映像2024.08.26

映像制作者の間での話題作

東京
映像ディレクター
秘密のチュートリアル!
野辺五月

そこら中で話題になっているので、今更かもしれませんが……

先日、映像編集仲間と飲み会をしたときに、話題に上がったのが『地面師たち』(Netflix)。
予算や規模の問題も勿論あるのは承知のうえでいいますが、こんなに映画のようなレベルでの撮影ができるのだ……ドラマで……と思わず比べてしまうほど、国内の他の作品に比べても一歩飛び抜けて、クオリティの高い仕上がりでした。

監督は、大根仁。よく知られているのは、深夜ドラマ枠の演出からでてきて、初監督の『モテキ』で日本アカデミーを受賞、と言うキャリア。その後も『まほろ駅前番外地』や『バクマン』などがありますが、今回の地面師たちを思わせるのは、2022年の月曜夜『エルピス-希望、あるいは災い-』でしょう。
冤罪事件を元にしたこの作品は今回と同じく、社会派エンタテイメントの色が濃くでています。

またキャストも豪華。今更言うまでもないのですが、豊川悦司・綾野剛・北村一輝・小池栄子・ピエール瀧・染谷将太・アントニー・リリーフランキー……癖のある、演技派キャスト陣が勢ぞろい。

また最初になりすまし役のキャスティングをされていた五頭 岳夫他、脇を固める俳優がまた一癖二癖もある……邦画でもなくてはならぬ演技の功労者なんですね。

7月25日に公開されてから、あっという間に話題をさらった本作は、特に映像を作る側・演じる側の人たちに刺さるところが多いようで、興行的にも2週間連続1位をかっさらうなど好調です。

各所から話を聞きますと特にそのすごさは
・テンポ
・絵作り
・いろいろな意味での『組み合わせ』
につきるのですが、
現場の人たちの意見としては……正直な話予算……。
見る人が見れば分かる予算。それに見合う動きですね。

此処の手配大変だろうな、これは手がこんでるな……が正直に分かります。
+やっぱり脚本と演出ですね。キャラクターをたてて、緊迫感のある絵を作る、背後をちゃんと作りこむ……当たり前のようですが、今一度ぴりっと意識させられる「精緻」な絵。
勉強になるので、ぜひそれなりに長尺の映像を作る人には見てほしいという話をみなさん口々におっしゃってました。

ところで、『地面師たち』に予算がおりた理由は成績からもみられるのですが、この作品、グローバルランキングでは、「週間グローバルTOP10(非英語シリーズ)」(7月22日~28日)で8位スタート。その後、グローバルでは週間3位、今週は2位に浮上しています。日本では4週連続TOPですね。
Netflixといえば、日本関連ですと、地味にこれを抜いている作品があり、それが『忍びの家』。
こちらは、脚本・監督はアメリカン人で、賀来賢人がプロデュース・俳優として共同制作を務めています。
(4月3日には、賀来と共同で映像制作会社「SIGNAL181」設立)
実は、2024年はグローバルヒットが多く、忍びの家をはじめ、映画ではあるが、『パレード』そして『シティハンター』。こちらもグローバル1位をとっています。
地面師たちはそんな中でも期待されていただけに、予想通りの快進撃を見せていますが、特徴的なのは地上波では無理だろうなという映像表現かなと思います。
まずは実際の事件をモデルに扱うことでスポンサーが厳しくなるだろうこと、またドメスティックな表現がテレビでは嫌われることもありました。
実際22年に出版された小説『地面師たち』の文庫あとがきを見ると、監督が企画を持ち込んでも断られているさまが伺えます。実在企業をそのまま(ターゲットになった企業や関連した企業は流石に変更されていますが)かいていることもあります。またいろいろな意味でギリギリなキャスティング……
まさかピエール瀧が薬にふれてたり……とアレコレ垣間見られる「せめた姿勢」がいいかんじです。
シティハンターはギリギリでうまく楽しめる危うくなりすぎないポップさの境界、こちらはギリギリアウト手前の、配信ならばセーフの境界……コンプライアンスについて考える部分もありました。
この制作ブームがどこまで持つか分かりませんが、今やコンテンツは世界を相手にどのくらいみられるか……という軸と、ローカルに、集中してほしがられるか……の両軸で動いていると思います。
アジアの韓流ブームから、タイブーム・中華ブームに、反対にまた日本ドラマの輸出など……密につながっている部分もあります。Netflixはゆりあんレトリィバァ主演の極悪女王や、有村架純の『さよならのつづき』他まだ作品がありますが、どう流れていくのか。一旦制作のピークにはなったのではともいわれているため、先が気になるところ。
細かい解説は今回はできませんでしたが(画像の関係もあり)、たまにこのコンテンツが注目を浴びているという話やその理由について軽い解説もしてみたいなと思いました。
改めてその場ですすめあった別の作品についても、それぞれ見直してみたりしていることもあります。

なお、ここで一番伝えたいのは「作る人は見てる」ということです。
見なくなっている人もいますが、ある程度以上、作ることに向き合う人は、特に映像ははやりすたりと、基礎の両軸が要されることもあり、見ていると思います。
VGTでも数名の方が同じ発言をされていたのですが、まるぱく練習=まるっきり同じように編集してみるという練習の仕方を通ってる方は多いように思います。どうやったらあの表現を作れるのかについては真剣に検証しあうことも多いのです。いい作品・話題の作品は食わず嫌いせず是非チェックしてほしいななどと思いながら今回はここまで。
次回はちょっとまた趣向をかえて、配信の話などしたいなと思います。

参考:地面師たち監督インタビュー

https://www.cinema-factory.jp/2024/07/25/53874/

 

プロフィール
映像ディレクター
野辺五月
学生時代、研究の片手間、ひょんなことからシナリオライター(ゴースト)へ。 HP告知・雑誌掲載時の対応・外注管理などの制作進行?!も兼ね、ほそぼそと仕事をするうちに、潰れる現場。舞う仕事。消える責任者…… 諸々あって、気づけば、編プロ・広告会社・IT関連などを渡り歩くフリーランス(コピーライター/ディレクター)と化す。 2015年結婚式場の仕事をきっかけに、映像畑へ。プレミア・AE使い。基本はいつでもシナリオ構成!2022年は現場主義へ立ち返り、演出・構成をメインに活動。現在の主流は「インタビュー」「取材」もの。&裏方の進行。 「作るために作る」ではなく「伝えるために作る」が目標。趣味の飲み歩きができるようになって嬉しい反面、ダイエットせねばと叫ぶ日々。

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