映像2022.05.26

映画ソムリエ/東 紗友美の”もう試写った!” 第11回『サバカン SABAKAN』

Vol.11
映画ソムリエ
Sayumi Higashi
東 紗友美
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『サバカン SABAKAN』

▶季節が密封されている!ズバリ夏、満喫度:100

人生の休暇が必要だと感じている、癒やしを求める人にオススメ!

 

海に行きたい。夏を感じたい。
いますぐに飛び出したくなる、仕事の前には絶対に見てはいけないタイプの映画が誕生しました!

日本アカデミー賞 最優秀作品賞に輝いた『ミッドナイトスワン』を手掛けたCULENの送りだす新作映画『サバカン SABAKAN』の舞台は1986 年の長崎です。
長崎県の長与町という海と山の景観豊かな長閑な町でこの映画は撮影されました。
2人の少年たちはある夏の1日“イルカを見るため”に冒険にでることになりました。
友情、それぞれの家族との愛情の日々を描いた子どもたちが主人公の青春映画の誕生です。
草彅 剛さんのやさしい声色は、どこか夕涼みのような心地よさを感じられる役割を果たしてくれていました。

80年代という時代を通して映し出される、貧しさの中にある人の温かさと優しさに触れる作品として、今をせわしなく生きる大人たちにとってノスタルジーを感じる、かつての自分に背中を押されるような物語に仕上がっています。
劇中に散らばる夏を彩るパズルのピース。あなたの心に残るものを、映画を観ながらかき集めてみてほしいのです。
タンクトップ、冷えた麦茶、夏休みの前の通信簿、蝉の声、扇風機、麦わら帽子、肩から下げた水筒、カブトムシ、二人乗りの自転車、海、鮮烈な太陽、そして茜色の夕焼け…。夏の手触りが随所随所にあふれています。

この季節特有の開放感をあじわうのは、生きづらさからの解放にも繋がっているようです。
日差しを浴びたわけじゃないのに鑑賞後には日焼けした感覚になっていました。
心身のソーラー充電が完了したような体感です。


「物語は創作でありながら、自分の幼い頃の体験や、登場人物にもほぼモデルがいます」
本作で映画監督デビューを飾る金沢知樹氏は語っています。
誰かのパーソナルな思い出でありつつも、まるで自分の過去の出来事のようにさえ思えてくるのは夏の魔法なのかもしれません。

『菊次郎の夏』、『スタンド・バイ・ミー』、『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』。
夏は、少年たちの冒険の季節です。
戻れない追憶の日々でも彼らの瞳を通してならば、私たちは子供時代をもう一度取り戻せますよね。

この映画もまた、私達を”あの日”に連れ出してくれる、記憶の旅にいざなうタイムマシン系映画です。
今を生きる我々が思い出という名のフィルターを通し、自分を見つめ直し、また今日を生きるための糧にする。
こういう時間が大人たちはやっぱり必要だと思うんです。気がつくと、しずかに涙が流れていました。

高級な食べ物でも、手に入りにくい食べ物でもない。
どこのスーパーにも陳列するごく普通のサバカンを見かけるたび、私は少年たちの笑顔を思い出している。
サバカンの旨味が、わたしの口の中にまでひろがった。

五感を刺激してくれるこの映画に私は十分すぎるほどに癒やされていました。

 

映画『サバカンSABAKAN』
2022年8月19日(金)全国ロードショー

ストーリー
1986年の長崎。夫婦喧嘩は多いが愛情深い両親と弟と暮らす久田は、斉藤由貴とキン消しが大好きな小学5年生。そんな久田は、家が貧しくクラスメートから避けられている竹本と、ひょんなことから“イルカを見るため”にブーメラン島を目指すことに。海で溺れかけ、ヤンキーに絡まれ、散々な目に合うが、この冒険をきっかけに二人の友情が深まる中、別れを予感させる悲しい事件が起こってしまう…。

番家一路 原田琥之佑 尾野真千子 竹原ピストル 

村川絵梨 福地桃子 ゴリけん 八村倫太郎(WATWING) 茅島みずき 篠原  篤 泉澤祐希 

貫地谷しほり 草彅剛 岩松了

監督:金沢知樹 エグゼクティブプロデューサー:飯島三智 小佐野保/

プロデューサー:佐藤満 高橋潤/脚本:金沢知樹 萩森淳/音楽:大島ミチル/音楽プロデューサー:丸橋光太郎/ラインプロデューサー:福田智穂/監督補:小川弾/撮影:菅祐輔/照明:渡邊大和/録音:田辺正晴/美術:岡田拓也/装飾:佐藤孝之/衣裳:松下麗子/スタイリスト:細見佳代/ヘアメイク:永嶋麻子/スクリプター:外川恵美子/助監督:新谷和弥人/制作担当:林みのる/編集:河野斉彦/制作プロダクション ギークサイト

主題歌:ANCHOR「キズナ feat. りりあ。」(VIA / TOY’S FACTORY) 

撮影協力 長与町 時津町 西海市 島原市/長崎県フィルムコミッション

助成:文化庁/文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会

宣伝:モボ・モガ/配給:キノフィルムズ/製作:CULEN ギークサイト

©2022 SABAKAN Film Partners

プロフィール
映画ソムリエ
東 紗友美
映画ソムリエ。女性誌(『CLASSY.』、『sweet』、『旅色』他)他、連載多数。TV・ラジオ(文化放送)等での映画紹介や、不定期でTSUTAYAの棚展開も実施。 映画イベントに登壇する他、舞台挨拶のMCなどもつとめる。 映画ロケ地にまつわるトピックも得意分野で2021年GOTOトラベル主催の映画旅達人に選出される。 音声アプリVoicyで映画解説の配信中。

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