映像2020.05.20

沖縄、東京2つの拠点で映像制作、暮らしは沖縄で快適に。

Vol.39 沖縄
株式会社Vitto 代表取締役社長
Masaya Myojo
明星 雅也

映像ディレクターとして東京で長年経験を重ねてきたにもかかわらず、縁もゆかりもない沖縄へ3年前に移住した明星雅也さん。

地道にコネクションや実績を作り、今では映像制作会社「Vitto(ヴィット)」の代表取締役として、沖縄の映像業界で確かな存在感を放っています。この記事では、なぜ沖縄への移住を決意したのか、そして会社を設立した理由などを語っていただきました。

テレビ番組から企業案件まで。幅広い映像制作に携わる

いつ頃から映像制作に興味を持たれたのですか?

大学生の頃でした。実は大学の専攻は建築で映像とは全く関係なかったのですが、勉強していくにつれ「何か違うな」と違和感を覚えたんです。将来仕事にするほどの興味はないなと。一方、趣味で始めた写真や映像編集がどんどん面白くなり、映像系の仕事に就きたいと思い始めました。

そこで、本当にその道が自分に合っているのか見極めるために、テレビCMの制作会社でバイトをしてみたんです。そうしたら、やっぱり面白いと改めて感じました。しかし、一口に映像といっても幅広く、どのジャンルに進もうかと迷いました。そんなときに読んだ本にあった「どれぐらいの人に影響を与えたいかで、やりたい仕事を選べ」という助言に従ってみたんです。できれば多くの人に自分の作る映像を見てほしかったので、ゴールデンタイムに流れるようなテレビ番組を作る制作会社へ就職しました。

就職して数年後にはフリーランスになられたということで、かなり早く独立されたように感じますが、なぜですか?

働いていた会社は、AD(アシスタントディレクター)からディレクターになるまで非常に長い時間が必要でしたが、なるべく早くディレクターとしてのキャリアをスタートしたかったので、フリーになりました。

しばらくフリーランスとしてさまざまなテレビ局の番組を作っていたのですが、テレビ番組とは違う映像ジャンルにも挑戦したいと感じ、デザイン会社の映像部署に勤めることにしました。

デザイン会社は制作会社とはかなり毛色が違いそうですが、いかがでしたか?

映像の世界は奥が深いと思いましたね。デザイン会社はテロップのフォント一つとっても、バラエティ番組とは全く異なります。また、その会社では主に企業からの依頼で映像を作っていたので、一つ一つクライアントの意見を聞いて企画を立て、さらに新しい提案をしたりと、テレビとは違う仕事の仕方がとても勉強になりました。そこでしばらく働いたのち、またフリーランスになりました。

沖縄移住は生活の充実のため。仕事の充実は後回し

東京でのお仕事はとても充実されていたようですが、なぜ沖縄へ移住されたのですか?

沖縄が好きだったからというのが一番の理由です。東京での仕事に行き詰ると、4カ月に1度ぐらいの頻度で沖縄にリフレッシュしに来るほどでした。

もう一つの大きな理由が、子供を東京で育てたくなかったんです。満員電車にベビーカーを乗せるのもためらわれるような場所ではなく、もっと穏やかな環境で伸び伸び育てたくて、移住を決めました。だから仕事のことは後回しなんです。

東京にはフリーランスで映像の仕事をしている人は多いし、沖縄でもなんとかなるだろうと、かなり軽い気持ちで移住しました。

移住した結果、仕事はどうなったのですか?

正直、最初は苦労しました。どうやってコネクションを作ろうかと、もがいていましたね。例えばドローンの勉強をしたかったので、ドローン撮影している会社を見つけて連絡して手伝わせてもらったり、こまめに営業メールを送ったり。

そこから徐々に取引先や人脈が広がっていきましたが、東京に比べてかなり報酬が安くて、なかなか売り上げにはつながりませんでした。だから沖縄から東京に通って、東京の案件を主にこなしていました。

取材などの現場は東京で、編集は沖縄へ持ち帰って行うサイクルでした。東京でフリーランス時代に築いた基盤があったからこそ、沖縄にいても仕事が出来たんだと思います。

沖縄と東京を行き来するのは、大変ではありませんでしたか?

それほど苦には感じませんでした。映像の撮影現場は日本全国ですから、東京に住んでいても移動は多いですし、編集作業はPCさえあればどこでもできます。沖縄に住んでいても、不自由は全く感じませんよ。

それに、沖縄は東京よりも本当に住み心地が良いです。子育ても本当にしやすいと感じますし、仕事の合間の息抜きも簡単にできます。今日も出社前に家族でビーチへ行って、バーベキューの朝食を食べてきました(笑)。

『Vitto』を起業し、幅広い映像制作に対応

2018年に、映像制作会社『Vitto』を立ち上げられた経緯を教えてください。

沖縄に移住した後もしばらくフリーランスでいましたが、一人の限界を感じ始めていました。ディレクションから撮影、編集、さらにCGまで作るのは大変ですし、どうしてもクオリティが下がってしまいます。

そんなとき、以前から信頼を寄せていたウィリアム・タンというカメラマンが会社を辞めると聞き、「一緒に新しい会社を作ろう」と真っ先に声をかけました。彼以外にも知人の中で、撮影やCG制作などそれぞれの分野で優秀なプロフェッショナルを誘い『Vitto』を作りました。

東京と沖縄に会社があるようですが、なぜですか?

