グラフィック2018.12.12

他業種とコラボレーションし、新たな本の魅力を創造する

京都
共同印刷工業株式会社 代表取締役  江戸孝典 氏
大学入試過去問題集として知られる「赤本」などの学習書や参考書を軸に印刷業務で発展してきた共同印刷工業は京都に本社を構える創業70年の印刷会社です。当初、書籍の印刷だけに特化してきましたが、2015年から代表取締役社長に就任した江戸孝典(えど たかのり)さんが指揮を取られ、印刷だけでなくデザイン・製本などの書籍に関するトータルプロデュースを行える組織改革を推し進め、今の事業内容に至ります。これまでの経緯やインターネット時代を生き抜くビジョンなど、江戸さんからお話を伺いました。

生き抜くために必要だった組織改革

入社されるまでの江戸さんのキャリアについて教えてください。

当社は祖父が70年前に設立した会社で、父が跡を継ぎ、私が三代目に当たります。印刷業が大変ということは幼い頃から両親を見て知っていましたし、父からも「お前には印刷業は向いていない。自分の好きなように生きろ。」と言われていたので、自分が当社を承継するとは思ってもいませんでした。今から思えば、大変な仕事なので、子供には継がせたくないという父の優しさがあったのでしょう。しかし、就職活動時、真剣に自分の人生と向き合い、やはり家業を継ぐという決意に至ったのです。まずは別の印刷会社で修行したいと思い、当社とつながりのある印刷会社で4年ほど勉強させていただきました。そして、29歳の時、当社に戻りました。その時、感じたことは「様々な面で遅れている」ということでした。他の印刷会社が業態変革を進めている中、当社は相変わらず書籍本文の組版と印刷業務だけを行なっていたのです。これからの時代を生き抜くためにはこれではいけないと思ったのですが、正直、何から手を付けていいものか悩みました。

現在、デザインなど印刷に関わるあらゆる業務を行なわれていますが、どのように組織改革を行われたのですか?

まずは自分が目指しているトータルな業務を行えるように、新たな設備を投入するなどあらゆることを決断していきました。大変だったのは職人気質な社員の意識改革と新たな人材の登用です。当初は書籍の組版と印刷業務に特化していたのですが、時代とともに印刷会社に求められる業務が増えてきて、その流れで必要な人材も増え、書籍の表紙のデザインなども手がけるようになりました。

会社を成長させる上で大切にしていることを教えてください。

生産力や価格競争だけでは大規模な会社には勝てないので、ものづくり面の強化もしつつ、お客様をトータルにサポートし、近い距離で信頼を得ることに重きを置いています。例えば、部数の少ない書籍の印刷・製本や、紙以外のメディアにも対応しています。あらゆる作業に対応できる人材はそろっていますし、「当社にお願いしたい」というお客様を大切にすることが仕事につながっていると実感しています。

垣根を超えた多くの出会いを力に変えて

本ばなれが進む昨今において、どのようなビジョンをお持ちでしょうか?

印刷物の需要が減少するというマクロの影響はもちろん受けると思いますが、それでも「書籍の魅力」が減る訳ではありません。もちろんコストダウンや短納期対応は当然としても、ただ出版業界の動きにぶら下がるのではなく、自分たちも業界の一員という意識を持って、読者の方に本の魅力を伝えることをやっていきたいと思っています。

会社として、仕事をする上で大切にしていることはなんでしょうか?

特に若い社員に向けてよく言っていることなのですが、2〜3年ほどの中期的な目標を立てることを大切にしています。長期的な目標ではぼやけてしまい、短期的な目標では達成の良し悪しがはっきりとしすぎる。つまり、中期的な目標が最適なのです。中期的な目標を達成するためには、今日何をやればいいか、来月はどこまでできていればいいか、「先」を見据えることで「今」を見い出せるだけでなく、常に自分を奮い立たせるためにも有効かと思っています。

若い社員に期待することはなんでしょうか?

将来において、今ある仕事が継続し続けるとは限らないので、枠にとらわれず自由な発想で、自ら新しい仕事を生み出すという気持ちで仕事に従事して欲しいです。多くの出会いを経験することで、普通の人が気づかない視点で新たな魅力を発見できますし、また新たな出会いの接点が生まれることもあります。そういう自由な感覚でチャレンジし続けることが大切です。

御社が定期的に開催している「FRAME」というイベントはまさに出会いの場になるのではないかと思います。その「FRAME」の開催に至った経緯を教えてください。

これまで商品の勉強会やセミナーなどに社員を参加させていたのですが、自分たちでイベントを開催し、社員だけでなくいろんな会社に参加していただくことで、新たな出会いにつながったり、会社の垣根を超えていろんなコミュニティーができ、いずれ魅力的な書籍が生まれるのではないかと思ったのです。それは最終的には書籍を購入するお客様への貢献にもつながるので、まさに当社の求める流れかと思っています。今後は「FRAME」だけでなく、本にまつわるいろんな人たちといろんなコラボレーションをしていきたいと考えています。

最後に若きクリエイターの方に向けてアドバイスをお願いします。

クリエイティブな能力を持った方は一般の方と比べると特定のことに関心が高かったり、違う視点で物事を見ていたりということがあると思うのですが、クリエイティブで収入を得ようと思うと、クライアントの意向を受け止め、その中で自分らしさを追求しないといけなくなります。クライアントのニーズは多岐に渡る上、時代とともに移り変わるので、先入観を持たずに好きなものだけではなくて、周りにあるさまざまなものに触れて、仕事に生かしていただければと思います。

取材日:2018年11月15日 ライター:大垣知哉

共同印刷工業株式会社

  • 代表者名:代表取締役 江戸孝典
  • 設立年月:1948年11月
  • 資本金:2,500万円
  • 事業内容:各種印刷、編集、デザイン、印刷、製本、 加工、発送、在庫など
  • 所在地:〒615-0052 京都府京都市右京区西院清水町 156-1
  • Tel:075-313-1010
  • URL:https://www.kppi.co.jp

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