映像2024.08.29

映画ソムリエ/東 紗友美の“もう試写った!” 第38回『チャチャ』

vol.38
映画ソムリエ
Sayumi Higashi
東 紗友美
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『チャチャ』

▶甘酸っぱくて同時にキケン、ドキドキのハイブリッド!?新感覚の”恋愛映画”を求めている人におすすめ
超可愛くて独創的な『チャチャ』

唯一無二の輝きで忘れられないヒロイン度100%

新進女優と次世代監督がタッグを組み「不器用に、でも一生懸命“今”を生きるヒロインたち」をそれぞれの視点で映画化するプロジェクト、“(not) HEROINE movies”=ノットヒロインムービーズの第4弾公開作品の『チャチャ』。

最初にお話したいのだが、東は“(not) HEROINE movies”=ノットヒロインムービーズというレーベルの以前からのファン。
描かれるのは「明るくて前向きでキラキラした女の子」のような従来のヒロイン像のヒロインではない。
みんな個性を持っていて、ある意味ヒロインらしくないとも言える女の子にフォーカスがあてられることが多い。だからこそ、毎回新しい女友達に出会える気分でこのレーベルの作品を応援している。

今回の『チャチャ』の監督を務めるのは、映画『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』、『恋を知らない僕たちは』、そして「美しい彼」シリーズで熱狂を生んだ今もっとも注目を集めるクリエイター・酒井麻衣。酒井監督が紡ぐ物語は、色彩、日差しがふんわり入り込んだ映像美、おしゃれなロケーションなどすべてが美しく、まるでファンタジーのように洗練された世界観でそれだけでムーディーだ。

そんな空間を背景に繰り広げられる恋の物語、恋愛映画ファンは絶対に見逃さないでほしいと思っている。そんな酒井監督にとって 7 年ぶりの完全オリジナルストーリーによる長編映画が『チャチャ』。

最高に甘酸っぱくて、同時にキケンな香りのするドキドキ要素ハイブリッドの恋愛映画に仕上がっていました。
物語は、純愛要素、片思い要素、まさかのサイコホラー要素まで持ち合わせていて、見事なブレンド具合! まるっきり新しい、純度100%の片想い映画になっていました。

主人公チャチャを演じ主演を務めるのは、実力派俳優としてもアーティストとしても存在感を発揮している伊藤万理華さん。彼女がもう素晴らしい…!
まるで『アメリ』(2001)のように、チャチャさんもまた映画史に残る、個性的で風変わりでなにより愛らしいアイコニックなヒロインが誕生していました。兎にも角にも彼女が魅力的!

自分らしさ全開のおしゃれを楽しむチャチャは毎日がとにかくファッショナブルで、代わる代わる変化するメイクや衣装がどれも似合っていて、ファッションページをめくるよう。
作品のテイストは異なれど『Barbie』(2023)のような愉しさがありました。

自分も挑戦してみたい1着を探してしまいますし、流行のシアーアイテムやチョーカーなども”彼女ならではのコーディネート”で、唯一無二のファッションに昇華されていて、「自分の似合うものを知っている女の子」が目の前でキラキラ輝く様子は眩しかったです。

そして、性格もとことん面白い。

”なんで可愛くないのに周りに男が寄ってくるのかと言われることがある
恋ではない 攻略してみたいというかそんな感じなんだろう
ただ一度理解しようと考えてみたことがある
野良猫だ 野良猫と一緒なのだ

道にふっと出てきてその瞬間だけ可愛がる なつかせたい
なつかせたら自分が特別な存在になれた気がする
ただただ家に招き入れて飼おうとは 一生の責任を持とうとは誰も思わない
残念だったね もっと長生きして欲しかったな そんな感じなんだろうな”
(作中セリフより抜粋)

冒頭のチャチャ自身が自分をこう説明するが、確かにチャチャは女子からも男子からも誰しもの視界にどうしても入ってしまう、女の子。
かわいいorかわいくない、好きor嫌いなど勝手に他人にジャッジの土俵にのせられてきたんだろうなぁ。
誰からも注目されるがゆえ、ある人からは「あざとい」と呼ばれ、またある人からは「次に何をしでかすかわからない子」なんて呼ばれたり。
一見すると掴みどころがなくて、それゆえ、人間の手に入れてみたい願望をどうしたって刺激してしまうタイプの女の子。

