意味を持たせること
仕事でIndesignの制作物を引き継いだら、テキスト部分がすべて「長方形ツール」で組まれていた。タイトルや見出しならなんとかなるが、本文ではマズい。長方形ツールは編集モードで見るとただ四角い枠を置くだけなので、必要な行数・字数がはっきりしない。書き手に指示を出せないし、編集側もページの具体的な完成予想図がイメージできないというデメリットがある。枠内で上手く編集しないとレイアウトもガタつく。小一時間かけて本文を「長方形ツール」から「縦組み・横組みグリッドツール」に入れ替えたら、上司に「その作業って意味あるの?」と指摘された。
確かに、枠を入れ替えたからと言って完成物の見栄えに必ずしも影響があるわけではなく、この行動には意味がないかもしれない。だが、ドイツの建築家ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエが「神は細部に宿る」(God is in the details)という言葉を残したように、クライアントにはこだわりも手抜きも絶対に伝わる…と思っている。「意味がなければやっていません!」…と、喉元まで言葉が出かかったが飲み込んだ。
そんな中、お世話になっている知人(通称:雷蔵さん)から「地球から月まで行って、帰還途上の地球の静止軌道まで到達したぞ〜」と連絡をいただいた。聞くと、愛車(スズキ・エスクード1996年式、通称:BLUEらすかる)が総走行距離73万2800kmを突破したとのこと。地球と月の距離が38万4400kmだから、往復で76万8800km。73万2800kmは地球を旅立って月に到達し、再び静止軌道に突入する辺りになるそうだ。あと3万6000km走れば76万8800kmを達成し、地球に無事帰還したことになる。空を見上げれば、肉眼で確認できそうな位置まで戻って来た。
走行距離が長い車は国内外にごまんとあるが、このような目的のもとで走り続けているドライバーと車のコンビは彼らくらいじゃないだろうか。ただのドライブも「地球と月を往復する」という意味を持たせることで、壮大な夢とロマンに満ち溢れた行動になる。
意味を持たせることは決して無駄なことではない…ということを、1人と1台に教えられた。
雷蔵さん&らすかるの近況が気になる方はこちらをどうぞ→つくばーど