自分が自分でいられる場所
東京
ライター
来た、見た、行った!
かつらひさこ氏
夫が割とドラマを観る人なので、それに付き合ってなんとなく観ていたのだが、ここ最近NHKの連続テレビ小説「スカーレット」にハマっている。
今は戸田恵梨香さん演じるヒロインの喜美子が陶芸家として目覚めはじめ、家庭を顧みず陶芸に突っ走り、松下洸平さん演じる旦那さんとの亀裂を生んでしまう…というあたりなのだが、私は喜美子が周りのことなど考えず「とにかく物を作りたい!」という気持ちがなんだかわかるし、私の夫は夫でそんな喜美子を身勝手に感じるというし、登場人物のどの人にも感情移入できるのは、脚本も役者さんも演出も丁寧に作っていて嘘がないからかもしれない。
ドラマにありがちなご都合主義な展開がなく、ヒロインをはじめ登場人物たちの心の揺れをきっちり描いているせいか、なんだか本当にいる人の、本当にある家庭を覗き見している気持ちになってきている。
昨日のオンエアでは、喜美子が以前お世話になった大阪時代の人達と再会するという温かいシーンがあったのだが、いつも「妻として」「母として」「長女として」の役割を求められていたのが、10代の女中さんとして可愛がられていた頃の表情になっていて(戸田さんがこのあたり大変巧い)、自分がそのままの自分として存在できる場所の尊さをしみじみ感じた。
人によっては学生時代の同窓会であったり、趣味の場であったり、または家庭だったりするのだろう。
そういう場が私はいくつあるだろう、とふと考えた。
プロフィール
ライター
かつらひさこ氏
1975年札幌市生まれ。自分が思い描いていた予定より随分早めの結婚、出産、育児を経て、6年前からライティングを中心とした仕事を始める。毒にも薬にもならない読みやすい文章を書くことがモットー。趣味はクイズと人間観察。