押し花をアートにしたり、ガラス瓶の中にある美しさを探しだしたり、1つ1つの仕草が、キュートでミステリアスでまるでスノウドームに入ったお人形の女の子を眺めているようなずっと見ていたいとおもえる輝きがあって…。
最初はチャチャさんの雰囲気やかわいらしさといいますか。

そこが彼女の魅力だとおもっていたんです……
が、そうではなかったのです!!ここが私の1番グっときたところです。
チャチャの魅力は、ハードボイルドな人間性。
あまい綿菓子のようにふわふわした可愛さの中に、スパイスのような隠し味が…。

映画の後半では、チャチャはあるピンチを体験するんですよね。
その瞬間でさえ、彼女はブレず、彼女だけにしか解決できない自分らしさを極めた方法で、とあるトラブルと対峙するんです。
「自分がもしこんな状況に陥ったら、こんな判断はできない!」を、チャチャは颯爽とやり遂げます。

ネタバレレビューを今すぐに書いて大いに語りたいくらいに見事な判断。
どんな逆境にも、自分の考えや言葉を駆使し、彼女ならではのやり方で乗り越え解決していく見事なクレバーさと独創性。

チャチャの自分らしさを極めた生きかた。それを礎に生きていく女子だってこの先生まれるかもしれないと言えるほど、どんな瞬間も自分を貫くんです。
「自分軸のあるブレない人間は魅力的」なんてニュアンスの言葉は古今東西言われてきましたが、あらためてその言葉の真意に触れることができました。

チャチャが思いを寄せる相手・樂(らく)を中川大志が演じているのですが、武将から歌謡曲のスター、金髪イケメンなどさまざまな役柄を演じてきた中川さんも今回新しい一面を見せてくれています。

そんなチャチャと樂の恋愛がどうなっていくのかと追っていくと、この作品が入り口と出口が全く異なるタイプの映画だったことに気づき、物語の見えかたが2人を知ることで変容する、ジャンルは違えど『イニシエーション・ラブ』のような発見のある恋愛映画になっているんです。
驚きに満ちていて、面白かったです。

絵の具とキス、夢みたいなクリームソーダ、たんぽぽのしおり、彼女の描いたカラフルな絵。
物語を彩る、いろんなアイテムもかわいらしく、アートの感性が刺激されるようで芸術の秋にもぴったりな印象です。
物語の重要なシーンが展開される2人で暮らす部屋も現実と空想が入り混じった不思議な世界感で、まさにこの物語を象徴するような空間でした。一見雑多なようだけど、きちんと調和が取れていて、とにかくかわいい部屋は1度住んでみたい空間!

随所まで魅力たっぷりな映画でした。

『チャチャ』
10 月 11 日(金)より新宿ピカデリー他全国公開

監督・脚本:酒井麻衣

出演:伊藤万理華 中川大志
藤間爽子 塩野瑛久 ステファニー・アリアン
落合モトキ 藤井隆

主題歌:「おはようの唄」伊藤万理華(ソニー・ミュージックレーベルズ)

配給:メ~テレ カルチュア・パブリッシャーズ

配給協力:ラビットハウス

制作プロダクション:ダブ

©2024「チャチャ」製作委員会

公式サイト https://notheroinemovies.com/chacha
公式 SNS(XInstagram)@NotHeroineM
#映画チャチャ

プロフィール
映画ソムリエ
東 紗友美
映画ソムリエ。女性誌(『CLASSY.』、『sweet』、『旅色』他)他、連載多数。TV・ラジオ(文化放送)等での映画紹介や、不定期でTSUTAYAの棚展開も実施。映画イベントに登壇する他、舞台挨拶のMCなどもつとめる。映画ロケ地にまつわるトピックも得意分野で2021年GOTOトラベル主催の映画旅達人に選出される。 音声アプリVoicyで映画解説の配信中。

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