東京は本社、沖縄は支社という位置付けにして、最初のメンバーであるウィリアムに東京本社を任せています。

スタッフのほとんどが元々フリーランスとして東京で働いていたので東京にコネクションを多く持っていますから、東京で皆が受注した案件を、沖縄で仕上げるという方法をとっています。

映像制作会社として、どのようなことを強みにされていますか?

企画から撮影、編集、3DCG、VR(ヴァーチャルリアリティ)など一貫して行えることだと思います。それぞれでトップレベルの技術を持つ社員がいるので、クオリティの高い映像を作ることができます。

また、さまざまな国籍や海外経験のあるスタッフが多いので、英語などの多言語に対応できることも強みだと思います。おかげ様で、日本だけではなく海外の企業からも発注いただき、インバウンド、アウトバウンドの映像制作案件が増えてきています。

沖縄には、3DCGやVRなどを制作できる会社は少ないのでしょうか?

ほとんどないと思いますね。クライアントにはそこをかっていただけていると感じます。そもそも沖縄には映像制作会社が少ないので、横のつながりが強く、お互いの足りない部分を補い合い、協力し合っているように思います。ライバル関係にあるというより、仲間という意識が強いです。

沖縄で作られる映像作品のクオリティーを上げるために

これから会社としてやっていきたいことはありますか?

大きな目標としては、弊社の社是である「心動かす時をデザインする」を軸に、世界に通じる映像を作り出せるようになりたいですね。そのための第一歩として今行っているのが、人材育成です。

沖縄の映像クオリティを底上げする一端を弊社が担えるようになるためにも、若手を積極的に採用して、彼らにトップクリエイターの技術を教えていきたいんです。弊社は東京に本社があるので、そちらに若手が行くことで良い刺激を受ければ、よりレベルは上がっていくと思っています。

今弊社は3期目に入り社員は10人になりましたが、10期目までには30人規模にしたいと考えています。ゆくゆくは100人規模にして、沖縄で映像を志す若者たちの受け皿になりたいと思います。

また、「『Vitto』に依頼したい」と企業に思っていただけるよう、弊社でしか作れない映像を追求していきたいですね。そのためにも依頼を受けて作るだけではなく、自社制作の作品を発信し始めました。最近はモデルを起用した映像を作り、SNSを中心に発信しています。

最後に、UターンやIターンを考えている読者へ、先輩としてメッセージをお願いします。

地方で働いてみたいと思ったら、まずは行ってみたらいいと思います。失敗したら帰ればいいだけの話です。先ほども言ったように私の場合、仕事のことはあまり深く考えずに沖縄へ移住しましたが何とかなったので(笑)。「どうにかなる」というか、「どうにかする」のが人間だと思います。

ただそのためには、今いる場所でしっかりと仕事をして、基盤を築いたり技術を磨いたりするのが大事。そうすれば、どこへ行ってもそれが助けになると思いますよ。それでも心配なら、まずはお試しで1カ月ぐらい住んでみるのもいい方法かもしれませんね。

いくら準備して行ってもその土地が合う合わないはあるので、あまり気負わず行ってみてはいかがでしょう?

取材日:2020年3月11日 ライター:仲濱 淳

株式会社Vitto

  • 代表者名:代表取締役社長 明星 雅也
  • 設立年月:2018年1月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:写真・映像撮影、ドローン空撮、映像編集、CGアニメーション制作、映像システムの開発、PRプランの提供、各メディア対応、モデル・タレント、ロケーションサービス、通訳
  • 所在地:
    東京本社:〒107-0062 東京都港区南青山2-22-2 アオヤマ・フォト・アート3F
    沖縄支社:〒902-0077 那覇市長田2-2-25 1F
  • URL:https://vitto-inc.com/
プロフィール
株式会社Vitto 代表取締役社長
明星 雅也
名古屋出身。大学を卒業後、東京のテレビ番組制作会社に就職し「嵐にしやがれ」「しゃべくり007」「24時間テレビ愛は地球を救う」などの番組のADを担当。2012年からフリーランスになり、テレビ番組、ミュージックビデオ、ブライダル、イベント、企業VPなどのディレクションや撮影、映像編集を担当。その後デザイン会社にてCMやPVのディレクションを行う。2017年に沖縄へ移住し、フリーランスとして沖縄と東京を行き来しながら企業案件などを手がけ、2018年1月に株式会社Vittoを設立。代表として会社経営と映像制作に携わる。

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