映画ソムリエ/東 紗友美の”もう試写った!” 第21回『断捨離パラダイス』
『断捨離パラダイス』
▶自分の心も軽やかに!ごみ屋敷がキレイになる爽快度:100
断捨離して負の感情を手放したい人にオススメ!
突然だが、みなさんの家は、捨てられないものでいっぱいになっていないだろうか?
今回は、ごみ屋敷を題材に「捨てられない」人たちの生態をリアルかつコミカルに描いた映画「断捨離パラダイス」をご紹介する。
あらすじ
ピアニストの白高律稀はある日突然、原因不明の手の震えによりキャリアを断たれてしまう。ピアノに人生を捧げてきた彼は、絶望から立ち直るべく、たまたまチラシで見かけたごみ屋敷専門の清掃業者「断捨離パラダイス」で働くことを決意する。破天荒な上司と、様々な事情を抱えた依頼者たち。華やかな世界から一転、律稀は想像を絶する世界を目撃していくことになるのだった。
本作のメガホンを握ったのは『夜を越える旅』(2021)でSKIPシティ国際Dシネマ映画祭にて優秀作品賞と観客賞をW受賞した新鋭監督・萱野孝幸。
ピアノの夢をあきらめて清掃業者に転職した主人公の律稀を演じるのは、1,500名の中からオーディションで選ばれた、『サマーフィルムにのって』(2021)などに出演する次世代俳優の篠田諒が、『男はつらいよ』『岬の兄妹』(2019)などで知られる北山雅康演じる名物社長と共に数々のごみ屋敷に挑んでいく。
クセの強いゴミ屋敷住人を怪演するのは泉谷しげるや中村祐美子、また元AKB48の武藤十夢が秘密を抱えた小学校教員を演じ、多面性を持つ人間の複雑さを愛おしく演じきる。
登場するゴミ屋敷の数々は期待以上に”ちゃんと”汚い。その汚さはセットされたものといえど強烈!
制作チームが約2カ月かけピアノや電子レンジや冷蔵庫などのごみを集め続け、生まれた数々のごみ屋敷。
そんな場所がきれいになっていく映像としての変化も興味深い。
ごみ屋敷部屋と、実際にきれいになった部屋は同じセットだからこそ、爽快感もひとしおだ。
特に注目なのは泉谷しげるの住居となるごみ部屋。10日間かけて準備されたそうで、その迫力に注目してほしい。
また、清掃業者の裏側を覗ける発見的なたのしみも。
そして、この映画は、内面にもたらすものが個人的には大きかった。
今日はちょっとだけ私の話を聞いてもらおうと思う。
第三者から見ると、私はキラキラしている存在だと思われているのかもしれない。
でも実際は全然違う。ほんとのところ、毎週何かしら自分が嫌になってしまうくらい、自分に納得がいっていない。
正直、週1くらいのペースで生まれ変わりたい気持ちになる。
そういう時にはとっておきの方法があることを私は知っている。
魔法のカード。それを使って、私は決まって服を買う。コスメを買う。アクセを買う。
新しいものは、きっと私をここではないどこかに連れていってくれるし、ほんの少しでも新しい自分にしてくれる。そう信じてやまなかった。
溜まっていくコスメ、洋服の山。選択肢が増えたはずなのになんだか全然豊かじゃないことに、本当は気づいている。そしてある時、残念な真実に直面する。
「あれ?私あんまり変われてないんだけど」と。
でもこの映画を観てハッとした。捨てた時にこそ、見えてくるものがあること。
自分をちょっと変えたい時、新しいものを身につけるのではなく、捨てるという行為を選択してみる。
その瞬間に、本当に選び取りたかったものは何か、見えてくる。
ああ、そうだった。何かがうまくいかない時はきまって部屋がものであふれてる。
手放すことで手に入れられるものがあること。捨てた時にも、新しくなれること。
その可能性に触れられる映画になっていた。
ごみ屋敷の住人たちが、断捨離後にどんな表情をしているか是非見てほしい。
何を思い、どんなあたらしい1日をはじめるのか。
この映画で私は、ごみをたっぷり見た。それでも、観賞後には晴れやかな感情でいっぱいだった。
『断捨離パラダイス』
2023年6月30日(金) 全国公開
篠田諒 北山雅康
武藤十夢 中村祐美子 関岡マーク
泉谷しげる
プロデューサー/宣伝:中村祐美子
撮影:宗大介
録音:中堀良栄
音響:地福聖二
美術:稲口マンゾ
音楽:
衣装:松竹衣裳
ヘアメイク:西野黎
助監督:長谷川テツ
スチール:近藤悟
メインビジュアル:岡田賢
配給:クロックワークス
監督・脚本・編集:萱野孝幸
企画・制作:KAYANOFILM
エグゼクティブプロデューサー:濱田優貴
プロデューサー・宣伝:中村祐美子
撮影:宗大介
音楽:松下雅史
音響:地福聖二
録音:中堀良栄
キャスティング:MCLOUD
美術:稲口マンゾ
衣装:松竹衣装
ヘアメイク:西野黎
助監督:長谷川テツ
題字:山口哲也
配給:クロックワークス
製作:2023『断捨離パラダイス』製作委員会
(C)2023『断捨離パラダイス』製作委員会
公式サイト danpara.jp