ドラマチックな出会い、映画のような大恋愛　— そう、かつては。

この世には、「運命の出会い」という言葉がある。運命ってなによなんて言い始めると切りがないが、ときに自称「運命の出会い」を果たし、親の反対をも押し切って生涯を誓い合うカップルもいる。物語にもたびたび登場するような、なんともロマンティックな恋愛だ。しかしながら人と人。燃え上がった恋が落ち着きを見せ始めたときに、価値観の違いやら家族問題やら、あるいは相手の奇妙な生態やら…。恋の炎の裏に隠れていたものが見えてくることがある。

この映画には、「運命の出会い」を果たし、大恋愛の末結ばれた1組のカップルが登場する。知的なイケメン弁護士のノ・ジョンヨル（カン・ハヌル）と、名家出身でキャリアウーマンのホン・ナラ（チョン・ソミン）。親の反対を押し切ってまで結婚した2人だったが、時を経て、擦れ違い衝突を繰り返し、ついに30日後に離婚を迎えることとなる。

…が、離婚調停の帰り道、交通事故に会い夫婦揃って全ての記憶を失ってしまうのだ。果たしてそれは運命の神様のいたずらか。愛し合った時間も憎しみあった時間も消え去った2人は、いったいどうなっていくのか！？

■予測できないストーリー展開

離婚を控えた夫婦が、2人揃って記憶喪失に。…なんて、続きが気になるあらすじだろうか！記憶喪失もの×恋愛映画といえば悲恋が多いイメージの中、このあらすじからは一体何が起こるのかわくわくさせられる。かつて愛し合った2人であれば、再び恋の炎が灯るものだろうか、記憶はいったいいつ戻ってくるのか。もしも憎しみの記憶が戻ってしまったら？夫婦のうちの片方しか戻らなかったら？主役2人ともが記憶を失っているという類を見ない設定で、この先どうなるか予測できない展開に終始ハラハラドキドキさせられた。

■離婚寸前夫婦に共感の嵐

世のカップルや夫婦、通常愛し合って一緒にいる2人ではあるが、ときに相手の振る舞いに許しがたい怒りを感じることもあるだろう。これまでの暮らしや価値観の違い、小さなことも大きなことも、一緒にいる時間が長ければ長いほどその怒りは積み重なっていくものだ…。特に夫婦生活の場合は、2人だけでなくその家族との付き合いも発生する。わかるわかる、そういうところでイラっとするんだよね！…と、ついつい自分に当てはめて見てしまい、カップルあるあるに共感できるはず。

■テンポいい掛け合いに笑いが止まらない！

2人の結婚～夫婦生活～離婚まで、長い長い年月があっという間に過ぎ去る圧倒的なテンポ感。息つく間もない2人の掛け合いが大変小気味良く、爽快感すらある。傍から見れば息ぴったり！キャッチボールではなくデッドボールの応酬なところはアレだが。その激しさが、よりテンポを加速させるのかもしれない。

そんなある意味息ぴったりな2人を引き裂こうと、あるいはくっつけようと、奮闘するのは個性豊かな登場人物。冷酷そうな見た目とは裏腹に娘に尽くすナラの母・ボベ（チョ・ミンス）。息子への愛が強すぎて暴走しがちなジョンヨルの母・スクチョン（キム・ソニョン）。独特な個性で笑いを誘うジョンヨルの友人・ギベ（ユン・ギョンホ）をはじめ、強烈なキャラクターがストーリーに華を添えている。恋愛絡みの男子トーク・女子トークや家族関係など、この2人の関係性において、どれも絶対に欠かせない要素だ。俳優陣のコミカルな名演技にはぜひ注目してほしい。

■とにかく笑顔になれる！ラブストーリーではなく、圧倒的なラブコメディ

この映画のジャンルは？と聞かれたら、「恋愛映画」と答えるのは野暮だ。「ラブコメ映画」、この一言に尽きる。1組のカップルが出会い、燃えるような恋をし、結婚、そして離婚へ— 終わりを迎えようとしているのだから、普通だったら楽しいはずがないのに。この映画ではどうしたって笑いに変わってしまう！笑いながら、2人の行く末を見守るのではなく伴奏する映画だ。とにかく笑顔になりたい！そんなあなたにこの春ぜひ見てほしい『ラブリセット　30日後、離婚します』。ぜひ劇場で、ジェットコースターな体験を！