裏社会に焦点を当てたクライム・エンターテイメント映画『BAD LANDS バッド・ランズ』レビュー
振り込め詐欺、受け子、追う刑事・・・。
裏社会を生き抜く姉弟を取り巻く金と人間模様。 黒川博行著『勁草』を原作としたクライム・エンターテイメント!
本記事ではその見どころをご紹介します!
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姉弟の絆
振り込め詐欺の受け子をまとめる役であるネリを演じるのは安藤サクラ。
裏社会を生き抜く強い女性が躍動的に表現されている。
弾むように軽やかに移動する姿が印象的で、彼女の強い生命力の表れのようにも感じられる。
そして血の繋がりのない弟のジョーを演じるのは山田涼介。
サイコパス感と可愛らしさを併せ持つキャラクターを演じている。
漢字に弱く、数字に強い対称性も彼の掴みどころのないキャラクターを表現する上で重要な性質のように思える。
銃を撃つ事に躊躇いがないなど生粋の裏社会の人間に見えるが、そのような人間性は生い立ちが影響しているのかもしれない。
善悪で言えば、悪のボジションにいる彼らだが、2人には仲の良い姉弟として幸せに生きてほしいと願いたくなる魅力がある。
裏社会、迫り来る警察、切迫した境遇の中でも兄弟らしい掛け合いがあるのは微笑ましい。また、2人の距離が近いシーンが度々登場し、セリフ以上に信頼関係が表現されているように感じられた。
脇を固める名優陣
宇崎竜童、生瀬勝久を始めとした、名優達の存在も見逃せない。
宇崎竜童演じる曼荼羅は最初のシーンからタダ者ではない雰囲気を匂わせており、ストーリーが進むにつれて存在感を増してゆく。
終盤にかけてはネリと仲間以上の家族のような絆さえ感じ取ることができる。
元ヤクザとして再び銃を手にするシーンのカッコ良さは見どころの1つである。
強い女性達
本作品では複数の強い女性達が登場する。
主人公のネリはもちろん、ネリ達を追う特殊詐欺合同捜査班の班長役に江口のりこ、裏賭博をまとめる林田役にサリngROCKがキャスティングされている。
サリngROCKが演じる林田のカッコよく美しい存在感に釘付けになる人もいることだろう。映像作品への出演は本作が初めてのようでこれからの活躍に期待したい。
終盤に林田がネリの前に再び登場する際の、強い女同士の結託が実に心地良い。
お互いのメリットを踏まえて協力し、そして去る。裏社会ならではのドライな関係性が二人のカッコ良さを引き立てているように感じた。
壮絶な過去と裏社会の底辺という境遇で、助けを待つでも祈るでもなく強くあり続けるネリ。
ラストシーン、ジョーと曼荼羅の想いを背負って颯爽と走り抜けるネリに心掴まれる人は多いはずである。
『BAD LANDS バッド・ランズ』 9月29日(金)全国ロードショー
安藤サクラ 山田涼介
生瀬勝久 吉原光夫 大場泰正 淵上泰史 縄田カノン 前田航基
鴨鈴女 山村憲之介 田原靖子 山田蟲男 伊藤公一 福重友 齋賀正和 杉林健生 永島知洋
サリngROCK 天童よしみ / 江口のりこ / 宇崎竜童
監督・脚本・プロデュース:原田眞人
原作:黒川博行『勁草』(徳間文庫刊)
「BAD LANDS」製作委員会:東映 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント エイベックス・ピクチャーズ ジェイ・ストーム
配給:東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:https://bad-lands-movie.jp/
Ⓒ2023「BAD LANDS」製作委員会
【あらすじ】
<持たざる者>が<持つ者>から生きる糧を掠め取り生き延びてきたこの地で、特殊詐欺に加担するネリと弟・ジョー。
二人はある夜、思いがけず“億を超える大金”を手にしてしまう。
金を引き出す…ただそれだけだったはずの 2 人に迫る様々な巨悪。
果たして、ネリとジョーはこの<危険な地>から逃れられるのか。