映像2024.10.25

映画祭のススメ。

東京
映像ディレクター
秘密のチュートリアル!
野辺五月

映像関連の仕事に就いていても、興味があっても、あるいは映画好きでも……「映画祭」については知らないという方が多いのではないでしょうか。
今回は「映画祭ってなんだ?」ということで、ざっくり映画祭の役割(規模ごとに少し違うのですが)や具体的にどういうものがあるかをまとめてみたいと思います。

映画祭とは「映画業界の祭典」とされていますが、新たに制作された映画の上映を行い、優れた作品を選考し、賞を授与し……と同時に、それら映画作品を売り込む側と、上映するために買い付ける側が出逢えるように「商談」ができる場所として機能するものです。

有名どころでは、三大映画祭と称される
・カンヌ国際映画祭
・ベルリン国際映画祭
・ヴェネツィア国際映画祭
などがあります。

これらは国際映画製作者連盟(FIAPF)の公認映画祭でもあります。(他にもモントリオールやワルシャワなどいくつかあります)
日本の、東京国際映画祭も、この国際映画製作者連盟公認の長編映画祭にあたります。

東京国際映画祭ダウンロード資料より

日本の場合は長編のみですね。
これらに対して「インディペンデント」を主要とする映画祭も勿論あります。
有名どころでは、「エディンバラ国際映画祭」「サンダンス映画祭」「ロッテルダム国際映画祭」などです。何をもって有名とするか難しいところではありますが、映画の上映権を購入にくる業者の多さや質の高さをもって、知名度が上がっている印象を受けます。実際これらの映画祭を経て、大ヒットに結びつく映画祭も少なくありません。サンダンス映画祭では例えば『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』『ソウ』また『セッション』の前進になる短編もここで発表され、この後ヒットに至っています。

ロッテルダム映画祭では有名どころだとロウイエ監督の『ふたりの人魚』、また2024年日本の田中稔彦監督が『莉の対』で賞を取っています。
またこういった国際的な映画祭の他に、国内の映画祭もあります。
国内でその土地に関わる映画祭を、その土地を舞台に撮影して行うことで地域の活性化に繋げる動きもあれば、FIAPF公認ではないけれど各国から作品を募集して行っている国際映画祭もあり、中には、ドキュメンタリーに特化している「山形国際ドキュメンタリー映画祭」などのように、地域活性市民参加から始まって今や「ユネスコ創造都市ネットワーク」における映画分野での加盟まで認められているような大掛かりな映画祭もあります。

かと思えば、代わりダネ「うんこ映画祭」のようなユニークな映画祭もあります。
新作やインディフィルムをかける映画祭や各国から募集した映画をかける映画祭もありますが、同時に、この国の映画をひろめようという風に国別に上映予定がまだ決まっていない作品も含めて日本に紹介するタイプの映画祭もあります。

例えば今年はもう終わってしましたが、フランス映画祭(3月頃)イラン映画祭 2024(8月頃?))イタリア映画祭(ざっくり毎年5月頃)、今年は開催されませんでしたがドイツ映画祭、またインド映画好きの同好の志が主催する『インド大映画祭 IDE2024』などもあります。インド映画は、Spacebox(インド映画配給)主催のインディアンムービーウィ―クなどもあり、これは買い付けもですが、まずファンを増やし、あるいは増えているファンのために行い、そこから映画館や配給にうまくのばせるように働きかける仕組みなのでしょうか。最近このタイプの「特集」的な映画祭の動きも活発になっているように感じます。後援に大使館を付けて、企画された「ジョージア映画祭2024」なんかもありました。

香港映画祭TOPより

一方で、国際映画祭の期間に上手に被せながら行われる「東京・中国映画週間」のような催しもあります。「香港映画祭2024」もあります。
これら各国や地域の冠がある映画祭のポイントは「買い付け」を目指してのものであることもあり、試写的な要素が強く……監督や俳優、プロデューサー自らが宣伝にくることもあるため、色々な情報が手に入る利点もあります。上映前後にインタビューや公開講座、質問・サイン会などがあることもあります。またそこで流れた作品のいくつかは全国展開しますが、残りについては短館で買い付けられるかの瀬戸際というものも多く……要するに映画祭での上映一度切りという作品も多いのです。気になる監督やキャストの出る映画、テーマの映画がある場合は、現地に足を運ぶ他に見る方法がない……ということもざらにあります。

チケット情報はXや公式からのことが多く、販売も上映される映画祭によってまちまちです。例えば今回、私はある映画祭のチケットを狙ってとったのですが、開始5分で狙いの映画は売切れました。注目度の高い作品はそういうことが多くあるため、ある程度のアンテナが必要になります。

けれど、ついでに見てみたいなぁという作品を探す中で、予期せぬ出会いもあります。
映画はもちろん映画ビジネスや、業界に興味のある方にも映画祭の参加はどんな形でもお勧めできます。新しいものや、面白い映像の形、トレンドや今後いきそうな映像を知りたい方はぜひ……。ちょうど東京国際映画祭が11月6日までになりますので、まずしらべてみてはいかがでしょうか。

ちなみにより詳しくバイヤー、コンテンツホルダーと関わりたい際は、TIFFCOM2024が行われています。
コンテンツの売買以外にも、IP(知的財産)、リメイク権、書籍の映像化権、共同制作、ローカライズ、資金調達/出資、ロケ地等を扱う出展者が急増しているので、これから映像ビジネスに関わりたい方はこちらもチェックできます。なお一般でも入れるセミナーやピッチコンテストもやっており、映画祭はこちらも含めての「マーケット」そのものなのだということがうかがえると思います。

プロフィール
映像ディレクター
野辺五月
学生時代、研究の片手間、ひょんなことからシナリオライター(ゴースト)へ。 HP告知・雑誌掲載時の対応・外注管理などの制作進行?!も兼ね、ほそぼそと仕事をするうちに、潰れる現場。舞う仕事。消える責任者…… 諸々あって、気づけば、編プロ・広告会社・IT関連などを渡り歩くフリーランス(コピーライター/ディレクター)と化す。 2015年結婚式場の仕事をきっかけに、映像畑へ。プレミア・AE使い。基本はいつでもシナリオ構成!2022年は現場主義へ立ち返り、演出・構成をメインに活動。現在の主流は「インタビュー」「取材」もの。&裏方の進行。 「作るために作る」ではなく「伝えるために作る」が目標。趣味の飲み歩きができるようになって嬉しい反面、ダイエットせねばと叫ぶ日々。

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