映像2024.08.08

この夏、いちばん熱い映画!8月9日公開『ブルーピリオド』レビュー

全国
クリエイターズステーション編集部
FM Nakanishi
FM中西
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2017年に月間アフタヌーンにて連載以降、「TSUTAYA コミック大賞」「このマンガがすごい!」「マンガ大賞2020」など数々の賞を受賞し、累計発行部数700万部を超える大人気漫画「ブルーピリオド」(山口つばさ/講談社)。国内外でも大きな注目を集めた本作が、2024年8月9日(金)に実写映画として放映される。

本映画は、美術の経験も才能もない主人公・矢口八虎が、天才的な画力を持つライバル達や、答えのないアートという壁に苦悩しつつ、情熱だけを武器に圧倒的努力で困難を乗り越えながら、国内最難関の東京藝術大学合格を目指す物語。

監督を務めるのは、『サヨナラまでの30分』『東京喰種 トーキョーグール』の萩原健太郎。脚本は『デデデデ』、『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を手掛けた、吉田玲子が担当。アニメ作品・アニメ実写映像の経験も豊富な2人が手掛けるということで、公開前にもユーザーからの期待は非常に高い。

さらに、主演は若手実力派の筆頭とも言える眞栄田郷敦、共演には高橋文哉、板垣李光人、桜田ひよりと、今最も勢いに乗る人気と実力を兼ね備えたキャスト陣が勢揃いした。本記事では2024年8月9日公開予定の『ブルーピリオド』の魅力を紹介していく。

八虎が見た、明け方の青い渋谷

主人公となるのは、眞栄田郷敦が演じる高校生・矢口八虎(やとら)。周りの空気を読み、遊びも勉強も卒なくこなし、家族・友人との関係も良好で、器用な高校生。しかし、仲間たちと酒を酌み交わしふざけあうそんな青春の煌(きら)びやかさの裏には、どこか空虚な旋律が流れる。劇中の心理描写とBGMは、八虎が心の隅に感じていた“からっぽな自分”を明らかにしていく。

卒なくこなす。効率的に生きる。無駄を省く。失敗しない。
ある種、現代風な思考を持つ八虎だが、そこには明らかな物足りなさが感じ取れる。それは映像や音楽だけでなく、俳優・眞栄田郷敦の“目”にも如実に表れている。実際、荻原監督が眞栄田を主人公・八虎に抜擢したのも、彼の“目”が決め手だったという。

 

 

煌びやかさと空虚の入り混じる序盤は、どことなく色あせたフィルムのような日常の連続が映し出されるが、そんな日常の中で明確な“色”が描かれる瞬間がある。それが、八虎が仲間と夜を明かした後に見る「明け方の青い渋谷」。他者の尺度や周りの反応をフィルターにしない、八虎だけが見る青の世界だった。

そんなある日、忘れ物を取りに美術室に入った八虎は1枚の絵に出合う。美術部の先輩・森まる(桜田ひより)が描いたその絵を見た八虎は、得も言われぬ感動を受け言葉を失う。その感動にあてられたのか、八虎は部室にいた森先輩に自身が感じた「渋谷の青」を説明する。

────何を言ってんだ俺

そんな気持ちで我に返る八虎だが、森先輩はこう続ける。

「あなたが青く見えるなら りんごもうさぎの体も青くていいんだよ」

彼女との出会いと、後に展開される美術授業の課題における大きな出来事が、八虎を「藝大受験」という道へ引き込んでいくことになる。

自分と向き合い続けた先に生まれる、真の勇気

本作は「諦めなければ夢は絶対にかなう!」といった、歯の浮くような美辞麗句で飾り立てる映画ではない。

周りとのコミュニケーションを過度に避けてしまう天才・高橋世田介(板垣李光人)は、孤高ゆえの苦悩と嫉妬に幾度となくさいなまれる。
可愛く美しくありたいと願う女装男子・鮎川龍二(高橋文哉)は、世間の決めた普通という偏見にぶつかり、自分の“好き”に葛藤し続ける。
そして主人公・矢口八虎もまた、美術との出合いで固く誓った決意を、立ちはだかるライバル達に何度もねじ伏せられそうになる。

好きは尊い、だけど儚い。
夢中はカッコいい、だけど虚しい。
思いだけでは食べていけない。
自分は所詮、何者でもない。
情けない、死にたい、殺したい、
悔しい。悔しい。悔しい。

思春期ゆえの脆さに揺れ動く彼ら・彼女らは、最後の最後まで自分という存在に向き合い続ける。

答えのないアートの世界に足を踏み入れた八虎たち。実際に絵を描くシーンでは、怒り・高揚・悲哀といった持てるすべての感情をぶつける俳優たちの演技が冴えわたる。目は狂気につつまれ、服は汚れ、音楽は心情の機微を鮮明に描く。

荻原監督も「絵を描くという静的なシーンを映画的表現に落とし込むうえで、藝大受験生の心の機微をリアルかつ丁寧に描くことにこだわった」と語っており、それらはキャンパス・画材・絵具などのセットや、ペンの持ち方・走らせ方に至るまで随所にあらわれ、演出は最新のCG技術も駆使し、繊細かつダイナミックに表現される。

描き、壊して、ありのままをぶつける主人公たちが見せる“勇気と本気”は、借り物の言葉では賄いきれない真のパワーを見る手に与えてくれる。

────悔しいと思えるなら、まだ戦える。

八虎をはじめとする若人たちが紡ぐ成長譚は、真夏の炎天下をも凌駕する熱気を届けてくれる。この夏いちばん熱い映画を、ぜひ劇場で、そして全身で体感してほしい。

『ブルーピリオド』
8月9日(金)全国ロードショー

■キャスト:
眞栄田郷敦 高橋文哉 板垣李光人 桜田ひより
中島セナ 秋谷郁甫 兵頭功海 三浦誠己 やす(ずん)
石田ひかり 江口のりこ
薬師丸ひろ子
■スタッフ
原作:山口つばさ『ブルーピリオド』(講談社「月刊アフタヌーン」連載)
監督:萩原健太郎
脚本:吉田玲子
音楽:小島裕規“Yaffle”
製作:映画「ブルーピリオド」製作委員会
制作プロダクション:C&Iエンタテインメント
配給:ワーナー・ブラザース映画
©山口つばさ/講談社 ©2024 映画「ブルーピリオド」製作委員会
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◆公式 HP:blueperiod-movie.jp

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