーマパーク「ムーミンバレーパーク」は、上記した北欧の生活をテーマにした複合施設「メッツァビレッジ」と合わせてメッツァというテーマパークの形をとっているのですがそこそこの規模がある湖を中心に周辺を小さ目のショッピングモール(北欧と地産地消のものをベースにしたもの)レストラン群、温泉&休息できる施設と小さなムーミンのテーマがまとまり、一体化しているので、どこまでがテーマパークなのか、入場料がかかるところなどの差は思った以上に分かりにくいものでした。
ムーミンバレーパーク側だけでなく、入口周辺、外側のエリアにもハンモックや遊具・ボート遊びなどもあり、ますますわかりづらいものになっています。
利点でいえば、全体の雰囲気を統一しているため、世界観に浸りやすい・休日の演出としてのうまさがあります。全体的によく設計され、統一された世界観は「SNS映え」等も狙っているのではないでしょうか。
子供向けなのだろうという予測どおり、平日ですが、(小学校前であろう)子供が多くつれてこられていて、中のイベントや施設もアスレチックやショーなど子供向けのものが多くあります。一方で、北欧好き・ムーミン好きがゆっくり楽しめるように、カフェや散歩をするだけでも楽しめる自然豊かなエリアがあり、歩いた後の温泉という流れも、行ってみると時間の経過を考えられているように思えました。
この手のテーマパークとして比べられるものの予測として、ジブリ美術館を想定したのですが、ある意味で当たっているようでした。
予想と違って吃驚した二つ目はムーミンバレーパークの内外の人数比率です。
チケットの制度上、出入りが自由なせいもあるでしょうが、思ったよりも外側の方が人が多く、子供たちも芝生や遊具などで遊んでおり、盛り上がっていました。
カフェも中にも勿論人はいたのですが、外側の地産地消をいかしたモール側にわりと集中していたように見受けられます。また収容できる人数も外側のレストラン・カフェ群に方に軍配があがりました。
その分、中が変な混み方をせずにいること、ショップがいくつか点在しており、買い物客の分散がうまいこといっていることなどが見られました。
あくまで個人の感想ですが、アップダウンのある部分/林の中を移動する部分もあるにはあるのですが、いい塩梅で歩きやすい道も用意されており、子供連れにはありがたいことにバリアフリー部分多くを占めているのはさすがだなと思いました。
パーク自体が早めに閉まること、あくまで外=自然がベースで、雨の時の楽しみとしては美術館といくつかのアトラクションのみになってしまうことはありますが、外のショッピングも含めてであれば成り立つのでしょう。
中の美術館は見ごたえがあり、展示も小まめに変わりそうでしたので、工夫次第だとは思います。登戸の藤子・F・不二雄ミュージアムあたりとも比べてみると共通点がみえてくるのではないかということに後後気づかされました。
なお、テーマパーク分析はそれ自体、実はさまざまな形で行われているので、その分析をもとに行くという方法もとれます。企画会社やマーケティング会社、専門家であればそちらも抑えるべきなのですが、今回はあくまで制作のためにトレンド等に「どうあたりを付けて」「どう情報をとるか」……特に「好きな層が、どうやって楽しむか」に注目してのものです。

前回「実際にやってみる」ことと、「ターゲットの導線をなぞる」ことが大事だという話を書いたのですが、まず自分の目で「そこそこ興味のある層ならば気にするところ」を一通り見て、良い点・悪い点を分けた後……私は改めてコアになりえる層(ムーミンのファン層)ならばどう動くかを予測し、実際に通った人・行こうとしている人に確認してみました。
必ず行くだろう施設・する行動・しない行動・気になる事柄……
当然ではあるのですが、予測精度は上がっていました。
こういった場合、好奇心をもって、実際体験をしてみる中で、似ているパターンを複数観察することが大事だと考えています。
大分前になりますが、私は、「とあるテーマパークのリニューアル」をテーマに、実際に企画の仕事をしている代理店の方と組み立てる講座に行ったことがあります。基本は何でも同じで、自分の予測はあくまで自分の範囲でしかないと思い知らされました。
例えば自分が三十代公務員・男性・独身だったとして、ターゲットが例えば友人の多い大学生・女性だとして、完全になり切ることはなかなか難しいです。そこで、やはり予測はしながらも、実際にきている人を見て、予測と予想の修正をしていくことが大事です。これは何かコンテンツを作る側にもいえることで、有名なシナリオライターや企画者は、ターゲットが沢山いる場所にいって張り込んで盗み聞きをすることが多くあるそうです。しかもなるべく多く、思い込みではなく、冷静に情報が取れるまで何度でもです。

これは、私達映像制作者が作る動画が誰の為の動画か?誰のための広告か?どんな導線・どんな条件に置かれるのか……に通じる話だと思います。
完全にはできないので、制作の手前か後にアンケートや実際の調査もすることはありますが、そんなに大げさにはしなくても「そこそこの予測」は出来るものだと考えています。
ちなみに私は、「全く自分が興味のないもの」はほとんどないのですが、それでもターゲットとの共通項がないときは潔く仕事をあきらめるか、ターゲットと共通項の多い友人や知人の動向を観察することから制作を始めます。
この辺は人によってやり方にも向き不向きがあるので、必ずそうしろとはいいません。
が、普段の買い物傾向や好きなものの傾向などと合わせて調査をすると、予測の精度は高まります。
例えば「美しい映像」が好きな層に向けて、美しい映像のCMを取るのは効果があると思いますが、その層に対して響かない「自分が好きな、心地よいと思う制作」を始めてしまったら、少なくとも広告の映像としては失格だと考えています。そういう点においても、一旦手を止め、足を動かして調査……というのも、わりとよい手ではないでしょうか。
今回はマーケティングの実験と、答え合わせをしてみるの巻でした。
次回はインタビュー動画の話をしようと思います。

 

※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

プロフィール
映像何でも屋
野辺五月
学生時代、研究の片手間、ひょんなことからシナリオライター(ゴースト)へ。 HP告知・雑誌掲載時の対応・外注管理などの制作進行?!も兼ね、ほそぼそと仕事をするうちに、潰れる現場。舞う仕事。消える責任者…… 諸々あって、気づけば、編プロ・広告会社・IT関連などを渡り歩くフリーランス(コピーライター/ディレクター)と化す。 2015年結婚式場の仕事をきっかけに、映像畑へ。プレミア・AE使い。基本はいつでもシナリオ構成!2022年は現場主義へ立ち返り、演出・構成をメインに活動。 「作るために作る」ではなく「伝えるために作る」が目標。早く趣味の飲み歩きができるようになって欲しいと祈る日々。

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